20世紀半ばまで工業地帯として栄えたニューヨーク州バッファローを取材中、セオドア・ルーズベルト大統領が就任宣言をした邸宅を見つけた。ここは、国定史跡として展示施設になっている。
首都ワシントンから遠く離れた町でなぜ就任式をしたのだろう。大統領たる者、首都ワシントンでやりたいと思わなかったのであろうか。
就任式がいかなる理由で行われたのかと学芸員に聞くと、「マッキンリー大統領がバッファローで暗殺されたがゆえに、副大統領から昇格するセオドア・ルーズベルトの就任式が関係者から言われるままに急遽行われたものだった」と1901年9月14日の就任宣言にまつわる話をしてくれた。
マッキンリーが当地を訪ねたのは、開催中のパンアメリカン博覧会を視察するためであった。近くのナイアガラの滝の水力を使った大規模発電が博覧会の'売り'で、地元のビルというビルは毎晩ライトアップされた。「アメリカ大陸の豊かな自然は私達に限りない発展の機会を与えてくれる」とか、そんな言葉が飛び交っていたという。
米国が大量消費文化を謳歌し覇権国家への道をひた走る20世紀の幕が開けたばかり。「町の人々は活力に満ち、無限の可能性を信じていた」と学芸員は言う。
あれから120年後の今、バッファローは中西部の「ラストベルト」(錆びた工業地帯)と同様、経済再生に取り組んでいる。この地に米国を支える活力がよみがえるのか、それともこれはもうどうにもならないことなのか…。町のこれからが気になるところだ。