経済成長よりも生活の安定を重視する日本人の価値観変容
日本において実施された最新の意識調査によれば、経済成長を最優先とする従来の価値観が必ずしも主流ではなくなりつつあることが明らかとなった。金間大介氏がクロス・マーケティングを通じて20代から50代の1,200人を対象に行った調査によると、全体の約6割が「経済成長を追求するよりも、安定した生活が得られるのであれば景気後退も受け入れる」と回答している。
長期にわたり低成長が続いている世界第3位の経済大国において、個人の安定を優先する傾向が顕著になっているのである。
一方で、若年層が日本そのものに対して失望しているわけではない。例えば、2017年にマクロミルが実施した調査では、日本に好感を抱く人の割合は全体で90%、20代に限ると92%に達していた。さらに、2025年のMERYによる調査においても、いわゆるZ世代の約8割が日本を「好き」と回答している。金間氏は、「多くの若者は日本という国を大切に思っているものの、個人の安定を犠牲にしてまで経済成長を追い求めることには慎重な姿勢を見せている」と分析している。
こうした傾向の背景には、将来への期待感の低下や“静かなあきらめ”の広がりが指摘されている。必要以上に努力せず、与えられた役割を淡々とこなす態度は、2022年ごろから米国で注目された「クワイエット・クイッティング」に通じるものがあると言えよう。調査結果によれば、若年層ほど明確な指示のもとで働く傾向が強く、50代はより主体的に行動する傾向が見受けられた。特に学生層は、最も指示待ち傾向が顕著なグループである。
「無理に前進するよりも、安定を選ぶべきだ」と考える人が増加している今、日本社会は今後どのような方向へ進んでいくのだろうか。この現象は単なる経済的側面にとどまらず、社会全体の価値観の変容を示唆しているのではないか。かつて努力や成長を美徳とみなしてきた日本社会において、「頑張るくらいなら停滞でも構わない」という意識が広がりつつある理由について、今後も多角的な議論が求められることは間違いない。