(格助)
〔現在では「え」と発音。 「あたり」の意の名詞「へ(辺)」から〕
(1)動作・作用の向けられる方向を示す。
「東~進む」「佐渡~佐渡~と草木もなびく」「秋風に大和~越ゆる雁がねはいや遠ざかる雲隠りつつ/万葉2128」
(2)動作・作用の向けられる対象を示す。
「君~のお願い」「当局~陳情する」「巻物三巻を作りて, 院~まゐらせけれども/平治(上・古活字本)」
(3)動作・作用の帰着点を示す。
「東京~着く」「山頂~たどりつく」「また仁和寺~帰りて, 親しきもの, 老いたる母など, 枕上によりゐて/徒然 53」
(4)動作・作用の行われる場所を示す。
「使いの者が玄関~来ています」「郎等ガオ庭~祗候(シコウ)ツカマツッタコトモ/天草本平家 1」
(5)(「…たところへ」「…ているところへ」などの形で)動作・作用の行われる事態を表す。
「ちょうど寝たところ~, お客が来た」「風呂にはいっているところ~, 電話がかかってきた」
〔(1)上代からある語で, (1) すなわち移動性の動作の目標を示すのが原義。 (2)(2)~(4) は中世以降見られるようになったもの。 「へ」は, 時代のくだるに従ってその用法を拡大し, 現代では同用法の「に」とともに広く用いられるようになった。 しかし, 「へ」は「に」にくらべて, その方向指示性・移動性をより強く表す語であるといえる〕
→ に(格助)