日本新聞: 宮城石巻の小学校校舎震災遺構として公開始まる

宮城みやぎ石巻いしのまきの小学校しょうがっこう校舎こうしゃ震災しんさい遺構いこうとして公開こうかい始はじまる

Apr 3, 2022 12:04 3

Furigana

東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの津波つなみと火災かさいの被害ひがいを受うけた宮城みやぎ県けん石巻いしのまき市しにある当時とうじの小学校しょうがっこうの校舎こうしゃが震災しんさい遺構いこうとして整備せいびされ、発生はっせいから11年ねんを経へて公開こうかいが始はじまりました。

石巻いしのまき市しの沿岸えんがんにあった門脇かどわき小学校しょうがっこうは東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの津波つなみで校舎こうしゃの1階かいが浸水しんすいし、その後そのごに起おきた火災かさいで海うみ側がわの校舎こうしゃの大半たいはんが焼やけましたが、当時とうじ学校がっこうにいた児童じどうや教職きょうしょく員いんは裏山うらやまに逃にげるなどして無事ぶじでした。

学校がっこうの周辺しゅうへんでは多おおくの犠牲ぎせい者しゃが出でたため校舎こうしゃを保存ほぞんするか解体かいたいするかで意見いけんが分わかれ、市しは「見みるのがつらい」という人ひとに配慮はいりょして校舎こうしゃの一部いちぶを解体かいたいして保存ほぞんする方針ほうしんを決きめ、これまで工事こうじを進すすめてきました。

一連いちれんの工事こうじが終おわり、発生はっせいから11年ねんを経へて3日にち公開こうかいが始はじまりました。

焼やけた校舎こうしゃは立ち入たちいりが禁止きんしされていますが、そばに見学けんがくのための通路つうろが設もうけられ、▽津波つなみで倒たおれた金庫きんこや▽黒くろく焦こげた机つくえ、▽焼け落やけおちた天井てんじょうなど被害ひがいの様子ようすを見みることができます。

一方いっぽう被害ひがいが小ちいさかった山側やまがわの校舎こうしゃは展示てんじ施設しせつとして整備せいびされ、当時とうじ学校がっこうにいた児童じどうや教職きょうしょく員いんが裏山うらやまに避難ひなんしたルートなどが壁かべ一いち面めんに示しめされ訪おとずれた人ひとが見入みいっていました。

仙台せんだいから来きた60代だいの男性だんせいは、「初はじめて来きましたが、津波つなみの威力いりょくや火災かさいのすさまじさを感かんじました。じかに体験たいけんしていないので、遺構いこうとして当時とうじの教訓きょうくんを知しることができよかったです」と話はなしていました。

大阪おおさかから来きた60代だいの元もと教員きょういんは、「大おおきな被害ひがいに胸むねが痛いたみます。子こどもの命いのちを守まもるために教員きょういんたちが災害さいがいで起おこりうることを想像そうぞうし、備そなえなければいけないと思おもいました」と話はなしていました。

「震災しんさい遺構いこう門脇かどわき小学校しょうがっこう」は毎週まいしゅう月曜げつようを除のぞく午前ごぜん9時じから午後ごご5時じまで開館かいかんし毎月まいつき11日にちは月曜げつようでも開館かいかんするということです。

当時とうじの校長こうちょう「未来みらいの子こども震災しんさいの教訓きょうくん学まなぶ場ばに」

震災しんさい当時とうじ、校舎こうしゃにいた220人にん余あまりの児童じどうを裏山うらやまに避難ひなんさせた校長こうちょうは、「未来みらいに生いきる人ひとの命いのちも守まもれるように伝つたえていきたい」として、校舎こうしゃを通とおした伝承でんしょう活動かつどうに力ちからを入いれたいとしています。

震災しんさい当時とうじ、門脇かどわき小学校しょうがっこうの校長こうちょうだった鈴木すずき洋子ようこさん（71）は揺ゆれの後のち、児童じどう224人にんをすぐに裏山うらやまに避難ひなんさせ、校舎こうしゃ内ないにいた人ひとたちは被害ひがいを免まぬかれました。

地震じしんと津波つなみを想定そうていした訓練くんれんを毎年まいとし行おこなっていたことが、避難ひなん行動こうどうにつながったということです。

ただ、学校がっこうにいなかった児童じどう7人にんを含ふくめ、500人にん以上いじょうの住民じゅうみんが周辺しゅうへんの地区ちく内ないで犠牲ぎせいとなり、校舎こうしゃを保存ほぞんするかどうか住民じゅうみんの意見いけんが分わかれました。

鈴木すずきさんは市しが設もうけた検討けんとう委員いいん会かいに参加さんかし、「つらい事実じじつにも向き合むきあい、未来みらいの子こどもが震災しんさいの教訓きょうくんを学まなぶ場ばにしなければいけない」などと保存ほぞんを訴うったえてきました。

長ながい議論ぎろんを経へて公開こうかいとなったことについて、鈴木すずきさんは「長ながかったと感かんじますがようやく見みていただけることをうれしく思おもう」と話はなしていました。

鈴木すずきさんは語かたり部ぶとしてこの震災しんさい遺構いこうを通をとおして教訓きょうくんを伝つたえる活動かつどうをすることにしていて、「震災しんさいから11年ねんがたち、今いまの中学ちゅうがく1年ねんぐらいまでは当時とうじのことを知しらない。来きた人ひとが校舎こうしゃや展示てんじ物ぶつを通をとおしてあの日ひの事実じじつを知しり、自分じぶんが住すむ地域ちいきに置き換おきかえて防災ぼうさいを考かんがえてもらえるような活動かつどうをしたい。未来みらいに生いきる人ひとの命いのちも守まもれるように伝つたえていきたい」と力ちからを込こめていました。

保存ほぞんか解体かいたいか公開こうかいまでの経緯けいい

東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで津波つなみと火災かさいの被害ひがいを受うけた門脇かどわき小学校しょうがっこうを巡めぐっては当初とうしょ、保存ほぞんか解体かいたいかを巡めぐって意見いけんが分わかれ、市しは校舎こうしゃの一部いちぶを解体かいたいしたうえで保存ほぞんするという判断はんだんをしました。

市しによりますと震災しんさい当初とうしょは周辺しゅうへんに住すんでいた人ひとなどから「つらい記憶きおくを呼び起よびおこす」として解体かいたいを望のぞむ声こえがあった一方いっぽう、有識ゆうしき者しゃなどからは「教訓きょうくんを伝つたえるため残のこすべき」という意見いけんもありました。

市しは震災しんさいの2年ねん後ごに住民じゅうみんや専門せんもん家かと校舎こうしゃのあり方ありかたなどを検討けんとうする委員いいん会かいを立たち上あげ、議論ぎろんを続つづけたうえで、震災しんさいから5年ねん後ごに校舎こうしゃの保存ほぞんを決きめました。

ただ、解体かいたいを望のぞむ住民じゅうみんへの配慮はいりょや維持いじ費ひの問題もんだいなどから校舎こうしゃの両側りょうがわは解体かいたいすることにしました。

その後そのご、地元じもとの住民じゅうみんグループが独自どくじに地域ちいき住民じゅうみんなどにアンケートを実施じっしし、回答かいとう者しゃの8割わりが校舎こうしゃ全体ぜんたいの保存ほぞんを求もとめているという結果けっかなどを市しに提出ていしゅつしましたが方針ほうしんは変かわらず、震災しんさいから11年ねんを経へて、一部いちぶ解体かいたいしたうえでの公開こうかいとなりました。