アメリカの大統領は、国連総会で演説し、みずからが各地の紛争を終結させたとアピールする一方、国連は期待に応えていないと批判を展開しました。
大統領は、ニューヨークの国連本部で23日、一般討論演説を行いました。
演説では「私は7つの終わりのない戦争を終わらせた。みな、私がノーベル平和賞を受賞すべきだと言うが、私が関心があるのは、賞ではなく命を救うことだ」と述べ、各地の紛争の終結に取り組み、成果をあげたとアピールしました。
一方で、国連については「途方もない可能性があるが、少なくともいまはその期待に応えていない」と批判しました。
そのうえで、国連が主導する気候変動対策について「気温が上がっても下がってもそれを気候変動だという。これは世界で行われた最大の詐欺行為だ。国連などの予測はすべて間違いだった」と主張し、移民政策についても「国連はアメリカに不法入国する人々を支援している」と批判を展開しました。
一方、中東情勢をめぐって、大統領は、イギリスやフランスなどがパレスチナを国家として承認したことについて「ハマスへの大きな報酬になる」と非難し、反対する姿勢を示しました。
また、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐっては中国とインドがロシア産原油の購入を続け、戦争を支援していると非難するとともに、NATO=北大西洋条約機構の加盟国もロシア産エネルギーの輸入を減らしていないとして対応を求めました。
生物兵器については「すべての国がわれわれとともに生物兵器の開発を完全に止めるよう呼びかける」と述べ、生物兵器禁止条約の履行に向けた国際的な取り組みをアメリカが主導する考えを示すとともに「国連が建設的な役割を果たすことを期待する」と述べました。
さらに核兵器について「われわれは核兵器の開発停止を求める。その威力は使うことが許されないほどだ。仮に使用すれば世界は文字どおり終わる」と述べました。
そのうえで「世界一のテロ支援国家が最も危険な兵器を持つことは決して許されない」と述べ、アメリカ軍によるイランの核施設への空爆を正当化しました。
大統領ウクライナ侵攻の戦況評価を転換させたか
大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領との会談のあと、みずからのSNSに「私はウクライナはヨーロッパの支援があれば、元の姿を戦って勝ち取る状況にあると考える」と投稿しました。
ウクライナ情勢をめぐって大統領はこれまで前線を踏まえた領土交換の可能性に言及するなどロシア寄りともとれる姿勢を示していただけに、アメリカの主要メディアは大統領がウクライナ侵攻についての見方や、戦況の評価を転換させた可能性があるなどと伝えています。
装置故障などで国連に皮肉も
アメリカの大統領は、演説の際、原稿を表示する「プロンプター」という装置が突然、故障したほか、会場に向かうエスカレーターが乗ろうとしたとたん、停止するトラブルに見舞われました。
大統領は演説で「私は7つの戦争を終わらせたのに、国連からは助けようという電話の1つもなかった。国連が私にくれたのは、ひどいエスカレーターとひどいプロンプターだけだ」と皮肉を込めて述べました。
大統領「わが国は100%国連を支持する」
一方、国連総会での演説後、大統領は国連のグテーレス事務総長と会談し、「国際の平和」という目標では国連と協力する考えを示しました。
大統領は再選後、国連のグテーレス事務総長と初めて会談しました。
このなかでグテーレス事務総長は「国連は何十年にもわたり、アメリカを政治的にも財政的にも主な支援者として頼ってきた。これはアメリカ国民の寛大さによるものだ」と感謝した上で、大統領による平和の実現に向けた取り組みを評価する考えを示しました。
これに対し大統領は「わが国は100%国連を支持する。国連の可能性は本当に驚くべきものだ。ときには意見が合わないこともあるかもしれないが、私は国連を支持している。なぜなら国連が持つ平和への可能性は非常に大きいからだ」と述べました。
国連は「国際の平和」と「人権」、それに「持続可能な開発目標SDGs」を3本柱としていますが、トランプ政権の発足後、アメリカは国連に対し、「国際の平和」を実現するという目的に集中するべきだと繰り返し主張しています。
アメリカ第一主義を掲げる大統領は、国連などの国際機関に対し予算を大幅に削減したほか、気候変動など国連が掲げるSDGsに反対の立場を表明してきましたが、今回の事務総長との会談で、平和の実現という目的では国連と協力する考えを示した形です。
日本政府は「二国家解決」を支持する立場
日本政府はイスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和で安全に共存する「二国家解決」を支持する立場です。このため、イスラエルによるガザ市への地上作戦など、一連の軍事行動は「二国家解決」の前提が崩れかねないとして強く非難しています。
また、パレスチナに対しては、ガザ地区の人道状況が悪化していることを受け、現地でけがをしたパレスチナ人を治療のため日本国内で受け入れたほか、食料危機に対して無償資金協力を行うなど支援を続けてきました。
一方、G7=主要7か国の中からもイギリスとカナダがパレスチナを国家として承認しましたが、日本は国連総会のタイミングでは承認を見送る方針です。
日本政府関係者は「将来的な国家承認を前提に国づくりに協力していく立場だ」と説明し、アメリカが国家承認に否定的な立場をとっていることについては「考慮していないわけではないが、承認のタイミングは日本が主体的に判断する」としています。
日本政府としてはイスラエル、パレスチナの双方に対して和平に向けた努力を促し、パレスチナを国家として承認する適切なタイミングを見極めていく方針です。
シークレットサービス“企てを未然に防いだ”
アメリカ大統領の警護を担当するシークレットサービスは23日、各国の首脳が演説を行うニューヨークの国連本部の周辺で通信ネットワークに混乱をもたらすおそれのある企てを未然に防いだと発表しました。
国連本部から60キロほどの圏内で、通信に使われる300台以上のサーバーと10万枚のSIMカードが見つかったということです。
これらの機器を用いることで、アメリカ政府高官が通信上で攻撃を受けたり、携帯電話の基地局が機能停止になったりするおそれがあったとしています。
また暗号を用いた通信にも使われ、詳細は明らかにしていませんが、これまでに捜査当局が把握している人物などの間で通信が確認されたということです。
有力紙ニューヨーク・タイムズは当局や専門家の話として、発見された機器は1分間に3000万通のメッセージを匿名で送信できる能力があり、規模の大きさから国家による監視活動の一環である可能性もあると伝えています。
国連本部では23日からアメリカの大統領をはじめ各国の首脳などが演説を行い、周辺では厳重な警備態勢が敷かれています。