일본어 뉴스: 「まだ、28年前の出来事です」阪神・淡路大震災遺族のことば

「まだ、28年ねん前まえの出来事できごとです」阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさい遺族いぞくのことば

Jan 17, 2023 07:01

Furigana

1月つき17日にち朝あさ、神戸こうべ市しが主催しゅさいして東遊あずまあそび園地えんちで開ひらいた「追悼ついとうのつどい」で、兵庫ひょうご県けん佐用さよう町まちの上野うえの政志まさしさん（75）が、追悼ついとうのことばを述のべました。

上野うえのさんは、長女ちょうじょで大学だいがく2年生ねんせいだった志乃しのさん（当時とうじ20歳さい）を下宿げしゅく先さきの神戸こうべ市内しないのアパートで亡なくしました。

追悼ついとうのことば全文ぜんぶん

まだ、28年ねん前まえの出来事できごとです。6434人にん、多おおくの死しがありました。しかし私わたしたちの多おおくは、その内うちの何なん人にんの顔かおを思い浮おもいうかべることができるでしょうか。

娘むすめ、志乃しのは、20歳さいと8か月かげつという若わかさで亡なくなりました。『一いち歩ほ一いち歩ほを大切たいせつに生いきていきたい』と成人せいじん式しきに、その言葉ことばを残のこしていました。しかし、親おやに一言ひとことも言いわないで、突然とつぜん、一いち歩ほも歩あゆまないで、遠とおくへ行いってしまいました。

1月つき17日にちの夜よる、意外いがいと渋滞じゅうたいを気きにせず、山麓さんろくバイパスから、灘なだ区く琵琶びわ町まちのニュー六甲ろっこうビラのアパートに着つき、現場げんばは、瓦礫がれきの山やまだったのですが、近ちかくの避難ひなん所しょ巡めぐりをし、ラジオ関西かんさいの尋ね人たずねびと報道ほうどうに依頼いらいをし、車中しゃちゅう泊はくをしました。

18日にち6時じ40分ふん頃ごろ、少すこし明あかるくなってきたので、瓦礫がれきの山やまを除のけていると、お友ともだちの頭あたまを、その横よこに志乃しのの足あしを見みつけました。ホーム炬燵こたつに差さし向むかいで寝ねていたようで、2階かいの梁やながその真ん中まんなかに落おちてきており、挟はさまれた状態じょうたいでした。目めの前まえにいながら、助け出たすけだせないでいる自分じぶんの無力むりょくさを味あじわいました。昼ひるから垂水たるみの兄あにが来きてくれて、壁かべを崩くずし、屋根やね瓦かわらを落おとしたりして、夕方ゆうがたの5時じ頃ごろに、少すこし梁やなが動うごいて、引き出ひきだすことができました。

王子おうじスポーツセンターでの丸まる一いち日にち以上いじょうかかった検視けんし、200人にん近ちかくが収容しゅうようされて、1000人にん近ちかい人ひとが、黙だまって検視けんしを待まち続つづけた武道ぶどう場じょう、全まったく、寒さむさと静しずけさだけが、そこにありました。

葬儀そうぎを終おえてからは、毎日まいにちのようにアパートに遺品いひん探さがしに行いきました。1か月かげつごとにビニール袋ぶくろにくくられた新聞しんぶんを見みて、何なにでも丁寧ていねいにする性格せいかくだなということを見みつけたり、今いま、学校がっこうや図書館としょかんなどに寄贈きぞうしている面白おもしろい発想はっそうの「空そらを泳およぎたかった魚さかなの話はなし」のパラパラ絵本えほんなどを持ち帰もちかえりました。

『陽子ようし、志乃しのここに眠ねむる』の新聞しんぶん報道ほうどうがあって、以来いらい、多おおくの記者きしゃたちと出会であうことになりました。初はじめは、泣ないてばかりいましたが、3、4人にん目めぐらいから、話はなし終おわって、ふと、気持きもちが軽かるくなることがありました。

平成へいせい8年ねんの5月つきの誕生たんじょう日びに合あわせて、娘むすめが生いきていた証あかしにと『忘わすれないで』という記録きろく本ほんを作つくって、関係かんけいする人ひとたちに配くばりました。その作成さくせい途中とちゅうに、神戸こうべ大学だいがくの社会しゃかい学がくの浅野あさの慎一しんいち先生せんせいから、志乃しのが受講じゅこうしていた講座こうざの小しょうレポートを送おくっていただきました。その中なかに『私わたしにとって、家族かぞくとは、絶対ぜったい的てきな存在そんざいである。』と言いい切きっていました。それが縁えんで、4回かいほど、社会しゃかい学がくの講座こうざで、お話おはなしをさせていただき、後ごには、全ぜん学部がくぶ対象たいしょうの震災しんさい講座こうざで、コロナが流行りゅうこうする前年ぜんねんまでの何なん年間ねんかんか、『生いきてこそ』というテーマで、お話おはなしをさせていただきました。

その受講じゅこう生せいの中なかに『生なまと死しは、両極りょうきょくにあるのではない。みんなの心こころから忘れ去わすれさられたときに本当ほんとうの死しが訪おとずれる』という小しょうレポートがありました。まさにその通とおりだと思おもいました。だから、時々ときどきふと、志乃しのは生いきているという思おもいになることがあります。なぜなら、私わたしの話はなしを聞きいてくださる方ほうがいて、どんどん、志乃しのを知しってもらえる人ひとが増ふえているからです。

『生いきてこそ』という題だいは、1972年ねん、アンデス山中さんちゅうに墜落ついらくした飛行機ひこうき事故じこで、72日間にちかん救助きゅうじょもなく、16名めいが生き抜いきぬいた記録きろくで、映画えいが化かされたその題名だいめい『ALIVE（生いきてこそ）』からとったものです。生なまへの執着しゅうちゃくなくては生いきられないこと、生いきることの素晴すばらしさを伝つたえるために使つかっているものです。

娘むすめ、志乃しのの無念むねんさ、将来しょうらいの夢ゆめや思おもいを実現じつげんできないまま、志こころざし半なかばで逝いってしまったこの逆縁ぎゃくえんの体験たいけんを通をとおして、『生いきることの意味いみ』について伝つたえていきたいと思おもっています。今いまも、志乃しのの足あしに触ふれた時ときの氷こおりより冷つめたかったという感触かんしょく、助け出たすけだせないでいる情なさけない自分じぶんの存在そんざいを鮮明せんめいなまでに覚おぼえています。二度にどとこういう体験たいけんは味あじわいたくありません。

そのために、東北とうほくの大だい震災しんさいで釜石かまいし市しが行おこなったような事前じぜんの津波つなみ防災ぼうさい教育きょういくや多おおくの災害さいがいから学まなぶ教訓きょうくんを、今いま、生いきている人間にんげんで生いかしていく必要ひつようがあると思おもいます。この追悼ついとうの言葉ことばも、その機会きかいと捉とらえ、何なにか一ひとつでも伝つたえることができたら幸さいわいと思おもって、引き受ひきうけたものです。言葉ことば足たらずの私わたしの話はなしを聞きいてくださった皆みなさん、そして、こうして話はなす機会きかいと場ばを用意よういしてくださった関係かんけい者しゃの皆みなさんに感謝かんしゃします。ありがとうございました。