JLPT N2 – Reading Exercise 33
現代社会では、失敗をできるだけ避けたいと考える人が多い。特に若い世代は、失敗しないように慎重に行動する傾向が強い。しかし、失敗を恐れてばかりいると、新しい挑戦をする機会が減ってしまう。実は、失敗は単なる「悪いこと」ではなく、成功への大切な「手がかり」でもある。科学者は実験でうまくいかなかったとき、それを「間違った方法が一つ減った」と考える。失敗するたびに、成功へ至る道が少しずつ明確になっていくのである。
このような「失敗の活用」については、昔から議論されてきた。そのため、子供たちに失敗を恐れず挑戦することの大切さを教える教育も工夫されてきた。しかし、私が思うことが一つある。そうした教育をしているのは、失敗を前向きにとらえられる人たちだ。だから、口を揃えてこう言う、「失敗から学ぶことの大切さを子供たちに伝えたい」と。この言葉を聞くたびに、「失敗を前向きに受け入れるべきだ」という価値観を押しつけているように感じてしまう。スポーツや勉強で失敗することの大切さを知ってもらいたい、という考え方は他の分野にもある。しかし、失敗の場合は、それほど単純な問題ではないと思う。スポーツや勉強が苦手な人は、それを避けても生きていける。しかし、失敗を避けてばかりいると、現代社会で成長することはほとんど不可能なのである。もはや、好き嫌いだけで考えられるものではない、ということだ。
(注1)手がかり:問題を解決するためのヒントやきっかけ