日本新聞: 風しんワクチン “供給不安定” 出荷前倒し急ぐ厚生労働省

高熱こうねつや発疹はっしんなどの症状しょうじょうが出でて、妊婦にんぷが感染かんせんすると赤あかちゃんに障害しょうがいが出でるおそれもある「風ふうしん」。去年きょねんからワクチンの供給きょうきゅうが不安定ふあんていな状況じょうきょうとなっていて、一時いちじ、予約よやくの受け付うけつけをできなくなった医療いりょう機関きかんもでています。厚生こうせい労働ろうどう省しょうは製薬せいやく会社かいしゃに出荷しゅっかを前倒まえだおししてもらうなど対応たいおうを急いそいでいます。

風ふうしんはウイルス性せいの感染かんせん症しょうで、妊娠にんしん中ちゅうの女性じょせいが感染かんせんすると、生うまれてくる赤あかちゃんの目めや耳みみ、それに心臓しんぞうなどに障害しょうがいが出でるおそれがあります。

この風ふうしんや、はしかを防ふせぐ混合こんごうワクチンは、現在げんざい、1歳さいと小学校しょうがっこうに進学しんがくする前まえの5歳さいや6歳さいの子こどもを対象たいしょうに定期ていき接種せっしゅが行おこなわれています。

また、公的こうてきなワクチンの接種せっしゅを受うけていない昭和しょうわ37年度ねんどから53年度ねんどに生うまれた男性だんせいについては無料むりょうの抗体こうたい検査けんさが行おこなわれ、抗体こうたいがない人ひとには、ことし3月つき末まつを期限きげんに追加ついか接種せっしゅが行おこなわれています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、混合こんごうワクチンは国内こくない3つの製薬せいやく会社かいしゃが製造せいぞうしていますが、このうち1社しゃが、一部いちぶの製品せいひんの有効ゆうこう性せいが基準きじゅんを下回したまわったことなどを理由りゆうに去年きょねん1月つき、一部いちぶのワクチンの回収かいしゅうを行おこない、その後そのご、去年きょねん11月つきからは出荷しゅっかを停止ていししています。

こうした中なか、東京とうきょう都と医師いし会かいが去年きょねん10月つきにおよそ1000か所かしょの医療いりょう機関きかんに調査ちょうさした結果けっか、6割わり以上いじょう（63.5％）で「とても不足ふそくしている」、または「不足ふそくしている」と回答かいとうしました。

東京とうきょう都と医師いし会かいによりますと、現在げんざいは状況じょうきょうが改善かいぜんされてきているものの、まだ影響えいきょうが続つづく地域ちいきもあるということです。

医療いりょう機関きかんの中なかには、新あらたな予約よやくの受け付うけつけが一時いちじ的てきにできなくなった所ところもあり、今後こんご、必要ひつようなワクチンを確保かくほできるのか、心配しんぱいする声こえも上あがっています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、ほかの2つの製薬せいやく会社かいしゃに出荷しゅっかの前倒まえだおしを依頼いらいしていて、2月つきから供給きょうきゅう量りょうは持ち直もちなおし、最終さいしゅう的てきには例年れいねん並なみの量りょうのワクチンが出荷しゅっかされる見通みとおしだとしています。

このため、医療いりょう機関きかんに対にたいして必要ひつよう以上いじょうの発注はっちゅうは控ひかえるよう求もとめるとともに、定期ていき接種せっしゅの対象たいしょう者しゃに対にたいしては、「今後こんご、医療いりょう機関きかんからの発注はっちゅうに対応たいおうできる状況じょうきょうにあると聞きいているので、接種せっしゅを検討けんとうしてほしい」と呼よびかけています。

妊娠にんしん中ちゅうに感染かんせんすると赤あかちゃんに障害しょうがい出でるおそれも

風ふうしんは妊娠にんしん中ちゅうの女性じょせいが感染かんせんすると、生うまれてくる赤あかちゃんの目めや耳みみ、それに心臓しんぞうなどに障害しょうがいが出でるおそれもあります。

「先天せんてん性せい風ふうしん症候しょうこう群ぐん」と呼よばれます。

岐阜ぎふ市しの可児かに佳代かよさん（70）は長年ながねん、風ふうしんへの警戒けいかいを呼よびかける啓発けいはつ活動かつどうに参加さんかしてきました。

可か児じさんは20代だいのころ、妊娠にんしん中ちゅうに風ふうしんにかかりました。

生うまれてきた長女ちょうじょの妙子たえこさんは目めと耳みみに障害しょうがいがあり、生うまれてすぐに手術しゅじゅつを受うけたほか、心臓しんぞうにも重おもい障害しょうがいが残のこりました。

そうした中なかでも妙子たえこさんは笑顔えがおを絶たやすことはなかったといいます。

両手りょうての人さし指ひとさしゆびをほおに当あて、「にこっ」と笑わらうのが好すきなポーズでした。

また、人ひとと触れ合ふれあうことが大好だいすきで、学校がっこうの先生せんせいなどと頻繁ひんぱんにFAXで手紙てがみのやりとりをしていました。

しかし、18歳さいになってまもなくの冬ふゆ、心臓しんぞうの症状しょうじょうが悪化あっかし、学校がっこうに行いく支度したくをしていた時ときに突然とつぜん呼吸こきゅうが乱みだれ、緊急きんきゅう入院にゅういんしましたが4日にち後ごに息いきを引き取ひきとりました。

亡なくなる数すう時間じかん前まえ、妙子たえこさんは近ちかくにあった紙かみに「お父おとうさんお母おかあさんと私わたしはがんばりました」と書き残かきのこしていました。

可か児じさんは「あんたに『頑張がんばりました』と言いわれたら、お母おかあさんたちはどうしたらいいんだと思おもいました。それでも今いまは、『お母おかあさんも頑張がんばって』と宿題しゅくだいを与あたえられたのだと思おもっています」と振り返ふりかえります。

妙子たえこさんと同おなじような思おもいを誰だれにもしてほしくない。

可か児じさんは12年ねん前まえから患者かんじゃ団体だんたいの活動かつどうに参加さんかし、ワクチンの接種せっしゅなどを呼よびかけてきました。

そうした活動かつどうもあって、6年ねん前まえの2019年ねんからは子こどもの時ときにワクチンを接種せっしゅしていない現在げんざい40代だいから60代だいの男性だんせいを対象たいしょうに、追加ついか接種せっしゅが行おこなわれるようになりました。

可か児じさんはワクチンが不足ふそくして接種せっしゅ率りつが下さがると、再ふたたび風ふうしんが流行りゅうこうするのではないかと心配しんぱいしています。

可か児じさんは「先天せんてん性せい風ふうしん症候しょうこう群ぐんの子こどもを二度にどと出ださないというのが娘むすめとの約束やくそくです。もしワクチンが足たりないのであれば、定期ていき接種せっしゅや追加ついか接種せっしゅの期限きげんを少すこしでも延のばしてほしいです」と話はなしていました。

今後こんごの入荷にゅうかに不安ふあん感かんじる医療いりょう機関きかんも

一部いちぶの製薬せいやく会社かいしゃが、風ふうしんとはしかの混合こんごうワクチンの出荷しゅっかを停止ていしする中なか、今後こんごの入荷にゅうかに不安ふあんを感かんじている医療いりょう機関きかんもあります。

東京とうきょう板橋いたばし区くのクリニックでは、子こども向むけに、風ふうしんとはしかの混合こんごうワクチンの接種せっしゅを行おこなってきましたが、去年きょねん4月つき、製薬せいやく会社かいしゃの社員しゃいんからワクチンの出荷しゅっかを制限せいげんすると告つげられました。

このため、入荷にゅうかできた分ぶんだけ接種せっしゅの予約よやくを受け付うけつけることにしましたが、去年きょねんの8月つき中旬ちゅうじゅんからおよそ3か月かげつ間かんは入荷にゅうかが無なく、10月つきは一いち度ども接種せっしゅを行おこなうことができませんでした。

「子こどもに接種せっしゅしてもらえないか」と何なん度ども問い合といあわせをしてきた親おやもいるということです。

11月つきになると、まとまった量りょうのワクチンを入荷にゅうかできましたが、すでに入はいっている予約よやく分ぶんなどで在庫ざいこがほぼ無なくなる見通みとおしで、今後こんご、必要ひつような数かずのワクチンを確保かくほできるのか不安ふあんも感かんじています。

すがやこどもクリニックの菅谷すげのや明則あきのり院長いんちょうは「小学校しょうがっこうで健康けんこう診断しんだんも行おこなっていますが、例年れいねんは11月つきの終おわりごろに8割わりほどの子こどもが接種せっしゅを終おえているのに、ことしは半数はんすうほどしか打うてていませんでした。このままだと、子こどもの接種せっしゅ率りつが昨年度さくねんどよりも下さがると考かんがえられるので、国くには何なにか対策たいさくを検討けんとうしてもらいたい」と話はなしていました。

風ふうしんの流行りゅうこうと定期ていき接種せっしゅの経緯けいい

かつては5年ねん程度ていどの周期しゅうきで大おおきな流行りゅうこうが起おきていた風ふうしん。

感染かんせん力りょくが強つよく、平成へいせい25年ねんには海外かいがいから帰国きこくした人ひとたちが発症はっしょうするなどして1万まん4344人にんの感染かんせんが確認かくにんされました。

また、平成へいせい30年ねんには2941人にんと再ふたたび流行りゅうこうしましたが、その後そのごは減少げんしょうし去年きょねんの感染かんせん者しゃは7人にんとなっています。

一方いっぽう、特とくに免疫めんえきが十分じゅうぶんではない妊娠にんしん20週しゅうごろまでの女性じょせいが感染かんせんすると、生うまれてくる赤あかちゃんの目めや耳みみ、それに心臓しんぞうなどに障害しょうがいが出でるおそれがあります。

この「先天せんてん性せい風ふうしん症候しょうこう群ぐん」は平成へいせい24年ねんから26年ねんの大だい流行りゅうこう時じには45人にん報告ほうこくされ、このうち、11人にんが生後せいご1年ねん余あまりのうちに亡なくなっています。

また令りょう和わに入はいってからも4人にんが確認かくにんされています。

風ふうしんを防ふせぐ混合こんごうワクチンの定期ていき接種せっしゅは平成へいせい18年度ねんどから始はじまり、1歳さいの時ときに打うつ「第だい1期き」と、小学校しょうがっこうに進学しんがくする前まえの5歳さいや6歳さいの時ときに打うつ「第だい2期き」の2回かいあり、厚生こうせい労働ろうどう省しょうはいずれも接種せっしゅ率りつの目標もくひょう値ちを95％としています。

接種せっしゅ率りつは令りょう和わ2年度ねんどに第だい1期きで98.5％、第だい2期きは94.7％と、いずれも過去かこ最高さいこうとなりました。

ただ、その後そのごは新型しんがたコロナの感染かんせん拡大かくだいの影響えいきょうでやや下さがり、令りょう和わ5年度ねんどは第だい1期きで94.9％、第だい2期きは92％となっています。

また、過去かこに公的こうてきな予防よぼう接種せっしゅが行おこなわれていなかった、昭和しょうわ37年度ねんどから53年度ねんど生うまれの男性だんせいは、6年ねん前まえから無料むりょうの抗体こうたい検査けんさが行おこなわれ、抗体こうたいが十分じゅうぶんでない人ひとには追加ついか接種せっしゅが実施じっしされています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは接種せっしゅ期限きげんとなることし3月つき末まつまでにこの世代せだいの抗体こうたい保有ほゆう率りつを90％まで上昇じょうしょうさせる目標もくひょうを掲かかげており、おととしの夏なつの時点じてんでは88％でした。

期限きげんを過すぎた場合ばあいは検査けんさや接種せっしゅ費用ひようは原則げんそく、自己じこ負担ふたんとなります。

東京とうきょう都と医師いし会かい「根本こんぽん的てきな解決かいけつ策さくを」

風ふうしんなどの混合こんごうワクチンが入手にゅうしゅしづらい状況じょうきょうが続つづいたことについて、東京とうきょう都と医師いし会かいの川上かわかみ一恵かずえ理事りじは「小学校しょうがっこう入学にゅうがく前まえの子こどもさんは3月つきが定期ていき接種せっしゅの期限きげんとなる。ワクチンの供給きょうきゅう状況じょうきょうが改善かいぜんしてきても、これまで接種せっしゅできなかった子こどもたちがいるので、その子こたちの分ぶんも含ふくめた潤沢じゅんたくな供給きょうきゅうが求もとめられる」と話はなしています。