日本新聞: 岸田前首相襲撃事件きょう初公判殺意の有無が主な争点か

おととし、選挙せんきょ応援おうえんで和歌山わかやま市しを訪おとずれていた岸田きしだ前ぜん総理そうり大臣だいじんの近ちかくに爆発ばくはつ物ぶつを投げ込なげこんだとして、殺人さつじん未遂みすいなどの罪つみに問とわれている25歳さいの被告ひこくの初はつ公判こうはんが4日にち、和歌山わかやま地方ちほう裁判所さいばんしょで開ひらかれます。関係かんけい者しゃによりますと、裁判さいばんでは殺意さついの有無うむが主おもな争点そうてんになる見込みこみで、黙秘もくひを続つづけてきた被告ひこくの動機どうきが明あきらかになるのかが注目ちゅうもくされます。

兵庫ひょうご県けん川西かわにし市しの無職むしょく、木村きむら隆二りゅうじ被告ひこく（25）は、おととし4月つき、和歌山わかやま市しの雑賀崎さいかざき漁港ぎょこうで衆議しゅうぎ院いんの補欠ほけつ選挙せんきょの応援おうえんに訪おとずれていた岸田きしだ前ぜん総理そうり大臣だいじんの近ちかくに手製てせいの爆発ばくはつ物ぶつを投げ込なげこんで爆発ばくはつさせ、警察官けいさつかんと聴衆ちょうしゅうの2人にんにけがをさせたうえ、街頭がいとう演説えんぜつを妨害ぼうがいしたとして、殺人さつじん未遂みすいや爆発ばくはつ物ぶつ取締とりしまり罰則ばっそく違反いはんなど5つの罪つみに問とわれています。

初はつ公判こうはんは4日にち午前ごぜん10時じ40分ふんから和歌山わかやま地方ちほう裁判所さいばんしょで開ひらかれ、関係かんけい者しゃによりますと、裁判さいばんでは、殺意さついの有無うむや爆発ばくはつ物ぶつに殺傷さっしょう能力のうりょくがあったかが主おもな争点そうてんになる見通みとおしです。

検察けんさつは爆発ばくはつ物ぶつを鑑定かんていした専門せんもん家かなどの証人しょうにん尋問じんもんを行おこない、殺傷さっしょう能力のうりょくが認みとめられるとして、殺意さついがあったと主張しゅちょうするとみられます。

これに対にたいし、弁護べんご側がわは起訴きそされた内容ないようの一部いちぶを争あらそうとみられます。

被告ひこくは逮捕たいほ後ごから取り調とりしらべで黙秘もくひを続つづけていて、事件じけんのいきさつについて法廷ほうていで何なにを語かたるのかや、動機どうきが明あきらかになるのかが注目ちゅうもくされます。

裁判さいばんは4回かいの審理しんり日程にっていが設もうけられていて、判決はんけつは2月つき19日にちに言い渡いいわたされる予定よていです。

事件じけんの経緯けいい

事件じけんが起おきたのはおととし4月つき15日にち。

岸田きしだ前ぜん総理そうり大臣だいじんが衆議院しゅうぎいん和歌山わかやま1区くの補欠ほけつ選挙せんきょの応援おうえん演説えんぜつを始はじめる直前ちょくぜんに、会場かいじょうに爆発ばくはつ物ぶつが投げ込なげこまれました。

岸田きしだ前ぜん総理そうり大臣だいじんは避難ひなんしてけがはなく、警察官けいさつかん1人にんと聴衆ちょうしゅうの男性だんせい1人にんが爆発ばくはつによって軽かるいけがをし、木村きむら被告ひこくがその場ばで逮捕たいほされました。

警察けいさつが鑑定かんていを行おこなった結果けっか、投げ込なげこまれたのは手製てせいの「パイプ爆弾ばくだん」で、破片はへんの一部いちぶは、現場げんばから60メートル離はなれたコンテナにめり込めりこんでいました。

また、現場げんばで取り押とりおさえられた際さいに被告ひこくが持もっていたもう1つの筒つつについても、黒色こくしょく火薬かやくが入はいった手製てせいの「パイプ爆弾ばくだん」だと確認かくにんされました。

捜査そうさ関係かんけい者しゃによりますと、被告ひこくの自宅じたくから押収おうしゅうしたパソコンを解析かいせきしたところ、自民党じみんとうのホームページを繰り返くりかえし閲覧えつらんした履歴りれきがあったということです。

検察けんさつは、専門せんもん家かによる精神せいしん鑑定かんていを行おこなった結果けっか、刑事けいじ責任せきにん能力のうりょくがあると判断はんだんし、おととし9月つき、岸田きしだ前ぜん総理そうり大臣だいじんなどに対にたいする殺人さつじん未遂みすいと爆発ばくはつ物ぶつ取締とりしまり罰則ばっそく違反いはん、それに公職こうしょく選挙せんきょ法ほう違反いはんなど5つの罪つみで起訴きそしました。

【動機どうきは不明ふめいのまま】

一方いっぽう、被告ひこくは逮捕たいほ後ごの取り調とりしらべで黙秘もくひを続つづけ、動機どうきは明あきらかになっていません。

事件じけん前まえの2022年ねん6月つき、被告ひこくは、法律ほうりつが定さだめる被ひ選挙せんきょ権けん年齢ねんれいや供託きょうたく金きんの規定きていは憲法けんぽうに違反いはんし、参議院さんぎいん選挙せんきょに立候補りっこうほできなかったのは不当ふとうだとして、国くにに損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを起おこしていました。

裁判所さいばんしょに提出ていしゅつした準備じゅんび書面しょめんでは、当時とうじの岸田きしだ内閣ないかくは安倍あべ元もと総理そうり大臣だいじんの国葬こくそうを閣議かくぎ決定けっていのみで強行きょうこうしたと主張しゅちょうし「このような民主みんしゅ主義しゅぎへの挑戦ちょうせんは許ゆるされるものではない」などと訴うったえていました。

1審しんの神戸こうべ地方ちほう裁判所さいばんしょはこの年としの11月つきに訴うったえを退しりぞけ、2審しんの大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょも事件じけん翌月よくげつのおととし5月つきに訴うったえを退しりぞけて判決はんけつは確定かくていしました。

警察けいさつは、1審しんで訴うったえが退しりぞけられた2022年ねん11月つきごろから火薬かやくを製造せいぞうしていたとみています。

【警護けいご対応たいおうの見直みなおしも】

今回こんかいの事件じけんは、2022年ねん7月つきに安倍あべ元もと総理そうり大臣だいじんが銃撃じゅうげきされた事件じけんを受うけて、要人ようじん警護けいごの運用うんようが抜本ばっぽん的てきに見直みなおされた中なかで起おき、大おおきな衝撃しょうげきが広ひろがりました。

警察庁けいさつちょうは、警察けいさつと応援おうえん演説えんぜつの主催しゅさい者しゃ側がわとの間まで綿密めんみつな協議きょうぎが行おこなわれず、警護けいご計画けいかくに実効じっこう的てきな対策たいさくが盛り込もりこまれなかったことで事件じけんの発生はっせいを許ゆるしたと結論けつろんづけ、主催しゅさい者しゃ側がわへの働はたらきかけなど、隙ひまのない警護けいご・警備けいびに向むけた対応たいおうを見直みなおしました。

起訴きそされた5つの罪つみ

木村きむら被告ひこくは殺人さつじん未遂みすいの罪つみなど、合あわせて5つの罪名ざいめいで起訴きそされています。その詳くわしい内容ないようです。

【殺人さつじん未遂みすいなど】

被告ひこくはおととし4月つき15日にちの午前ごぜん11時半じはんごろ、和歌山わかやま市しの雑賀崎さいかざき漁港ぎょこうで、岸田きしだ前ぜん総理そうり大臣だいじんの近ちかくに手製てせいの爆発ばくはつ物ぶつを投げ込なげこんで爆発ばくはつさせ、警察官けいさつかんと聴衆ちょうしゅうの2人にんにけがをさせたうえ、街頭がいとう演説えんぜつを妨害ぼうがいしたとして、殺人さつじん未遂みすいや爆発ばくはつ物ぶつ取締とりしまり罰則ばっそく違反いはん、それに公職こうしょく選挙せんきょ法ほう違反いはんの罪つみに問とわれています。

【爆発ばくはつ物ぶつ・火薬かやく・刃物はものの所持しょじ】

また、現場げんばで取り押とりおさえられた際さい、別べつの手製てせいの爆発ばくはつ物ぶつと、小瓶こびんに入はいった黒色こくしょく火薬かやく、それに刃渡はわたりおよそ13センチの包丁ほうちょうを所持しょじしていたとして、爆発ばくはつ物ぶつ取締とりしまり罰則ばっそく違反いはん、火薬かやく類るい取締とりしまり法ほう違反いはん、それに銃刀じゅうとう法ほう違反いはんの罪つみに問とわれています。

【爆発ばくはつ物ぶつの製造せいぞうなど】

このほか、事件じけんの前まえの年としの2022年ねん11月つきごろから事件じけん当日とうじつまでの間まに、自宅じたくやその周辺しゅうへんで黒色こくしょく火薬かやくおよそ560グラムと、2つの爆発ばくはつ物ぶつを製造せいぞうしたとして、火薬かやく類るい取締とりしまり法ほう違反いはんと爆発ばくはつ物ぶつ取締とりしまり罰則ばっそく違反いはんの罪つみに問とわれています。

和歌山わかやま地検ちけんの検事けんじの取り調とりしらべ「不ふ適正てきせい」認定にんてい

この事件じけんの捜査そうさでは、和歌山わかやま地方ちほう検察庁けんさつちょうの検事けんじが行おこなった取り調とりしらべについて、最高さいこう検察庁けんさつちょうが不ふ適正てきせいだったと認定にんていしています。

被告ひこくの弁護士べんごしによりますと、検事けんじは被告ひこくが自宅じたくに引ひきこもる生活せいかつをしていたことに触ふれ「出でてきたら世の中よのなかに迷惑めいわくかけるんだね。社会しゃかい貢献こうけんしていない」などと発言はつげんしたということです。

さらに、被告ひこくが年齢ねんれいの規定きていなどによって参議院さんぎいん選挙せんきょに立候補りっこうほできなかったのは不当ふとうだとして、国くにに訴うったえを起おこしたことについて「検事けんじは憲法けんぽうや法律ほうりつのプロだからメジャーリーガーだとすると、君きみは小学生しょうがくせいレベルだ」などと発言はつげんしたということです。