JLPT N1 – Reading Exercise 44
どのような分野であれ、一つの芸術作品を独力で完成させるためには、極めて高度な才能と経験が求められる。そのような能力を持つ芸術家はごくわずかであり、完成品の数も当然限られる。しかし、制作過程を段階ごとに分けてみると、各段階の作業は意外と単純であることが多い。例えば、下絵を描く、色を塗る、仕上げをするなど、個々の工程に分ければ、それぞれを担当できる人材は、全体を一人で仕上げられる芸術家よりもはるかに多い。また、未経験者が一つの工程だけを繰り返し練習することで、比較的短期間でその工程を習得することも可能である。こうした制作工程の分割と役割分担、すなわち分業体制は、確実に「1」生産効率を高めるものだと言える。
一つの共同体に属するということは、その共同体の他の構成員と分業による協力関係を築くことを意味する。
あなたの手がける作業も、遠く離れた場所で働く見知らぬ誰かの作業も、「2」同じ分業のネットワークの中に位置づけられているのである。
現代では分業のネットワークは国境を越えて広がっており、あなたが行った作業が、遠い国の誰かの作業と結びついて一つの作品や商品を生み出すことも珍しくない。分業のネットワークが地球規模に拡大し、たとえば一つの映画を制作するために、脚本、撮影、美術、編集、音楽といった多様な作業が世界中で分担されている現代は、まさに人類史上かつてないほど創造性が発揮される時代だと言える。