
そして、3月25日には、厚生労働省が全国の自治体に向けて、5月下旬をめどに、接種券の印刷などの発送準備や会場の手配などを終えるよう通知しました。
準備は始まりましたが、3月下旬の段階で、日本国内では4回目の接種の承認申請が行われておらず、接種を行うことも正式には決まっていない段階です。
「3回目の接種も、本来ならもっと早く始まるはずだった。3回目の接種がなかなか進まなかった経験から、早めの準備が大切だ。多くの人にとって4回目接種を意識するのはもう少し先になると思うが、少なくとも行政面では準備だけでも早めに進める必要がある」。
それで十分だったはずでは?
イギリスの保健当局のデータによりますと、オミクロン株の場合、ワクチンを接種していない人と比べて入院に至るのを防ぐ効果は、ファイザーのワクチンを2回接種したあと、ファイザーのワクチンを追加接種すると2週から4週間後にはおよそ90%でしたが、10週から14週間後にはおよそ75%と、やや下がりました。 モデルナのワクチンを追加接種すると、9週間後までで90%から95%となっています。
3回目の接種で重症化して入院に至るリスクを下げる効果は一定程度維持されるものの、発症を防ぐ効果は比較的早く下がることがわかってきています。
イスラエルやイギリス、フランスなどは、医療従事者や高齢者などを対象に接種。 また、感染者数が急増している韓国も重症化リスクの高い人などを対象に始めています。
イスラエル保健省などの研究グループは、4回目にファイザーのワクチンを接種した154人と、モデルナのワクチンを接種した120人について、3回接種の人と比較して分析しました。 4回目の接種のあとでは、中和抗体の値は10倍程度に上昇し、3回目の接種を終えたあとをやや上回る水準になりました。 ファイザーとモデルナのワクチンで差は見られなかった一方、オミクロン株の働きを抑える働きは、従来型のウイルスを抑える働きと比べると、10分の1程度にとどまっていました。 また、無症状を含めた感染は 3回接種の人では25.0%で確認され 4回目に ▽ファイザーのワクチンを接種した人では18.3% ▽モデルナのワクチンを接種した人では20.7%で確認されました。 その結果、4回目の接種によって、無症状を含めた感染を防ぐ効果は 3回接種の人と比較した場合 ▽ファイザーのワクチンで30% ▽モデルナのワクチンで11% また、発症を防ぐ効果は ▽ファイザーのワクチンで43% ▽モデルナのワクチンで31%と推計されるとしています。 一方、副反応の割合は、2種類のワクチンを合わせた全体で ▽局所の痛みが78.8% ▽けん怠感が33.2% ▽筋肉痛が24.5% ▽頭痛が21.5% ▽37度5分を超える発熱は6.6%などどなっていて 多くの人で何らかの症状が出たものの、大きな影響はなかったとしています。 研究グループは「3回目の接種までで免疫は完成されていて、その後低下するが、4回目の接種で回復すると考えられる」とした一方、「4回目接種は健康で若い医療従事者にはわずかな利益しかない可能性がある」としています。 ファイザーは3月15日、このデータを分析した結果、60歳以上の人では、3回目の接種から4か月以上たったあとで4回目の接種を受けると、感染が確認される人は半分に、重症化する人は4分の1になったと発表しています。 こうした結果をもとに、ファイザーとモデルナは3月中旬、アメリカの規制当局に対し、4回目の接種の緊急使用の許可を申請しました。
「4回目の接種後には、中和抗体の値は一定の水準まで上昇していて、免疫学の観点からは十分なレベルだと考えている。また、ワクチンの効果をみるときには、免疫細胞がウイルスを攻撃する『細胞性免疫』についても考えるべきだが、ファイザーの発表では、重症化を防ぐ効果は出ていて、ワクチンとしての役割は十分に果たすことが期待できる」 「高齢者のほか、糖尿病や心疾患など基礎疾患のある人は、免疫が特に下がる可能性があり、4回目の接種の対象となる可能性が高いと思う。今後さらに病原性や感染性が高い変異ウイルスが現れる可能性もある。あわてて4回目の接種をする必要はないが、いまから準備しておかないと対応できないので、準備をしておくことは大切だ」
そして、急いで行わないといけないのでしょうか? 4回目の接種について ▽イギリスは、追加接種から6か月以上がたった75歳以上の人や、介護施設に住む高齢者、それに12歳以上の免疫不全の人に ▽フランスでは、追加接種から3か月以上たった80歳以上の人などに ▽ドイツでは、追加接種から3か月以上たった70歳以上の人や介護施設の入所者、5歳以上の免疫不全の人、それに6か月以上たった医療従事者などに接種を推奨しています。 また ▽イスラエルでは追加接種から4か月以上たった60歳以上の人や医療従事者、それに18歳以上の免疫不全の人などに ▽韓国では追加接種から4か月以上がたった重症化リスクが高い基礎疾患のある人や入院患者や医療従事者を対象としています。
接種の間隔について、大阪大学の宮坂 招へい教授は一定程度の時間をおいて接種した方が効果が高いと指摘しています。 免疫細胞の一種で抗体を作る「B細胞」が3回目の接種後に活性化されているため、4回目の接種はさらに時間をおいてB細胞が成熟するのを待ったうえで行うほうが、幅広い変異ウイルスに対応できる抗体を作ることができる可能性が高いとしています。
「3回目の接種のあと、あまりに短期間で4回目の接種を行うのは、免疫学の観点から考えると効果が低い。間隔を十分にあけて接種を行うことで質のいい抗体ができる」
大阪大学の宮坂 招へい教授は、私たちの社会が、ワクチンに感染を防ぐ効果を求めるのか、重症化を防ぐ効果を求めるのかによって対応が異なってくると指摘しています。 宮坂 招へい教授 「新型コロナウイルスに対する免疫は持続期間が短く、免疫のレベルはとても高いわけではなさそうだということが分かってきた。インフルエンザワクチンのように、ある程度の感染者は出るけれども、重症者の発生は抑えることができる戦略でいいのではないか。ワクチンを接種していても軽い感染は起きてしまうが、重症化しない。うまくいけば1年に1回の接種で済むようになるのではないかと期待している。ただ、それでも、重症化リスクが高い人は、もう少し頻回に追加接種が必要かもしれない。副反応を減らしながら効果を得るためには、どの程度の接種量と間隔がいいのか、4回目や5回目の接種を想定し、日本でも臨床試験などで確認するべきだ」
その一方で ▽「3回目までの効果や費用を評価して、4回目が本当にすべての人に必要か議論すべきだ」 ▽「対象者を重症化リスクの高い高齢者やエッセンシャルワーカーに絞るべきではないか」といった意見が出たほか ▽「4回目を公的な予防接種に位置づけるかも含めて考えないといけない」 ▽「海外で推奨していない国もあり、データも少ないので有効性や安全性を十分に議論すべきだ」 ▽「準備をしつつやめるという選択肢も持った方がいい」といった慎重な意見も相次ぎました。 厚生労働省は、有効性や安全性に関する最新のデータなどを踏まえたうえで4回目を実際に行うかどうか引き続き議論するとしています。
東京医科大学の濱田 特任教授は「重症化リスクの高い高齢者や、医療従事者などは3回目の接種後、半年ほどたった段階で行うのがよいのではないか」としつつも、今優先すべきは、3回目の接種率を少なくとも5割以上まで上げることだと強調しています。
「西ヨーロッパでは規制の緩和によって、感染がやや増加しているが、追加のワクチン接種率が5割を超え、感染者は出ても重症化する人が少ないから規制の緩和が可能になっている。日本では3回目の接種率が3割を超えたくらいの段階なので、今後、社会や経済を動かしていくための出口戦略を目指すうえでも、4月から5月くらいまでには、5割以上に持っていくことがまずは大事だ。マスクをする、人との距離を取るといった方法をうまく使いながら行事を実施するなど、対策を取りつつ、日常の生活に戻していくことが当面の課題だ」。
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