都立とりつ高校こうこうプール飛び込とびこみ事故じこ 都とに3億おく8000万まん円えん余よ賠償ばいしょう命令めいれい

2016年ねん7月つき、東京とうきょう 江東こうとう区くの都立とりつ高校こうこうで水泳すいえいの授業じゅぎょう中ちゅう、当時とうじ3年生ねんせいだった内川うちかわ起おこし龍りゅうさん（25）が飛び込とびこみをした際さいにプールの底そこに頭あたまを打うち、首くびのけい髄ずいを損傷そんしょうする大だいけがをしました。

この事故じこについて、内川うちかわさんと家族かぞくは教諭きょうゆの不適切ふてきせつな指導しどうが原因げんいんだとして、東京とうきょう都とに賠償ばいしょうを求もとめていました。

26日にちの判決はんけつで東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょの片野かたの正樹まさき裁判さいばん長ちょうは「前途ぜんと有望ゆうぼうな高校生こうこうせいが事故じこで重おもい障害しょうがいを負おい、身体しんたい的てき、精神せいしん的てきな苦痛くつうを被こうむったほか、将来しょうらいにわたって介助かいじょが必要ひつような状態じょうたいになった」と指摘してきして、都とに対にたいし3億おく8000万まん円えん余あまりを支払しはらうよう命めいじました。

判決はんけつは、障害しょうがいの状態じょうたいが改善かいぜんする見込みこみがないことも踏ふまえ、慰謝いしゃ料りょうだけでなく、将来しょうらいにわたって必要ひつようとなる車くるまいすの購入こうにゅう費用ひようや介護かいごの費用ひようなども賠償ばいしょう額がくとして認みとめました。

この事故じこのあと、東京とうきょう都と教育きょういく委員いいん会かいはすべての都立とりつ高校こうこうで水泳すいえいの授業じゅぎょう中ちゅうの飛び込とびこみを禁止きんししたほか、日本にっぽん水泳すいえい連盟れんめいも指導しどう者しゃ向むけのガイドラインを公表こうひょうするなど対策たいさくが強化きょうかされました。

また、この事故じこをめぐっては指導しどう教諭きょうゆが業務ぎょうむ上じょう過失かしつ傷害しょうがいの罪つみに問とわれ、罰金ばっきん100万まん円えんの有罪ゆうざい判決はんけつが確定かくていしています。

原告げんこく 内川うちかわ起おこし龍りゅうさん「教諭きょうゆから直接ちょくせつ謝罪しゃざいなく許ゆるすことできない」

判決はんけつについて原告げんこくの内川うちかわ起おこし龍りゅうさんは「事故じこからおよそ8年ねんが過すぎてしまいました。この間このかんに母ははが亡なくなり大おおきな支ささえを失うしなってしまいました。いつも体調たいちょうに大おおきな不安ふあんを持もちながら元もとに戻もどることのない不自由ふじゆうな生活せいかつを送おくっています。都とには何なん度ども何なん度どもこの事故じこに関にかんする説明せつめいや誠意せいいある対応たいおうを求もとめてきましたが不十分ふじゅうぶんです。教諭きょうゆについてはいまだに直接ちょくせつ謝罪しゃざいもなく、判決はんけつが出でても許ゆるすことはできません」などとコメントしています。

原告げんこくの内川うちかわ起おこし龍りゅうさん 法廷ほうていで思おもいを証言しょうげん

事故じこで体からだの自由じゆうを失うしなった男性だんせいは、同おなじように苦くるしむ被害ひがい者しゃと、支ささえてくれた母ははへの思おもいを胸むねに、車くるまいすの状態じょうたいで裁判さいばんを闘たたかい続つづけました。

原告げんこくの内川うちかわ起おこし龍りゅうさん（25）は、都立とりつ高校こうこうの3年生ねんせいだった2016年ねん7月つき、水泳すいえいの授業じゅぎょうで行おこなわれた飛び込とびこみの練習れんしゅうで首くびのけい髄ずいを損傷そんしょうする事故じこにあいました。

当時とうじ、指導しどう教諭きょうゆはスタート台だいのおよそ1メートル先さきから水面すいめんと水平すいへいにデッキブラシを差し出さしだし、その上うえを越こえて飛び込とびこむよう指示しじしたということです。

泳およぎが得意とくいで、水泳すいえい部ぶにも所属しょぞくしていた内川うちかわさんですが、事故じこのあと手足てあしに強つよいまひが残のこり、首くびから下したを自由じゆうに動うごかすことができなくなりました。

介助かいじょなしでは生活せいかつできなくなり、進すすめていた就職しゅうしょく活動かつどうも諦あきらめざるをえませんでした。

事故じこから4年ねん後ご、内川うちかわさんは教諭きょうゆの不適切ふてきせつな指導しどうによって事故じこが起おきたとして、母親ははおやの美紀みきさんとともに東京とうきょう都とに賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを起おこしました。

ひとりで内川うちかわさんを育そだててきた美紀みきさんは、事故じこのあとはつきっきりで介助かいじょし、夢ゆめを絶たたれて大おおきく落ち込おちこんでいた内川うちかわさんを励はげまし続つづけたといいます。

裁判さいばんのために必要ひつような弁護士べんごしや都ととのやり取やりとりなどもすべて美紀みきさんが行おこなっていましたが、次第しだいに体調たいちょうを崩くずし、おととし、亡なくなったということです。

自分じぶんだけでなく、家族かぞくにも大おおきな影響えいきょうを与あたえた事故じこの重大じゅうだいさを分わかってほしいと内川うちかわさんは法廷ほうていで思おもいを証言しょうげんしました。

そのときの心境しんきょうについて「事故じこがなければこんなに早はやく母ははが亡なくなることはなかったと思おもいます。母ははの大変たいへんさを伝つたえたかった、聞きいてほしかった」と振り返ふりかえります。

26日にちの判決はんけつを前まえに内川うちかわさんは「学校がっこう事故じこの判例はんれいとして、ほかの被害ひがい者しゃも使つかえるようにしたい」と、同おなじような事故じこで苦くるしむ人ひとの助たすけになりたいという思おもいを語かたりました。

そして、あとを絶たたない学校がっこうでの事故じこについて「講習こうしゅうを増ふやしたり、責任せきにん者しゃだけでなく教諭きょうゆ全員ぜんいんが受講じゅこうしたりするなどのルールを作つくれば、学校がっこう事故じこは減へらせると思おもう。完全かんぜんになくすことは難むずかしくても少すこしでも減へってほしい」と話はなしていました。

“判決はんけつを真摯しんしに受け止うけとめる” 東京とうきょう都とは控訴こうそしない考かんがえ示しめす

判決はんけつについて、東京とうきょう都と教育きょういく委員いいん会かいの浜はま佳けい葉子ようこ教育きょういく長ちょうは「都との教員きょういんの不適切ふてきせつな指導しどうにより重大じゅうだいな障害しょうがいを負おわせてしまったことに改あらためてお詫おわびを申し上もうしあげます。判決はんけつを真摯しんし（しんし）に受け止うけとめ、このような事故じこを二度にどと発生はっせいさせないよう、未然みぜん防止ぼうしに引き続ひきつづき全力ぜんりょくで取り組とりくんでまいります」とコメントを出だしました。

そのうえで、都とは控訴こうそしない考かんがえを示しめしました。