JLPT N2 – Reading Exercise 8

#141

Furigana

イヌの散歩さんぽをしていると、最近さいきんではイヌも挨拶あいさつの仕方しかたを忘わすれてしまったのではないかと思おもってしまいます。集団しゅうだん行動こうどうを経験けいけんしたことがあるイヌ、もしくは(注1)、飼かい主ぬしからイヌらしい教育きょういくを受うけて順位制じゅんいせい(注2)を感かんじることができるようになったイヌは、道みちでほかのイヌにすれ違ちがい近ちかづいたときには挨拶あいさつらしいことをします。ところが、集団しゅうだん行動こうどうの経験けいけんもなく、家いえでも甘あまやかされて育そだってイヌは。現代げんだいのヒト社会しゃかいのように挨拶あいさつをしないように見みえます。挨拶あいさつをするイヌが、ほかの挨拶あいさつなしのイヌに対たいして威嚇いかくする(注3)ことが観察かんさつされます。ところが、この挨拶あいさつ犬けんが子こイヌと遭遇そうぐうしたときには、子こイヌが挨拶あいさつをできなくても威嚇いかくをしないことが多おおいのです。挨拶あいさつ犬けんにとって子こイヌであるというシグナルがなんなのかわかりませんが、とにかく子こイヌと成犬せいけんとを区別くべつしたうえで挨拶あいさつのあるなしを判断はんだんしているようです。

イヌの挨拶あいさつ行動こうどうは、生得的せいとくてき(注4)あるいは習得的しゅうとくてき(学習的)のどちらでしょうか？順位制じゅんいせいにしたがった行動こうどうができるようになったイヌでは、イヌ社会しゃかいでの経験けいけんがなくてもある程度ていどの挨拶あいさつ行動こうどうができることから、生得的せいとくてきであるといえます。また、より儀式的ぎしきてきな挨拶あいさつ行動こうどうが円滑えんかつに(注5)実行じっこうされるためには、ほかのイヌとの集団しゅうだん生活せいかつがあったほうがよいことから、習得的しゅうとくてきな部分ぶぶんもあるといえるでしょう。

(注1)もしくは:または
(注2)順位制じゅんいせい:上下関係かんけいにもとづいてできた順序じゅんじょの決きまり
(注3)威嚇いかくする:ここでは、ほえて相手あいてを怖こわがるせる
(注4)生得的せいとくてき:生うまれたときから持もっている
(注5)円滑えんかつに:スムーズに、滑なめらかに