日本新聞: 福井美浜原発3号機運転停止認めない決定大阪高裁

運転うんてん開始かいしから40年ねんを超こえて再さい稼働かどうした福井ふくい県けんの美浜みはま原子力げんしりょく発電はつでん所しょ3号機ごうきについて、大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょは、原発げんぱつに反対はんたいする住民じゅうみんたちが老朽ろうきゅう化かによる事故じこの危険きけん性せいなどを主張しゅちょうして運転うんてんしないよう求もとめていた仮かり処分しょぶんの申し立もうしたてを退しりぞける決定けっていを出だしました。

原発げんぱつに反対はんたいする福井ふくい県けんや滋賀しが県けんなどの住民じゅうみん7人にんは、福井ふくい県けんにある関西かんさい電力でんりょくの美浜みはま原発げんぱつ3号機ごうきについて、設備せつびの経年けいねん劣化れっかに加くわえて、巨大きょだい地震じしんへの耐震たいしん性せいが不十分ふじゅうぶんで重大じゅうだい事故じこが起おきる危険きけんがあると主張しゅちょうして運転うんてんしないよう求もとめる仮かり処分しょぶんを申し立もうしたてていました。

おととし12月つき、大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょが申し立もうしたてを退しりぞける決定けっていを出だし、住民じゅうみん側がわが即時そくじ抗告こうこくしていました。

大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょの長谷川はせがわ浩二こうじ裁判さいばん長ちょうは15日にち、決定けっていを出だし、この中なかで「運転うんてん期間きかんが40年ねんを超こえ、設備せつびの経年けいねん劣化れっかの懸念けねんは否定ひていできないが、特別とくべつ点検てんけんの結果けっか、原子げんし炉ろ容器ようきなどに有意ゆういな欠陥けっかんや劣化れっかは認みとめられず対策たいさくが不十分ふじゅうぶんとはいえない」と指摘してきしました。

また、地震じしんに対にたいする安全あんぜん性せいについては「記録きろく上じょう、美浜みはま原発げんぱつ近ちかくの断層だんそうを震源しんげんとする地震じしんにより無視むしできない影響えいきょうを受うけるとは認みとめがたく、関西かんさい電力でんりょくや原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいの判断はんだんに不合理ふごうりな点てんはない」などと指摘してきしました。

住民じゅうみん側がわが不備ふびがあると主張しゅちょうしていた原発げんぱつ事故じこが起おきた際さいの避難ひなん計画けいかくについては「放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつが原発げんぱつの外部がいぶに放出ほうしゅつされる危険きけん性せいを明あきらかにできていない」としたうえで、「美浜みはま原発げんぱつが重大じゅうだいな事故じこを起おこし、住民じゅうみんに具体ぐたい的てきな危険きけんがあると認みとめるに足たりない」として、いずれも住民じゅうみん側がわの主張しゅちょうを認みとめず、申し立もうしたてを退しりぞける決定けっていを出だしました。

原発げんぱつの運転うんてんは原則げんそく40年ねんに制限せいげんされていますが、48年ねん前まえに運転うんてんを開始かいしした美浜みはま原発げんぱつ3号機ごうきは、3年ねん前まえ、原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいの認可にんかを受うけて運転うんてん延長えんちょうが認みとめられ、再さい稼働かどうしています。

「国民こくみんの命いのち守まもらない」仮かり処分しょぶん申し立もうしたてた住民じゅうみんが紙かみ掲かかげる

大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょが決定けっていを出だした直後ちょくご、仮かり処分しょぶんの申し立もうしたてをした住民じゅうみんたちは、裁判所さいばんしょの前まえで「国民こくみんの命いのちを守まもらない」とか「福島ふくしま、能登のとの地震じしんを考かんがえない大阪おおさか高裁こうさい」と書かかれた紙かみを掲かかげ、「ありえない決定けっていだ」などと声こえをあげていました。

住民じゅうみん側がわ「せめて老朽ろうきゅう化かした原発げんぱつを止とめて」

大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょが決定けっていを出だしたあと住民じゅうみん側がわが会見かいけんを開ひらき、代理人だいりにんの井戸いど謙一けんいち弁護士べんごしは「能登のと半島はんとう地震じしんが起おきたあとなので、こちらの主張しゅちょうに沿そった決定けっていを期待きたいしていたが、ことごとく否定ひていした内容ないようとなっている。重要じゅうような争点そうてんの原発げんぱつと断層だんそうの距離きょりについて、規制きせい委員いいん会かいの評価ひょうかだけを根拠こんきょにしていて、合理ごうり的てきな判断はんだんをしていない。地元じもとの人ひとたちは『せめて老朽ろうきゅう化かした原発げんぱつを止とめてほしい』という思おもいだ」と話はなしました。

また、最高さいこう裁判所さいばんしょに抗告こうこくするかどうかについては、検討けんとうするとしています。

申し立もうしたてを行おこなった1人にんで、京都きょうと市しに住すむ80歳さいの男性だんせいは「能登のと半島はんとう地震じしんのように、地震じしんは、いつどこで、どんな規模きぼで起おきるか分わからないのに不当ふとうな決定けっていだ」と話はなしていました。

関西かんさい電力でんりょく「理解りかいいただいた結果けっか」

大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょの決定けっていについて関西電力かんさいでんりょくは「当社とうしゃの主張しゅちょうを裁判所さいばんしょにご理解りかいいただいた結果けっかであると考かんがえている。引き続ひきつづき安全あんぜん性せい・信頼しんらい性せいの向上こうじょうに努つとめ、今後こんごも立地りっち地域ちいきをはじめ、社会しゃかいの皆様みなさまのご理解りかいをたまわりながら美浜みはま原発げんぱつ3号機ごうきの運転うんてん・保全ほぜんに万全ばんぜんを期きしていく」とコメントしています。

原発げんぱつの「老朽ろうきゅう化か」対策たいさく

原発げんぱつを長期ちょうき間かん運転うんてんすると放射線ほうしゃせんや熱ねつの影響えいきょうでさまざまな機器ききや設備せつびが劣化れっかするいわゆる「老朽ろうきゅう化か」が進すすむため、電力でんりょく会社かいしゃには対策たいさくが義務ぎむづけられています。

これまでは、運転うんてん開始かいしから30年ねんを超こえる前まえに重要じゅうような設備せつびが安全あんぜんに使つかえるか評価ひょうかし管理かんり方針ほうしんを作つくって、10年ねんごとに更新こうしんすることや、40年ねんを超こえて運転うんてんしようとする場合ばあいは、原子げんし炉ろ内部ないぶの広ひろい範囲はんいで、超ちょう音波おんぱによる検査けんさを行おこなったり、コンクリートの一部いちぶを実際じっさいに切り出きりだして強度きょうどや放射線ほうしゃせんを遮さえぎる性能せいのうを調しらべたりする「特別とくべつ点検てんけん」を行おこなった上うえで、原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいに申請しんせいして審査しんさを受うけることとされていました。

ただ、既存きそんの原発げんぱつを最大限さいだいげん活用かつようする政府せいふ方針ほうしんのもと、去年きょねん5月つきに、これまで最長さいちょう60年ねんとされていた運転うんてん期間きかんを実質じっしつ的てきに延長えんちょうできるよう法律ほうりつが改正かいせいされたことを受うけて、原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいは老朽ろうきゅう化かに対応たいおうする新あらたな制度せいどを策定さくていしました。

具体ぐたい的てきには、運転うんてん開始かいしから30年ねん以降いこう、10年ねんを超こえない期間きかんごとに策定さくていする管理かんり計画けいかくに規制きせい委員いいん会かいの認可にんかを得えることが義務ぎむづけられたほか、これまでの「特別とくべつ点検てんけん」にあたる点検てんけんを、60年ねんを超こえる場合ばあいも改あらためて実施じっしするよう求もとめています。

新あらたな制度せいどは来年らいねん6月つきに施行しこうされることになっていて、その時点じてんで運転うんてん開始かいしから30年ねん以上いじょうが経過けいかし運転うんてんを続つづけようとする原発げんぱつについては、これまでに延長えんちょうが認みとめられたものも含ふくめて、施行しこうまでに改あらためて審査しんさを受うけ認可にんかを得える必要ひつようがあります。

国内こくないでは、12基きの原発げんぱつが再さい稼働かどうしていますが、佐賀さが県けんにある玄海げんかい原発げんぱつ4号機ごうきを除のぞく11基きが来年らいねん6月つき時点じてんで運転うんてん開始かいしから30年ねんを超こえるため改あらためて申請しんせいが必要ひつようとなります。

これまでに関西かんさい電力でんりょくが福井ふくい県けんにある大飯原発おおいいげんぱつ3号機ごうきと4号機ごうきについて去年きょねん12月つきに規制きせい委員いいん会かいに申請しんせいしていて、現在げんざい、審査しんさが行おこなわれています。

再さい稼働かどうした原発げんぱつでもっとも古ふるいのは、ことし11月つきに運転うんてん開始かいしから50年ねんとなる関西かんさい電力でんりょくの高浜たかはま原発げんぱつ1号機ごうきで、ことし12月つきで48年ねんとなる美浜みはま原発げんぱつ3号機ごうきは3番目ばんめです。

関西かんさい電力でんりょく「運転うんてん停止ていしの場合ばあい 1か月かげつ50億おく円えん程度ていどのコスト増ぞう」

関西かんさい電力でんりょくによりますと、美浜みはま原発げんぱつ3号機ごうきが停止ていしした場合ばあい、火力かりょく発電はつでん所しょの燃料ねんりょう費ひとして1か月かげつ当あたり50億おく円えん程度ていどのコストの増加ぞうかが見込みこまれるということです。

また、経済けいざい産業さんぎょう省しょうによりますと、関西かんさいエリアの電力でんりょく供給きょうきゅうの余力よりょくを示しめす「予備よび率りつ」は、10年ねんに1度どの厳きびしい暑あつさや寒さむさを想定そうていした場合ばあいの需要じゅように対にたいしても、今月こんげつは11.2％と見込みこまれているほか、4月つきからの来らい年度ねんども夏季かき・冬季とうきともに10％以上いじょうと見込みこまれ、最低さいてい限げん必要ひつようとされる3％は確保かくほできる見通みとおしです。

また、中国ちゅうごく、四国しこく、九州きゅうしゅうエリアとも、電力でんりょくを融通ゆうずうしあえることから、需給じゅきゅうへの大おおきな影響えいきょうはない見込みこみだということです。

原発げんぱつの運転うんてん延長えんちょう政府せいふの方針ほうしんは

政府せいふは去年きょねん5月つき、原則げんそく40年ねん、最長さいちょう60年ねんと法律ほうりつで定さだめられていた原発げんぱつの運転うんてん期間きかんについて、原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいの審査しんさなどで停止ていしした期間きかんを運転うんてん期間きかんから除外じょがいすることで、実質じっしつ的てきに60年ねんを超こえて運転うんてんできるよう法律ほうりつを改正かいせいしました。

実際じっさいに除外じょがいの対象たいしょうとなる期間きかんについては、法律ほうりつが施行しこうされる来年らいねん6月つきまでに経済けいざい産業さんぎょう省しょうが具体ぐたい的てきな基準きじゅんを策定さくていすることにしていて、原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいによる審査しんさのために停止ていしした期間きかんのほか、今回こんかいのように、裁判所さいばんしょの仮かり処分しょぶん決定けっていで運転うんてんを停止ていしした期間きかんなども対象たいしょうとする方針ほうしんです。

政府せいふは、2050年ねんの脱だつ炭素たんそ社会しゃかいの実現じつげんに向むけて、2030年ねん時点じてんの電源でんげん構成こうせいのうち原発げんぱつが占しめる割合わりあいを20から22％程度ていどとすることを目指めざしていますが、これを賄まかなうには、おおむね30基き前後ぜんごの原発げんぱつが必要ひつようです。

ただ、現在げんざい、国内こくないに33基きある原発げんぱつのうち、半数はんすうを超こえる21基きはすでに運転うんてん開始かいしから30年ねん以上いじょうが経過けいかし、40年ねんを超こえる原発げんぱつも4基きあります。

仮かりに建設けんせつ中ちゅうのものも含ふくめすべての原発げんぱつが60年ねんまで運転うんてんしたとしても、2030年代ねんだいから設備せつび容量ようりょうは減へり始はじめ、2040年代ねんだいからは大幅おおはばに減少げんしょうし脱だつ炭素たんそ社会しゃかいへの貢献こうけんは限定げんてい的てきになります。