日本新聞: 【速報中】南海トラフ巨大地震「新被害想定」公表私のまちは

近ちかい将来しょうらい、発生はっせいが懸念けねんされている南海なんかいトラフ巨大きょだい地震じしん。国くにの被害ひがい想定そうていが前回ぜんかいから10年ねん余あまりたって全面ぜんめん的てきに見直みなおされました。

計算けいさん方法ほうほうの変化へんかで津波つなみの浸水しんすい域いきが広ひろがったことや避難ひなんが遅おくれた場合ばあいも想定そうていしたことから、最悪さいあくの場合ばあい、死者ししゃは29万まん8000人にんと前回ぜんかいの32万まん余あまりからわずかな減少げんしょうにとどまりました。

ただ、これまでの取り組とりくみの効果こうかもあり、迅速じんそくな避難ひなんに向むけた取り組とりくみや耐震たいしん化かなどがさらに進すすめば、犠牲ぎせい者しゃは大幅おおはばに減へるとしています。

※地域ちいきごとの津波つなみの高たかさは記事きじの後半こうはんでご覧ごらんいただけます。

一方いっぽう、避難ひなん生活せいかつなどで体調たいちょうを崩くずして亡なくなる「災害さいがい関連かんれん死し」が初はじめて推計すいけいされ、最悪さいあくの場合ばあい5万まん2000人にんと東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいのおよそ13倍ばいにのぼるおそれがあり、避難ひなん者しゃの生活せいかつ環境かんきょうの改善かいぜんなどが急務きゅうむとなっています（※国くにの想定そうていで各かく都府県とふけんの想定そうていとは異ことなります）。

最大さいだいM9クラス「激はげしい揺ゆれ」「大津おおつ波なみ」が超ちょう広域こういきに

政府せいふの地震じしん調査ちょうさ委員いいん会かいが今後こんご30年ねん以内いないに発生はっせいする確率かくりつを「80％程度ていど」としている南海なんかいトラフの巨大きょだい地震じしん。最大さいだいでマグニチュードは9クラスとされ、激はげしい揺ゆれと大津おおつ波はが「超ちょう広域こういき」に及およぶのが特徴とくちょうです。

揺ゆれは、

・震度しんど6弱じゃく以上いじょうが神奈川かながわ県けんから鹿児島かごしま県けんにかけての24府県ふけん600市町村しちょうそん

・震度しんど7が静岡しずおか県けんから宮崎みやざき県けんにかけての10県けん149市町村しちょうそん

で想定そうていされています。

津波つなみは、

・3メートル以上いじょうが福島ふくしま県けん～沖縄おきなわ県けんにかけての25都府県とふけん

・10メートル以上いじょうが関東かんとう～九きゅう州しゅうにかけての13都県とけん

で想定そうていされています。

また、高知こうち県けんと静岡しずおか県けんでは局地きょくち的てきに30メートルを超こえるおそれがあります。

今回こんかいの想定そうていでは、揺ゆれや津波つなみのモデルはこれまでと同おなじですが、より現実げんじつに近ちかい地形ちけいデータを使つかったことで浸水しんすいする範囲はんいが前回ぜんかいより広ひろがり、30センチ以上いじょうの浸水しんすい面積めんせきは全体ぜんたいで11万まん5000ヘクタール余あまりとおよそ30％増ふえました。また、地盤じばんのデータを見直みなおしたことで揺ゆれも一部いちぶで変かわりました。

「死者ししゃ」最悪さいあくで29万まん8000人にん

死者ししゃは最悪さいあくで29万まん8000人にんにのぼり、前回ぜんかいの32万まん3000人にんから8％ほどの減少げんしょうにとどまっています。最もっとも多おおくなるのは冬ふゆの深夜しんやに起おきた場合ばあいです。

内訳うちわけは、

・津波つなみによるものが最もっとも多おおく、21万まん5000人にん

・建物たてもの倒壊とうかいによるものが、7万まん3000人にん

・地震じしん火災かさいによるものが、9000人にん

となっています。

津波つなみによる死者ししゃは、想定そうていの前提ぜんていとなる津波つなみの浸水しんすい域いきが広ひろがったことや避難ひなんが遅おくれた場合ばあいも想定そうていしたことで多おおくなっています。

また、建物たてもの被害ひがいは全壊ぜんかい・焼失しょうしつが最大さいだいで235万まん棟むねと前回ぜんかいの238万まん6000棟むねから2％ほどの減少げんしょうにとどまっています。

「災害さいがい関連かんれん死し」を初はつ試算しさん最大さいだいで5万まん2000人にんに

対策たいさくを議論ぎろんするため、今回こんかい初はじめて試算しさんされたのが「災害さいがい関連かんれん死し」です。

避難ひなん生活せいかつの中なかで体調たいちょうを悪化あっかさせて亡なくなる「災害さいがい関連かんれん死し」は、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいでおよそ3800人にんにのぼっているほか熊本くまもと地震じしんや能登のと半島はんとう地震じしんでは、揺ゆれや津波つなみで亡なくなる「直接ちょくせつ死し」の数かずを上回うわまわっていて繰り返くりかえし課題かだいとなっています。しかし、災害さいがい関連かんれん死しにはさまざまな要因よういんがあって推計すいけいする手法しゅほうは定さだまっておらず、過去かこの東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの岩手いわて県けん・宮城みやぎ県けんや、能登のと半島はんとう地震じしんなどの例れいをもとに「避難ひなん者しゃ1万まん人にんあたり40人にんから80人にん」が亡なくなるとして今回こんかい、試算しさんされました。

その結果けっか、冬ふゆの夕方ゆうがたに地震じしんが起おきた場合ばあい、

・2万まん6000人にん～5万まん2000人にん

とされ、最大さいだい値ちは東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの10倍ばいを上回うわまわるという深刻しんこくな結果けっかとなりました。

都府県とふけん別べつの数字すうじは地域ちいきごとの事情じじょうを反映はんえいした数字すうじになっていないとして公表こうひょうしていませんが、国くにの推計すいけい手法しゅほうをもとにNHKで試算しさんしたところ、避難ひなん者しゃの多おおい東海とうかいの静岡しずおか・愛知あいち・三重みえの3県けんだけでもおおむね1万まん～2万まん人にんという結果けっかになっています。

また、今回こんかいの想定そうていでは東京とうきょう電力でんりょく福島ふくしま第だい一いち原子力げんしりょく発電はつでん所しょの事故じこの発生はっせいで長期ちょうき間かんかつ広域こういきの避難ひなんを余儀よぎなくされた福島ふくしま県けんの状況じょうきょうを参考さんこうに、より厳きびしい事態じたいを推計すいけいすると全国ぜんこくで13万まん6000人にんにのぼるとしています。

“災害さいがい関連かんれん死しのリスクが高たかい人ひと”の規模きぼも推計すいけい

災害さいがい関連かんれん死しの推計すいけいには限界げんかいがあることから、災害さいがい関連かんれん死しのリスクが高たかく、対応たいおうが必要ひつような人ひとの規模きぼについても推計すいけいされました。

いずれも避難ひなん所しょで過すごす人ひとのうち、1週間しゅうかん後ごの最大さいだい値ちでは、

・要よう介護かいご認定にんてい者しゃは、26万まん5000人にん

・妊産婦にんさんぷは、8万まん人にん

・難病なんびょう患者かんじゃは、5万まん3000人にん

にのぼるとされています。

また、

・医療いりょう機関きかんで受け入うけいれきれない患者かんじゃは、15万まん5000人にん

・人工じんこう透析とうせきが必要ひつような人ひとのうち停電ていでんや断水だんすいの影響えいきょうを受うけるのは、12万まん人にん

・人工じんこう呼吸こきゅう器きを在宅ざいたくで利用りようしている人ひとのうち停電ていでんの影響えいきょうを受うけるのは、6700人にん

にのぼるとされました。

特とくに最大さいだいクラスの地震じしんでは、被害ひがいがきわめて広域こういきにおよぶためこうした人ひとたちが十分じゅうぶんな支援しえんを受うけられず災害さいがい関連かんれん死しが増加ぞうかするおそれがあるとしています。

そのため、ふだんから地域ちいきの診療しんりょう所しょや介護かいご施設しせつの耐震たいしん化かを進すすめるとともに、保健ほけん師しやDWAT（ディーワット）＝災害さいがい派遣はけん福祉ふくしチームを迅速じんそくに派遣はけんできる体制たいせいや、炊き出たきだしや入浴にゅうよくなどの支援しえんを速すみやかに届とどける対策たいさくが避難ひなん所しょの内外ないがいで必要ひつようだとしています。

「避難ひなん者しゃ」最大さいだいで1230万まん人にん長期ちょうき化かのおそれも

暮くらしや経済けいざいに関かかわる被害ひがい想定そうていも改あらためて算出さんしゅつされましたが、避難ひなん者しゃは地震じしんの1週間しゅうかん後ごに最大さいだい1230万まん人にんと、全ぜん人口じんこうの1割わりにのぼるほか経済けいざい被害ひがいも270兆ちょう円えん余あまりと国家こっか予算よさんの2倍ばい以上いじょうとなり、深刻しんこくな影響えいきょうが日本にっぽん全体ぜんたいに及およぶことが浮き彫うきぼりとなりました。

避難ひなん者しゃは自宅じたくやライフラインの被害ひがいの影響えいきょうもあって、地震じしんの1週間しゅうかん後ごが最もっとも多おおく、最大さいだいで1230万まん人にんにのぼり、このうち、

・避難ひなん所しょに身みを寄よせる人ひとが、650万まん人にん

・避難ひなん所しょ以外いがいに身みを寄よせる人ひとが、580万まん人にん

と推計すいけいされています。

1か月かげつ後ごになっても最大さいだいで1200万まん人にんと、避難ひなん生活せいかつは大だい規模きぼかつ、長期ちょうき化かするおそれがあるとしています。

前回ぜんかい、2013年ねんの想定そうていでは1週間しゅうかん後ごに950万まん人にんと30％近ちかく（29％）増ふえましたが、津波つなみの浸水しんすい域いきが拡大かくだいしたことや、停電ていでんの影響えいきょうも考慮こうりょするようにしたこと、さらに過去かこの災害さいがいのデータをもとに半壊はんかいの建物たてものからより多おおくの人ひとが避難ひなんする設定せっていにしたことが影響えいきょうしているとしています。

避難ひなん所しょに多おおくの人ひとが身みを寄よせる中なか、行政ぎょうせいや家庭かていの備蓄びちくも底そこをつき、水みずや食料しょくりょう不足ふそくも深刻しんこくになるとされています。不足ふそくする食料しょくりょうは、地震じしん発生はっせいから３さん日間にちかんの合計ごうけいで最大さいだいで１いち９きゅう９きゅう０ぜろ万まん食しょくにのぼり、飲料いんりょう水すいの不足ふそく量りょうは3日間にちかんの合計ごうけいで最大さいだい4370万まんリットルにのぼるとされました。

「経済けいざい被害ひがい」270兆ちょう円えん余あまり国家こっか予算よさんの2倍ばい以上いじょう

経済けいざい被害ひがいも甚大じんだいです。巨大きょだいな経済けいざい圏けんを抱かかえる地域ちいきでインフラやライフラインへの影響えいきょうが甚大じんだいかつ長期ちょうき化かすることから、過去かこの災害さいがいをはるかに上回うわまわるとしています。

・建物たてものや施設しせつの復旧ふっきゅうにかかる直接的ちょくせつてきな被害ひがい額がくは最大さいだいで、224兆ちょう9000億おく円えん

・従業じゅうぎょう員いんや企業きぎょうが被災ひさいし生産せいさん力りょくが低下ていかした影響えいきょうを加くわえると、270兆ちょう3000億おく円えん

にのぼります。

前回ぜんかいの214兆ちょう円えん余あまりから26％ほど増ふえ、国家こっか予算よさんの2倍ばいを上回うわまわります。これに加くわえ、道路どうろや鉄道てつどう、港湾こうわんなど交通こうつうが寸断すんだんすることによる影響えいきょうも加くわえると292兆ちょう円えん余あまりにのぼります。

BCP（業務ぎょうむ継続けいぞく計画けいかく）の作成さくせいなど事前じぜんの対策たいさくが進すすまないまま地震じしんが発生はっせいし影響えいきょうが長期ちょうき化かすると、生産せいさん機能きのうの国外こくがい流出りゅうしゅつなど国際こくさい的てきな競争きょうそう力りょくの低下ていかのおそれがあるとしています。そして、被災ひさいしていない地域ちいきでも物資ぶっし不足ふそくや価格かかく高騰こうとうが続つづくおそれがあるほか、税収ぜいしゅうの減少げんしょうによって国くにや自治体じちたいの財務ざいむ状態じょうたいが悪化あっかする可能かのう性せいもあるとされています。