JLPT N1 – Reading Exercise 101
日本の伝統芸能の中で、「型」と「自由」の関係はしばしば議論の対象となる。たとえば能や歌舞伎の世界では、厳格に定められた所作や発声法が何世代にもわたって受け継がれてきた。しかし、これらの芸能の熟練者たちは、単に「型」をなぞるだけでなく、その内部に独自の表現を見出すことを重視している。
この「型」と「自由」の関係について、芸能の歴史家である佐藤は、両者を明確に区別しようとした。演目や時代、また観客との関係性によって、佐藤の考える「型」と「自由」の境界は、はっきりしている場合もあれば、そうでない場合もある。しかし、曖昧な場合であっても、「型」を徹底的に体得した先に「自由」が生まれるという段階的な連続性の中で——両者が接し、境界がぼやけていることはあっても、その両端では違いが明確である、という形で——語られている。
具体的な決まりや伝承に基づかず、あるいは根拠が曖昧なまま行われる即興的な演技を「自由」とし、より明確な規範や伝統に基づく演技を「型」として、佐藤は使い分けているのである。したがって時には、「やや」や「ほとんど」といった限定語を付け加える必要があるが、「自由」には芸能の精神として消極的な評価が、「型」には積極的な評価が付されている。