むかし、伯耆国という町に小さい宿屋がありました。新しい宿屋で、最初のお客さんは行商人でした。主人はお客さんをとても親切にむかえました。宿屋はきれいで、料理もおいしかったです。行商人はお酒を飲んで、ふとんで休みました。
そのとき、子どもの声が「兄さん、寒いね」「お前も寒いね」と聞こえました。行商人は子どもが部屋に入ったと思い、「ここは君たちの部屋じゃないよ」と言いました。でも、また声が聞こえました。行商人は部屋を見ましたが、誰もいませんでした。
もう一度ふとんに入ると、また子どもの声がしました。今度は、声がふとんの中から聞こえました。行商人はこわくなり、主人に話しましたが、主人は信じませんでした。行商人は宿を出ていきました。
次の日、別のお客さんも同じことを言いました。主人はふとんを調べました。すると、やはりふとんから声が聞こえました。主人はふとんのことを調べて、前の持ち主を見つけました。
その家族はとても貧しく、兄弟だけが残りました。冬の日、最後のふとんもなくなり、兄弟は寒い家で抱き合って眠りました。「兄さん、寒いね」「お前も寒いね」と言いながら、二人はそのまま亡くなりました。
主人はふとんをお寺に持っていき、お経をあげてもらいました。それから、ふとんの声は聞こえなくなりました。