福井ふくい 女子じょし中学生ちゅうがくせい殺害さつがい きょう再審さいしんの可否かひ決定けってい 名古屋なごや高裁こうさい支部しぶ

38年ねん前まえの1986年ねんに中学ちゅうがく3年ねんの女子じょし生徒せいとが福井ふくい市しの自宅じたくで殺害さつがいされた事件じけんでは、前川まえかわ彰あきら司つかささん（59）が殺人さつじんの罪つみに問とわれ、1審しんでは無罪むざいが言い渡いいわたされましたが、2審しんで懲役ちょうえき7年ねんの有罪ゆうざい判決はんけつを言い渡いいわたされ、最高さいこう裁判所さいばんしょで確定かくていしました。

前川まえかわさんは一貫いっかんして無実むじつを訴うったえて服役ふくえき後ごに再審さいしん＝裁判さいばんのやり直やりなおしを求もとめ、13年ねん前まえに名古屋なごや高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶが再審さいしんを認みとめる決定けっていを出だしましたが、検察けんさつの異議いぎ申し立もうしたてを受うけて取り消とりけされたため、おととし2回かい目めの再審さいしん請求せいきゅうを行おこないました。

審理しんりで最大さいだいの争点そうてんになったのは「事件じけんが起おきた夜よるに、服ふくに血ちが付ついた前川まえかわさんを見みた」などとする複数ふくすうの関係かんけい者しゃが行おこなった証言しょうげんの信用しんよう性せいです。

弁護べんご団だんは、検察けんさつから新あらたに開示かいじされた当時とうじの捜査そうさ報告ほうこく書しょなどを証拠しょうことして提出ていしゅつし、「証言しょうげんは警察けいさつが強引ごういんに誘導ゆうどうするなどしてねつ造ねつぞうされたものだ」と主張しゅちょうしました。

これに対にたいし検察けんさつは「証言しょうげんは大筋おおすじで一致いっちしていて信用しんようできる」と反論はんろんしました。

名古屋なごや高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶは、23日にち午前ごぜん10時じに再審さいしんを認みとめるかどうか決定けっていを出だす予定よていで、有罪ゆうざいの根拠こんきょとされた目撃もくげき証言しょうげんについてどのような判断はんだんを示しめすかが焦点しょうてんとなります。

これまでの経緯けいい

1986年ねん3月つき、福井ふくい市し豊岡とよおかの団地だんちで、卒業そつぎょう式しきを終おえたばかりの中学ちゅうがく3年ねんの女子じょし生徒せいとが、自宅じたくで刃物はもので刺さされるなどして殺害さつがいされているのが見みつかりました。

物的ぶってきな証拠しょうこが乏とぼしく捜査そうさが難航なんこうする中なか、事件じけんの1年ねん後ごに当時とうじ21歳さいだった前川まえかわ彰あきら司つかささん（59）が殺人さつじんの疑うたがいで逮捕たいほされました。

前川まえかわさんは一貫いっかんして無実むじつを訴うったえ、裁判さいばんでは「事件じけんが起おきた夜よるに、服ふくに血ちが付ついた前川まえかわさんを見みた」などとする目撃もくげき証言しょうげんの信用しんよう性せいが最大さいだいの争点そうてんになりました。

1審しんの福井ふくい地方ちほう裁判所さいばんしょは1990年ねん、関係かんけい者しゃの証言しょうげんの内容ないようがたびたび変かわっていることなどを理由りゆうに「信用しんようできない」として無罪むざいを言い渡いいわたしました。

しかし、2審しんの名古屋なごや高等こうとう裁判所さいばんしょ金沢かなざわ支部しぶは、1995年ねんに「証言しょうげんは大筋おおすじで一致いっちしていて信用しんようできる」と判断はんだんして、無罪むざいを取り消とりけして懲役ちょうえき7年ねんを言い渡いいわたし、その後そのご、最高さいこう裁判所さいばんしょで有罪ゆうざいが確定かくていしました。

前川まえかわさんは、服役ふくえきを終おえた後のちの2004年ねんに、名古屋なごや高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶに再審さいしん＝裁判さいばんのやり直やりなおしを求もとめました。

裁判所さいばんしょは2011年ねん、事件じけん後ごに前川まえかわさんが乗のったとされる車くるまの中なかから血液けつえきが検出けんしゅつされなかったことなどから「証言しょうげんの信用しんよう性せいには疑問ぎもんがある」と指摘してきし、再審さいしんを認みとめる決定けっていを出だします。

これに対にたいして検察けんさつが異議いぎを申し立もうしたて、名古屋なごや高裁こうさいの本庁ほんちょうで改あらためて審理しんりした結果けっか、2013年ねんに「証言しょうげんは信用しんようできる」と金沢かなざわ支部しぶとは逆ぎゃくの判断はんだんをして、再審さいしんを認みとめた決定けっていを取り消とりけしました。

その後そのご、最高さいこう裁判所さいばんしょは前川まえかわさんの特別とくべつ抗告こうこくを退しりぞけ、再審さいしんを認みとめない判断はんだんが確定かくていしました。

おととし10月つき、前川まえかわさんの弁護べんご団だんは名古屋なごや高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶに2回かい目めの再審さいしん請求せいきゅうを行おこない、審理しんりでは再ふたたび、目撃もくげき証言しょうげんの信用しんよう性せいが最大さいだいの争点そうてんとなりました。

裁判所さいばんしょとの三さん者しゃ協議きょうぎの中なかで弁護べんご団だんは検察けんさつに対にたいし、過去かこの裁判さいばんで提出ていしゅつされていない証拠しょうこを開示かいじするよう求もとめました。

検察けんさつは当初とうしょ、開示かいじを拒否きょひしましたが、裁判所さいばんしょが再さい検討けんとうを促うながした結果けっか、検察けんさつは警察けいさつが保管ほかんしていた当時とうじの捜査そうさ報告ほうこく書しょなど、合あわせて287点てんの証拠しょうこを新あらたに開示かいじしました。

争点そうてんは目撃もくげき証言しょうげんの信用しんよう性せい

今回こんかいの審理しんりで最大さいだいの争点そうてんとなったのは「事件じけんが起おきた夜よるに、服ふくに血ちが付ついた前川まえかわさんを見みた」などとする、複数ふくすうの関係かんけい者しゃが行おこなった証言しょうげんの信用しんよう性せいです。

弁護べんご団だんは、最初さいしょにこうした証言しょうげんをした知人ちじんについて、警察官けいさつかんが当初とうしょ、「見え透みえすいたうそを述のべている」などと、証言しょうげんの信用しんよう性せいに疑問ぎもんを抱だいていたことが、検察けんさつから新あらたに開示かいじされた捜査そうさ報告ほうこく書しょの記述きじゅつから明あきらかになったとしています。

また、ことし3月つきには、過去かこの裁判さいばんで「服ふくに血ちが付ついた前川まえかわさんを目撃もくげきした」と証言しょうげんした別べつの知人ちじんについての証人しょうにん尋問じんもんが行おこなわれ、この中なかで知人ちじんは「警察けいさつから自分じぶんの犯罪はんざいを立件りっけんしないことと引き換ひきかえに前川まえかわさんの関与かんよを認みとめるよう取り引とりひきを持もちかけられて、うその証言しょうげんをした」と述のべています。

こうしたことから弁護べんご団だんは「警察けいさつは捜査そうさに行き詰いきづまり、最初さいしょに行おこなわれたうその証言しょうげんに依存いぞんしてほかの関係かんけい者しゃを強引ごういんに誘導ゆうどうし、大筋おおすじで一致いっちする証言しょうげんをねつ造ねつぞうした」と主張しゅちょうしています。

これに対にたいし検察けんさつは「主要しゅような関係かんけい者しゃが同おなじ夜よるに、服ふくに血ちがついた前川まえかわさんを目撃もくげきしたという特異とくいな状況じょうきょうを証言しょうげんしていて、警察けいさつがこれら全員ぜんいんにうその証言しょうげんをさせられるとは考かんがえられない」と反論はんろんしています。

また、3月つきの証人しょうにん尋問じんもんで、知人ちじんが「警察けいさつから取り引とりひきを持もちかけられた」と述のべたことについて、検察けんさつは「相手方あいてがたの警察官けいさつかんが死亡しぼうしたあとになされた証言しょうげんであり、信用しんよう性せいは極きわめて低ひくい」としています。

前川まえかわ彰あきら司つかささん「この事件じけんはえん罪えんざい」

前川まえかわさんは今月こんげつ16日にち、福井ふくい市内しないの自宅じたくでNHKのインタビューに応おうじました。

この中なかで前川まえかわさんは、1度ど出だされた再審さいしん開始かいし決定けっていが検察けんさつの異議いぎ申し立もうしたてを受うけて取り消とりけされた1回かい目めの再審さいしん請求せいきゅうについて、「最高さいこう裁判所さいばんしょで特別とくべつ抗告こうこくが退しりぞけられてからは長ながいトンネルだった。生活せいかつが荒あれた時期じきもあった」と振り返ふりかえり、「事件じけん発生はっせいからの38年ねんという時ときの流ながれは、あまりにも長ながかった」と述のべました。

そして、裁判所さいばんしょの決定けっていについて「自分じぶんの訴うったえが通とおるのか不安ふあんになることもあるが、事件じけんの真相しんそうは自分じぶんがよく知しっている。この事件じけんはえん罪えんざいであり、無罪むざいだという思おもいが強つよい」と心境しんきょうを語かたりました。

一方いっぽう、58年ねん前まえに静岡しずおか県けんで一家いっか4人にんが殺害さつがいされた事件じけんの再審さいしんで袴田はかまだ巌いわおさん（88）の無罪むざいが確定かくていしたことについて、前川まえかわさんは「袴田はかまださんの事件じけんの重おもさは計はかり知しれないし、長年ながねん死刑しけい囚しゅうとして生活せいかつして、相当そうとうな苦労くろうをされてきたと思おもう。同おなじようにえん罪えんざいを訴うったえている人ひとたちの希望きぼうになるために、袴田はかまださんに続つづかなければいけないと思おもう」と述のべました。

そのうえで「自分じぶんのケースをきっかけに、司法しほうのあり方ありかたを改あらためてもらいたい」と述のべ、審理しんりの長期ちょうき化かが課題かだいとして指摘してきされている再審さいしん制度せいどを見直みなおすよう訴うったえました。