この製鉄所はイギリス中部スカンソープにある「ブリティッシュ・スチール」で国内では唯一、スクラップを溶かすのではなく原料から鉄を作っています。
2020年に中国の鉄鋼メーカーが買収しましたが、エネルギー価格の高騰などで赤字が膨らみ、アメリカのトランプ政権が3月、鉄鋼製品に25%の関税を課す措置を始めたことも背景に、2基ある高炉の運転停止を検討していました。
これを受け、スターマー首相は12日、キリスト教の復活祭イースターに合わせて休会していた議会を招集し、製鉄所の操業継続とおよそ3000人の従業員の雇用維持のため、政府による経営への介入を可能にする緊急法案が可決されました。
この中でレイノルズ ビジネス貿易相は、長期的には製鉄所の国有化が有力な選択肢になり得ると述べました。
地元メディアによりますと、議会が休会中の土曜日に招集されたのは1982年のフォークランド紛争など有事のときだけで、第2次世界大戦後では今回が6回目です。
この製鉄所が閉鎖されればイギリスはG7=主要7か国で唯一、自国で原料から鉄を作る能力を失い、中国などからの輸入に依存する事態が懸念されるということで、政府はインフラや国防に不可欠な鉄の自国生産を維持するため、異例の対応をとった形です。