JLPT N1 – Reading Exercise 104
現代社会において、法律文書や契約書の文章は、しばしばその目的が極めて明確であるため、読み手は自身の目的意識に基づいて内容を精査する。したがって、目的に沿った情報が正確かつ網羅的に記載されていれば、読み手は高い満足感を得る。たとえば、「新規事業に関する契約書」を必要とする人がその文書を読み、必要な条項が過不足なく盛り込まれていれば、評価は非常に高いものとなる。逆に、記載内容が不十分であれば、その評価は下がり、満足感も減少する。
しかし、もし書き手と読み手の間で、その文書を媒介として記載事項以上の発見や洞察が生まれるならば、読み手にとっては最大級の満足となる。言い換えれば、読み手が新たな視点や解釈を得るきっかけとなる文章こそが、通常の評価を超える価値を持つ。それは書き手と読み手の「1」相乗効果(二者の協働によって単独以上の成果が生まれる現象)であり、それを生み出すには、書き手が常に読み手の立場を想像し、共に課題解決に取り組む姿勢を持つことで文章が磨かれる。
どれほど専門的な法律文書であっても、「AはBであるから従え」といった一方的な態度では、読み手の満足感は低い。むしろ、読み手は自身の理解不足を痛感し、疎外感を覚え、書き手への信頼感も薄れ、読む意欲を失う。文章の目的を達成するために最も重要なのは、読み手が最後まで読み進めてくれることである。どれほど優れた内容が記載されていても、読み手が読む気を失えば、その目的は果たされない。
企業の報告書で、「2」そのことが最も顕著に現れる。提出される書類の数が膨大なため、すべてを詳細に理解しながら読むことは現実的に不可能である。結局、冒頭の数行や全体の構成をざっと見て、読む気が起こるかどうかが評価に大きく影響する。これは、行政機関に提出する申請書や、研究助成の応募書類などでも全く同様である。
この意味で、読み手の関心を引きつける文章であるかどうかは極めて重要である。では、読む気とは何か。それこそが相乗効果である。
(中略)
読み手が自ら新しい発見をすることを支援するのは容易ではない。むしろ、自分自身の思考の過程を徹底的に分析し、読み手と共に考える姿勢を持つことが最も重要である。読み手に完璧な解答を与える必要はなく、解答に向かう真摯な姿勢を示すことができれば十分である。言い換えれば、飾り立てることなく、技巧に頼らず、書き手の価値観や誠実さを文章ににじませることで、真実に迫ろうとする意志が読み手に伝わるのである。法律文書や契約書は、一般的にはこうした行間の意味は不要と考えられがちだが、それでは無機質な定型文となり、人の心には響かない。どれほど論理的に正しくても、理性には届いても、感情に響かない文章は読む気を失わせ、結局、理性にも届かなくなるのである。