デジタル端末の過度な利用と職業的健康管理の必要性
作業の過半をデスク上で遂行する者にとって、日々使用するデジタル端末への接触時間は、週に九九・二時間と、昨年の九十七時間から既に増加している。これは一見、デジタル時代における職務の常態化に過ぎないと見なすかもしれないが、注視すべきは、デスクワークが主要任務でない者でさえ、週八十七・六時間と、ほとんど変わらぬ端末利用に晒されている事実である。
しかも、この現状が示すのは単なる労働環境の変容だけではない。端末使用に伴う視覚的自覚症状——目の疲れ、違和感、かすみ目や複視、長時間のスクリーン注視後の焦点維持の困難等——を、とりわけ多数のデスクワーカー、または非デスクワーカーが訴え続けているのが実態である。
かかるデータは、眼科保険のVSP(R)Vision Care及びWorkplace Intelligenceが共同で実施した調査に基づくものであり、その年次報告『Workplace Vision Health Report』にまとめている。米国での組織に属する人事・福利厚生担当リーダー八百人と、フルタイムの従業員千二百人を対象にした大規模調査に他ならず、特に従業員の眼の健康に光を当てている。
だが、ディスプレイと絶えず接触する現代の職場環境が健康に与える影響は、視覚のみならず、繰り返し生じるストレス障害や持続的な座業、そして休暇取得の不足等、様々な問題を助長しているのは間違いない。
最終的に、自らの健康を害さぬための行動を取るのは、他ならぬ従業員自身の責任である。
健康意識の向上が、その一歩といえよう。自分が1日にどれほどスクリーンを見ているか、意識している者は決して多くない。定期的に「健康ジャーナル」をつけて、エネルギー状態や身体の不調、また精神面での不安や圧倒感を記録する習慣を持てばこそ、行動パターンの改善に気付き、定期健診の予約を取り、仕事やプライベートの年間計画を組む行動につながるのである。
さらに、業務負荷の改善のためには、会社の支援も重要だ。勤務時間や業務内容の見直し、福利厚生の拡充や研修の充実など、会社側に求められる役割も大きい。従業員が自身でできることには限界もあるのだから、必要に応じて会社の制度や仕組みを十分に活用し、あるいは働き方や会議スタイルに工夫を凝らし、運動量や交流を増やすような取り組みも有効に違いない。
興味深いのは、調査によると四人に一人の従業員が、長時間のスクリーン使用に関連する不調で年間四・五日の病欠を余儀なくされているという事実だ。金銭的損失や生産性の低下に換算すれば、企業としても看過できないはずである。「1人あたり約1週間の損失」は上司や経営層への説得材料にもなりうる。
もっとも、業務の改善だけでは片手落ちだ。私生活自体を健康的なものへと作り変えねばならない。例えば、紙の書籍の読書や料理会、屋外活動など、デジタル端末を必要としないアナログな趣味を選べば休息と交流も増える。
さらに、余暇の中で身体活動を組み込み、少し負荷の高いイベントや活動目標を設定する。たとえば「五キロマラソン」や「コミュニティガーデン」での奉仕活動など、社会的な交流と身体活動を両立させる方策を検討することで、仕事に忙殺されて私生活はおろそか、という悪循環から脱却できる可能性がある。
かくのごとく、デジタル時代の労働環境が抱える課題は、単一の努力、とりわけ個人の意識改革のみでは解決し得ない複雑さを持っている。企業と従業員が協力し、相補的な対策を講じることで、ようやく合理的解決への道筋が見えてくるのではなかろうか。