JLPT N2 – Reading Exercise 32

数学すうがくに関かんして、ぜひとも言いっておきたいことがあります。
数学すうがくが嫌きらいな人ひとが多おおい理由りゆうの一ひとつは、数学すうがくはできるかできないかがはっきりしているためです。できないと、どうしても嫌きらいになるのです。そこで、ぼくがどうやって数学すうがくを勉強べんきょうしてきたか、「1」 それについて話はなしをします。
ぼくは14歳さいのとき、夏休なつやすみにずっと親おやの別荘べっそうにいて、昼間ひるまずっと数学すうがくの問題もんだいを解といていました。数学すうがくの分厚ぶあつい問題集もんだいしゅうの中なかの問題もんだいを解とく。これは決けっして日本人にほんじんができないことではありません。ただし、日本人にほんじんの多おおくの学生がくせいは、問題もんだいをちょっとだけ考かんがえて、すぐできればいいけれども、できなかったらすぐに解答かいとうの{ページ}をめくって「ああ、なるほど」と納得なっとくして、次つぎの問題もんだいに移うつるのです。「2」これではダメです。（中略ちゅうりゃく）それでは頭あたまの中なかに残のこりません。自分じぶんにとっては、どちらかというと失敗しっぱいの体験たいけんなのです。問題もんだいは解とけなかった。解答かいとうを見みてわかったけれども、自分じぶんでは解とかなかったのです。
ぼくはそうではありませんでした。ぼくは「問題もんだいは自分じぶんの力ちからで解とくべきだ」と考かんがえて、それを断固だんこ実行じっこうしたのです。5分ふんや10分ふんでできた問題もんだいもあれば、30分ふんも1時間じかんもかかった問題もんだいもよくありました。1時間じかんでもできない問題もんだいの場合ばあいには、ぼくは{ベッド}の下したの引ひき出だしに入はいりました。横よこになってふたを下おろすと、まったく暗闇くらやみの中なかです。その身動みうごきができない状態じょうたいで数学すうがくの問題もんだいを考かんがえたのです。ぼくは、「問題もんだいが解とけない限かぎり、ここから出でない」と決心けっしんしました。頭あたまの中なかでは数学すうがくの問題もんだいをずっと考かんがえて、そして結局けっきょく、解とけたのです。さもなければ、いまごろは{ミイラ}になっているでしょう。「3」そんな悠長ゆうちょうなことはしていられない。自分じぶんが一ひとつの問題もんだいを5時間じかんも考かんがえているうちに、外そとの人ひとは20問もんも答こたえがわかってしまう。それでいいのだろうか、と思う人ひとがいるでしょう。でも、ちがうのです。
「問題もんだいを自分じぶんの力ちからだけで解といてしまうことができた。やった！」と、大おおきな喜よろこびを感かんじられます。そして、数学すうがくにもっと興味きょうみがわいてくるのです。「数学すうがくはおもしろいな、楽たのしいな」と思おもえるのです。簡単かんたんな問題もんだいでもいい。それを自分じぶんの力ちからで解とくことによって、興味きょうみが次々つぎつぎにわいてくるものです。それはポジティブな記憶きおくになります。ポジティブな記憶きおくは、頭あたまの中なかに残のこるのです。
逆ぎゃくに、解答かいとうを見みて20問もんがわかったとしても、「結局けっきょくできなかった」と虚むなしさが残のこるだけなのです。この記憶きおくはネガティブな記憶きおくですから、脳のうが忘わすれてしまうのです。
このように、ポジティブな記憶きおくを残のこしていくこと。そのために、いろいろな方法ほうほうを自分じぶんなりに考かんがえてください。そして実行じっこうしてみて、自分じぶんに合あわないとわかれば、別べつの方法ほうほうを探さがせばいいのです。ぼくのとった方法ほうほうも、ぜひ参考さんこうにしてみてください。
（ピーター・フランクル『ピーター流りゅうらくらく学習術がくしゅうじゅつ』による）