イギリスのコンサルティング会社ヘンリー・アンド・パートナーズが13日に公表した「パスポートパワーランキング」の最新版では、米国の順位が過去1年間で再び上昇したものの、長期的な視点では下落の傾向に歯止めがかかっていないことが明らかになった。 最新のランキングで米国はビザなし入国可能国数を7か国減らしたにもかかわらず、トップ10に復帰した。
しかし、10年前である2014年には、英国と並ぶ世界最強であったことを考えると、その後の順位低下は顕著である。同調査が開始された2006年以来、米国の下落幅はベネズエラ、バヌアツに次ぐ歴史的な規模となった。特に、過去1年間での7か国減少という数字は、米国の国際的な影響力後退の象徴とも言える。
ヘンリー・アンド・パートナーズのランキングは、各パスポートがビザなしで入国できる国の数に基づいて各国のパスポートの「力」を評価している。そのため、複数の国が同じ順位になることも多い。たとえば、欧州10か国がともに4位にランクインしているという事実は、単純に1国対1国の比較でない、より複雑な国際関係の現実を映し出している。
国際政治学の専門家であるオーストリア・ウィーンの人間科学研究所所長は、パスポートの「力」は単なる旅行の自由度だけでなく、「国際的信頼度」や「外交能力」「政治的安定性」などを映し出す指標であると述べた。米英両国のビザなし国数の減少は、経済的な要因や技術的な異常でなく、むしろ地政学的再編の前兆として読み取るべきである。
シンガポールのパスポートが、ここ数年で最強の座を維持していることも注目に値する。192か国にビザなし入国を認めるシンガポールは、地理的に小さな国であるにもかかわらず、国際的な影響力を高めていることを示している。
また、過去20年間でビザなし入国国数を最も増やしたのはアラブ首長国連邦(UAE)だ。同国の順位上昇は、観光や経済活動の自由度向上を戦略的に活用してきた結果であると言えよう。
一方、米国の政策はあくまで一方的なものである。米国人が比較的自由に海外旅行できるのに対し、米国自体がビザなし入国を認める国はわずか46か国しかない。そのバランスの悪さは、自国民の行動の自由を国際社会に返すには至っていない。つまり、米国は他国に対する開放度と自国民の渡航の自由度との間に世界最大の格差を示す国ということになる。
中国会計大手グラントソーントン・チャイナのティム・クラッテ氏は、米国の政策は「ナショナリズムへの回帰」に他ならないと批判した。一方、近年中国が進めるビザ免除国の増加は、対照的に開放性を強調する政策だ。中国は自国民の海外旅行の自由度を高めつつ、逆に海外からの訪問者の門戸を広げており、その開放性が今後の国際社会での地位競争において優位をもたらすとクラッテ氏は予測する。
このように「パスポートの力」は単なるランキングに過ぎないように見えるが、その背後には各国の外交政策や地政学的戦略が色濃く反映されている。
「パスポート戦争」は、表向きのランキングよりも遥かに深い意味を持つ地政学的な競争の一端に過ぎない。ランキングの浮き沈みから地政学的潮流を推して知ることができるだろう。