希少な生物が数多く生息している地域には、同様に希少な言語が数多く存在しているという事実に注目すべきである。このような相関関係を示す調査結果が、米英の共同研究チームによって米国科学アカデミー紀要に発表されたものの、これらの言語の多くは話者数が著しく少ない上、英語をはじめとする国際的な言語の拡大によって、絶滅の危機にさらされているのは言うまでもない。
研究グループは約6900の言語を対象として、地域的な特徴と生態系との関連性を詳細に分析した。その結果、全体のほぼ半数に当たる約3200の言語が「ホットスポット」と呼ばれる35の地域に集中していることが明らかになった。この地域は地球表面のわずか2.3%にすぎないにもかかわらず、世界の植物のおよそ半数や陸上脊椎動物の約40%が、そこにしか生息しない固有種であることが判明している。
また、約2200の言語はこうした地域に固有のものであり、そのうち約1500言語が話者1万人以下、さらに約500言語は話者が1000人にも満たない。このような言語は単なる文化的遺産というだけでなく、生態系の多様性と不可分な「知の体系」としての価値を有していると言える。
言語と生物多様性が同一地域に集中している理由については、「極めて複雑であり、地域ごとに異なる要因が絡み合っている」として、研究チームは詳細な分析を控えているものの、論文は明確に警鐘を鳴らしている。すなわち、国際的な経済活動の拡大が希少な言語に対する脅威となっていることは否定できず、経済のグローバル化が進むにつれて、少数言語やそれに根ざした地域文化が淘汰されていくのは避けられないという現実である。言語と生物、二つの多様性の喪失は、人類社会全体の精神的な貧困を招くに違いない。