それによりますと、アイルランドのライアンエアのボーイング737-800型機は、23日午前10時すぎ、ギリシャの首都アテネを離陸し、リトアニアの首都ビリニュスに向かっていました。
離陸からおよそ2時間後、パイロットが、ミンスクの管制官にウクライナの空域からベラルーシの空域に入ると伝えました。
これに対して、管制官は「特務機関からの情報では、機内に爆弾が仕掛けられ、ビリニュス上空で起動するおそれがある」と伝え、安全のためミンスクに着陸するよう勧告しました。
パイロットが「その情報はどこから来たのか」と問うと、管制官は「空港の警備スタッフが電子メールを受け取った」と答え、ミンスクに着陸するよう改めて勧告しました。
このあと、パイロットは、勧告を出しているのがライアンエアの本社なのか、または出発地ギリシャや到着地リトアニアの航空当局なのかを尋ねますが、管制官は「これは、われわれの勧告だ」と一方的に返答しました。
パイロットは最終的に、旅客機が緊急事態にあることを宣言し、このおよそ30分後、ミンスクに着陸しました。
ベラルーシのルカシェンコ大統領は、26日の演説で、着陸の際に、空軍の戦闘機が出動し、旅客機を監視していたことを明らかにしました。
旅客機の飛行コースを公開している、民間のホームページ「フライトレーダー24」によりますと、ライアンエア機は、あと数十キロでリトアニアの領空に入る直前、急きょ東に方向転換し、ミンスクに向かったことが分かります。
また、ベラルーシの航空当局が、交信記録と同時に公開した電子メールでは、イスラム原理主義組織の兵士を名乗る差出人が、イスラエルによるガザ地区への砲撃の停止などを要求したうえで、ライアンエア機には爆弾が仕掛けられており、ビリニュス上空で爆発すると脅迫しています。
しかし結局、爆弾は見つからず、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長が「国家によるハイジャックだ」と痛烈に批判するなど、ベラルーシに対する国際的な非難が高まりました。
これに加えて、ベラルーシの航空会社がEUの空域を飛行することや域内の空港に着陸することも禁止しました。 また、EUの航空行政を担うEASA=ヨーロッパ航空安全庁は26日、域内を発着する航空会社に対し、ベラルーシ領空の飛行を避けるよう勧告しました。 EUとしては、乗客や乗員の安全を確保するねらいですが、ベラルーシにとっては、航空会社から領空通過料が支払われないなどの影響が出ることになります。 一方、こうした措置で、航空機の運航に乱れも出ています。 エールフランスやオーストリア航空は、勧告に従ってベラルーシ領空を避けたルートで航空機を運航しようとしていましたが、ベラルーシの友好国のロシアの航空当局が、これを許可しなかったため、モスクワへの便など一部の便が運休を余儀なくされたということです。
EU「前代未聞の事態」強く非難