昔、秋田の田沢湖の近くに、宇治川という相撲取りがいました。宇治川はとても力持ちでしたが、もっと強くなりたいと思っていました。ある夜、友だちの松笠山と一緒に天正寺の前を通ると、どこからか赤ちゃんの泣き声が聞こえました。見ると、女の人が赤ちゃんを抱いていて、「髪を結う間、この子を抱いていてください」と言いました。松笠山は赤ちゃんを受け取りましたが、だんだん重くなって、ついに耐えられず赤ちゃんを投げてしまいました。その後、松笠山は亡くなってしまいました。
宇治川は和尚から、昔、武士の家で働いていた娘が赤ちゃんを死なせてしまい、娘も亡くなった話を聞きました。女の人はその娘の幽霊で、赤ちゃんを最後まで抱くと「おぼう力」という特別な力をもらえるけれど、途中で投げると命を失うと言われました。
宇治川は松笠山のために、毎晩天正寺で女の人を待ちました。一ヶ月後、女の人がまた現れて、宇治川に赤ちゃんを抱かせました。赤ちゃんはとても重くなりましたが、宇治川は最後まで頑張りました。女の人は赤ちゃんを受け取り、消えてしまいました。
宇治川は「おぼう力」を手に入れて、とても嬉しくなり、帰り道でいろいろな物を遠くに投げました。でも、次の日、投げた物は全部元の場所に戻っていました。夜、宇治川がこっそり見ていると、和尚が物を持って戻しているのを見つけました。和尚も「おぼう力」を持っていたのです。宇治川は自分の行いを反省し、松笠山に約束して、立派な相撲取りになりました。