JLPT N2 – Reading Exercise 54
企業の中で後輩や新人を指導する際、専門知識が豊富な人ほど、つい自分が知っていることだけを簡単に伝えてしまいがちだ。その結果、教わる側がなかなか理解できず、困ってしまうことも少なくない。指導する立場の人は、自分が最初にその知識を学んだときの気持ちに戻り、相手の立場を想像しながら丁寧に伝える必要があるのではないだろうか。
また、その過程で、教わる側が積極的に質問をすることも重要だ。質問を通じて、どこが分かりにくいのか、どんな点でつまずいているのかが明確になり、指導する側も説明しやすくなる。さらに、同じ内容でも何度も質問し、繰り返し説明を受けることで、知識がより実践的なスキルへと変わっていく場合も多い。
私自身の経験から言えば、一度の説明だけで完全に理解できることは、実はほとんどないように思う。
また、すべてを一から十まで教えるのではなく、大事な部分だけを伝え、最後の仕上げは自分で考えさせることが、「1」理想的な指導法だと考える。
人から与えられた知識は、すぐに忘れてしまうことが多い。しかし、自分で考え、実際にやってみて身につけたことは、なかなか忘れない。
たとえば、新人に難しい業務をいきなり任せても、何をどうすればいいのか分からず戸惑ってしまう。だからこそ、相手の経験や理解度に合わせて、必要なことだけを伝えることが大切だ。それは、非常に細やかな配慮と工夫を要する、「2」一種のプロの技だと言えるだろう。そうした工夫こそが、指導する側の大きなやりがいにつながるのではないだろうか。
(注)戸惑う(とまどう):どうしていいかわからず困ること