JLPT N2 – Reading Exercise 59
「お母さん、お金持ちってどんな人?」と、夕食の後、8歳の娘が突然聞いてきた。私は「たくさんお金や家や車を持っている人かな」と答えた。娘は少し考えてから、「じゃあ、今日公園で会った友だちはお金持ちだよ」と言った。理由を聞くと、「だって、ポケットに10枚もコインが入ってたんだよ」と嬉しそうに話した。
私は思わず笑ってしまった。大人にとって「お金持ち」とは、銀行口座の残高や家や土地など、目に見えない資産も含めて考えるものだ。しかし、子どもにとっては、手に持っているコインの数がすべてなのだろう。
「でもね、お金持ちっていうのは、たくさんの物を持っているだけじゃなくて、家族や友だちと仲良くできる人のことも言うんだよ」と私は言ってみた。娘は「ふーん」とうなずいたが、まだ納得していない様子だった。
(1)そのとき、私はふと考えさせられた。大人になるにつれて、私たちは「豊かさ」や「幸せ」の意味を複雑にしすぎているのかもしれない。子どもの素直な視点は、ときに大人が忘れてしまった大切な価値観を思い出させてくれる。
翌日、娘はまた公園に行き、友だちとコインを見せ合って遊んでいた。私はその姿を見て、(2)娘の背中がいつもより頼もしく見えた。