JLPT N1 – Reading Exercise 91
「1」電話というものが、どうも好きになれない。電話をかけなければならない状況になると、急に手が冷たくなったり、心臓がドキドキしたりする。
もともと、人と話すのが苦手だ、ということもある。しかし、それ以上に電話が苦手なのは、あの独特のルールのせいである。
まず、「もしもし」という挨拶がどうも納得できない。「もしもし」は「聞こえていますか」という意味らしいが、今ではその意味を意識して使っている人は少ないだろう。意味もわからずに、なぜ「もしもし」と言わなければならないのか、私には理解できない。
(中略)
勿論、「ルール」がすべて悪いとは言わない。もともとルールというのは、みんなが混乱しないように存在するものだ。ルールがあるからこそ、私たちは「2」余計なことに頭を悩ませずにすむ。もし電話のルールがなかったら、私たちは電話をかけるたびに、「最初に何と言えばいいのか」とか、「この言い方は失礼ではないか」とか、細かいことに気を使いすぎて、話す前から疲れ果ててしまうかもしれない。
だが、そうしたルールの役割を認めた上で、今の電話のルールは形だけになっている、と私は思う。そして、それが私たちの会話を不自然なものにし、電話でのやりとりを息苦しいものにしている。ルールを守れば守るほど、会話からどんどん自然さが失われていくのだ。