JLPT N3 – Reading Exercise 11
先日、京都の古い町並みを散策していました。ふと立ち寄ったのは、美しい組紐(くみひも)の専門店でした。店内に入ると、「いらっしゃいませ」と優しく店の主人が迎えてくれました。
組紐作りは平安時代から続く伝統技術で、江戸時代までは着物や刀の装飾として、どこの町でも多くの職人(注)が活躍していたそうです。しかし、時代とともに着物を着る人が減り、工場で大量生産される安価な機械製の紐が広まると、組紐職人の数は急速に減少しました。
今年の82歳になる主人の山田さんはいま、全国に数えるほどしか残っていない組紐職人(注)の一人です。実は数年前、体の衰えを感じ、もう組紐作りをやめようかと考えたことがあったそうです。そんなある日、海外の歴史学者から「組紐は日本の美意識と職人技の結晶だ」と熱心に語られたのを聞いて、[1]「この技術を絶やしてはいけない」と、気持ちを新たにしたそうです。
山田さんは、「健康な限りは続けたいね。」と穏やかな笑顔を見せてくれましたが、わたしはその貴重な技術の未来について、少しばかり心配な気持ちになりました。
(注)職人:身につけた技術によって物を作り出したりする職業の人。