昔、山の近くに「ありがたやのじじ」と呼ばれる優しいおじいさんがいました。おじいさんは虫を殺しませんでした。人間は死ぬのがいちばん怖いので、虫も同じだと思っていたからです。
ある日、おじいさんは、隣の町に荷物を届けに行きました。山賊が出るといううわさがあったので、おじいさんは山の神様に「命と荷物を取られないようにして下さい」と祈りました。
しかし、山賊が出てきて「命が惜しかったら荷物を置いていけ」と言いました。おじいさんは山の神様に祈りました。「荷物と私の命を守ってください。命を助けてくれたら、神様をおまつりする建物を必ず建てます」
すると、神様の声が聞こえました。
「わらじを脱いで、頭にのせなさい。命を助けてやる」
おじいさんがわらじを頭にのせると、わらじ虫になりました。そして、荷物は空を飛んで行きました。山賊は神様が怒ったと思って、逃げて行きました。
おじいさんは小さな虫になってしまいましたが、神様に感謝しました。
そして、約束どおり、神様をおまつりする建物を建てました。虫が建てたので、とても小さな建物になりました。
それから、この山の道を「むしまつり峠」と呼ぶようになりました。