昔、広島県の馬木という村に、天基上人というお坊さんが住んでいました。天基上人は小さな家で一人で暮らしていました。ある日、年をとったタヌキの夫婦が、天基上人のお経を聞きに来るようになりました。タヌキの夫婦は家の下で静かにお経を聞いていました。
ある寒い夜、タヌキの夫婦は「今日はとても寒いので、中に入れてください」と言いました。
天基上人はタヌキの夫婦を家の中に入れてあげました。それから、タヌキの夫婦は毎日家の中でお経を聞くようになりました。
タヌキの夫婦はとてもかしこくて、天基上人に山芋や木の枝などをおみやげに持ってきました。また、村の人たちが集まるとき、タヌキの夫婦は旅人の姿になって家に入ってきました。
冬が近づいたある日、タヌキの夫婦は「これから寒くなるので、お経を聞きに来られません。ありがたいお経を書いてください」とお願いいしました。天基上人は「南無妙法蓮華経」と書いた紙をタヌキの夫婦にあげました。
春になると、タヌキの夫婦はまた天基上人のところに来て、「お経のおかげで、冬の間、元気に過ごせました」と感謝しました。
ある雨の夜、タヌキの夫婦は「今日が最後です。今までありがとうございました」と言いました。
天基上人は「村の人たちは、大雨のときに水が大きな川に流れてほしいと思っています」と言いました。
その後、大きな川のそばに、タヌキの夫婦のように見える大きな岩ができました。この岩は、大雨のときに水を川に戻して、村を守っていると言われています。