JLPT N1 – Reading Exercise 53
私には、人の話を最後まで聞く癖がある。「人」というのは、主に研究者たちのことである。これは、私が寛容だからではなく、むしろ自分の不安から来ている。どうしても納得できない意見もあるが、できるだけ相手の立場を理解しようと努めれば、多くの場合は共感できる部分が見つかる。たとえ自分の意見と対立しても、率直に異論を述べるのが、議論の誠実さであろうが、なかなか「1」この原則を守るのは難しい。守れないのは、私自身の自信のなさや弱さの表れだろう。相手を論破しようと、反論ばかりを考えるのも、狭い態度であるが、逆に何事も波風を立てないようにと、曖昧な同意に終始するのも、「2」よくないと思う。私は時に、自分の主張を強く否定した相手の意見に対して、あえて賛同を示すことがある。これは、
自分を否定した相手に対しても寛容でありたい、つまり自分の度量の広さを示したいという思いからであり、結局は度量の広さではなく、自分の弱さをさらけ出しているにすぎない。