JLPT N1 – Reading Exercise 18
約二十年前、企業の広報担当者は、報道機関との接触を極力避ける傾向が強かった。「記者に情報を渡すと、都合の悪い部分まで報道されてしまう。企業秘密を守るためには、できるだけ沈黙を保つべきだ」という考えが支配的だったのである。しかし現在では、状況は大きく変化した。企業は自社の活動や理念を社会に積極的に発信することが当然とされ、広報部門は戦略的なメディア対応を展開している。時代は変わるものだ。
(中略)
企業側の情報発信が巧妙になるほど、報道機関が企業の単なる広報媒体となってしまう危険が高まる。多くの新聞やテレビが、企業の発表資料や記者会見をもとに記事を作成しているが、これは本来、報道機関が自ら取材し、何を伝えるか主体的に判断するという役割を、企業側に半ば委ねてしまっているのではないか。
自分で独自の情報を掘り起こすよりも、企業の提供する資料を利用する方が確かに効率的である。
海外のジャーナリズムの教科書にも、企業はマスメディアを自社の宣伝機関とみなす傾向があると指摘されている。報道機関は、巧妙な広報戦略を持つ企業とどう向き合うべきか。その理念と姿勢を、今一度自覚し直す必要がある時代となった。