「苦くるしい 助たすけて…」息子むすこの電話でんわ 入院にゅういんまで1週間しゅうかん 母ははが感かんじたこと

このうち「ひなた在宅ざいたくクリニック山王さんのう」では、より深刻しんこくなケースに対応たいおうするため「中等ちゅうとう症しょう2」を中心ちゅうしんに診療しんりょうするようになりました。

「中等ちゅうとう症しょう2」は血液けつえき中ちゅうの酸素さんその値ねが93％以下いかで自力じりきでの呼吸こきゅうが難むずかしく酸素さんそ投与とうよが必要ひつようで、入院にゅういんはもちろん高度こうどな医療いりょうを行おこなえる施設しせつへの転院てんいんを検討けんとうするとされている状態じょうたいですが、このクリニックだけでも19日にち時点じてんで23人にんの中等ちゅうとう症しょう2の患者かんじゃを診みているということです。

毎朝まいあさ、電話でんわやオンラインで症状しょうじょうがさらに悪化あっかしていないか確認かくにんしたり、直接ちょくせつ、状態じょうたいを診みる必要ひつようがあると判断はんだんした場合ばあいは往診おうしんしたりしています。

17日にちは一時いちじ、血液けつえき中ちゅうの酸素さんそ飽和ほうわ度どが90％まで下さがっていた50代だいの男性だんせいの健康けんこう観察かんさつを行おこなったところ、酸素さんそ飽和ほうわ度どは97％まで上あがっていたものの「血ちが混まじったたんが出でる」と話はなしたことから、新型しんがたコロナの合併症がっぺいしょうの一ひとつである肺はい塞栓せん症しょうなどのおそれもあるとして急きゅうきょ、往診おうしんし血液けつえき検査けんさをしていました。

クリニックでは酸素さんそ濃縮のうしゅく装置そうちを導入どうにゅうし肺はいの炎症えんしょうを抑おさえる薬くすりなどを処方しょほうして入院にゅういんできるのを待まちましたが、男性だんせいの症状しょうじょうは改善かいぜんせず、16日にちに往診おうしんした時ときには装置そうちの最大さいだい量りょうの酸素さんそを投与とうよしても血液けつえき中ちゅうの酸素さんそ飽和ほうわ度どが90％まで低下ていかしていました。男性だんせいは意識いしきがもうろうとし始はじめていたということです。

クリニックは保健所ほけんじょから「人工じんこう呼吸こきゅうなどの高度こうどな医療いりょうを行おこなえる病院びょういんに空あきがない。どこかにいったん入院にゅういんしてもさらに症状しょうじょうが悪化あっかした場合ばあいに転院てんいん先さきを探さがすのは非常ひじょうに難むずかしい状況じょうきょうだ」と説明せつめいを受うけ、看病かんびょうに駆かけつけていた男性だんせいの母親ははおやに伝つたえました。

母親ははおやは悩なやみながらも「早はやく入院にゅういんさせてほしいが、もう少もうすこし待まってでも人工じんこう呼吸こきゅうができる病院びょういんに入いれるようにお願おねがいしたい」と答こたえていました。

男性だんせいは感染かんせん確認かくにんから10日にち、救急きゅうきゅう車しゃを呼よんで1週間しゅうかんたった18日にちに入院にゅういんすることができたということです。

「ひなた在宅ざいたくクリニック山王さんのう」の田代たしろ院長いんちょうは「こんなに状態じょうたいの悪わるい人ひとがなかなか入院にゅういん先さきが決きまらないという現実げんじつにがく然がくぜんとしている。入院にゅういん先さきを探さがすに当にあたって若わかい世代せだいの人ひとに『延命えんめい治療ちりょうを希望きぼうするかどうか』という、今いままでは考かんがえられなかったような問といをぶつけなければならない場面ばめんも出でてきていて、患者かんじゃや家族かぞくの苦悩くのうは察さっするにあまりある」と話はなしています。

日に日ひにひに苦くるしそうになっていく息子むすこの様子ようすを見守みまもるしかなかった母親ははおやは「望のぞむ医療いりょうを受うけられるかどうかわからないという状況じょうきょうが信しんじられず、とにかく祈いのる思おもいでした」と話はなしています。

母親ははおやは沖縄おきなわ県けんに住すんでいますが、息子むすこの看病かんびょうに駆かけつけています。今月こんげつ8日にち、感染かんせんが確認かくにんされて自宅じたく療養りょうようを指示しじされたという連絡れんらくを受うけてから毎日まいにち3回かい、息子むすこに電話でんわをしていました。

10日にち「我慢がまんできず救急きゅうきゅう車しゃを呼よんだ」と聞きいて、これで入院にゅういんできると安心あんしんしていたところ翌日よくじつ11日にちになって「搬送はんそう先さきが決きまらず自宅じたくに戻もどってきた。苦くるしい。助たすけて」と電話でんわがあったということです。

母親ははおやはその日ひのうちに上京じょうきょうしました。母親ははおやは「ふだんはたまに電話でんわをするくらいでしたが、子こどものころ、小児しょうにぜんそくで入退院にゅうたいいんを繰り返くりかえしても弱音よわねをはかなかった子こが『お母おかあさん助たすけて』と言いったんです。胸むねが締しめつけられる思おもいですぐに飛とんできました」と話はなします。

母親ははおやはワクチンを2回かい接種せっしゅしていましたが、息子むすことはできるだけ距離きょりをとりながら看病かんびょうを続つづけたといいます。

母親ははおやは「食たべても吐はいてしまうので体からだはフラフラで、ずっと苦くるしそうに咳き込せきこんでいました。静しずかになると今度こんどは生いきているか心配しんぱいになり、呼吸こきゅうをしているか確認かくにんする毎日まいにちでした。往診おうしんしてくれている医師いしから延命えんめい治療ちりょうが難むずかしい病院びょういんでも入院にゅういんを希望きぼうしますかと聞きかれ、まだ39歳さいでやりたいこともたくさんあるのにここで命いのち尽つきるのかと思おもったら涙なみだがぼろぼろ落おちてきました。望のぞむ医療いりょうが受うけられるかどうか分わからないという状況じょうきょうが信しんじられず、とにかく祈いのる思おもいでした。沖縄おきなわからオリンピックを見みていた時ときには東京とうきょうがこんな状況じょうきょうになっているとは思おもいもしませんでした。不安ふあんな気持きもちで自宅じたく療養りょうようを続つづけている中等ちゅうとう症しょうの患者かんじゃが入院にゅういんできるような医療いりょう体制たいせいを整ととのえてほしい」と話はなしていました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうが、自治体じちたいや医療いりょう機関きかんから感染かんせん者しゃの情報じょうほうを集約しゅうやくするシステムを使つかって分析ぶんせきした結果けっか、自宅じたくで亡なくなったと報告ほうこくされた患者かんじゃは今月こんげつ16日にちまでに全国ぜんこくで合あわせて91人にんに上のぼりました。先月せんげつ1日にち以降いこうのおよそ1か月かげつ半はんで7人にん増加ぞうかしたということです。

死亡しぼうしたいきさつや、性別せいべつ、年代ねんだいなどは公表こうひょうしていません。

死亡しぼうしてから国くにに報告ほうこくするまでに時間じかんがかかることもあるため、実際じっさいの人数にんずうはさらに増ふえる可能かのう性せいもあるということです。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは「自宅じたく療養りょうよう中ちゅうに容体ようだいが悪化あっかした場合ばあいは入院にゅういんなどの適切てきせつな対応たいおうを速すみやかにとれるよう体制たいせいを強化きょうかしていきたい」としています。