JLPT N1 – Reading Exercise 01
都市の駅構内では、朝のラッシュ時に多くの人々が行き交い、アナウンスや足音、電車の到着音などが絶え間なく響いている。そのような環境でも、目的の電車の発車案内や自分の乗るべき路線の情報だけを聞き取ることができる。このような雑多な音の中でも、必要な情報を選び取って理解できるのは不思議なことである。私たちの聴覚には、同時に多くの音が流れ込んでいるが、混乱せずに済むのは、意識的に注意を向ける対象を選び出す「選択的聴取」が働いているからだ。選択的に注意を向けた音は詳細な認知がなされ、そこで初めて意味が把握される。
しかし、詳細に認知されるのは注意を向けた音だけではない。例えば、電車の案内を聞いている最中でも、急に非常ベルが鳴ればすぐに気づくし、遠くで知人の声が自分の名前を呼ぶのも聞き逃さない。このような場合の音の処理は、無意識のうちに行われる自律的な認知である。ここでは音の高さやリズム、特徴的なフレーズなど物理的な側面が処理され、内容の深い理解は伴わない。一方、騒がしい駅で目的のアナウンスを理解できるのは、意識的な認知過程であり、情報処理の制御が自分の意志で行われている。意識的な認知では、過去の経験や知識が活用され、情報の本質的な理解が可能となるのである。