「子こども・子育こそだて支援しえん金きん」であなたの負担ふたんはどうなる？

子こどもなど扶養ふようされている人ひとを除のぞいた「被ひ保険ほけん者しゃ」で試算しさんすると最もっとも高たかい場合ばあいは950円えん。

少子しょうし化か対策たいさくの一環いっかんとして、政府せいふが公的こうてき医療いりょう保険ほけんを通をつうじて集あつめる「子こども・子育こそだて支援しえん金きん制度せいど」。

医療いりょう保険ほけんの種類しゅるいごとの「支援しえん金額きんがく」の試算しさんが初はじめて公表こうひょうされた。

一方いっぽう、政府せいふは支援しえん金きんによる「実質じっしつ的てきな負担ふたんはゼロ」と説明せつめいする。

与野党よやとう双方そうほうから「わかりにくい説明せつめいだ」という声こえが上あがっているが、本当ほんとうに新あらたな負担ふたんにはならないのだろうか。

（三藤みとう紫乃しの、高橋たかはし太一たいち、鹿野かの耕平こうへい）

公表こうひょうされた試算しさんは

まずは政府せいふが公表こうひょうした試算しさんの詳細しょうさいを見みてみたい。

「子こども・子育こそだて支援しえん金きん制度せいど」は2026年度ねんどから始はじまり、初年度しょねんどは6000億おく円えん、2027年度ねんどは8000億おく円えん、2028年度ねんど以降いこうは1兆ちょう円えんが徴収ちょうしゅうされる予定よていだ。

きょう公表こうひょうされた試算しさんでは、この3年間ねんかんの医療いりょう保険ほけん制度せいど全体ぜんたいの加入かにゅう者しゃ1人にんあたりの平均へいきん月額げつがくが示しめされ、2026年度ねんどは250円えん、2027年度ねんどは350円えん、2028年度ねんどは450円えんとなった。

医療いりょう保険ほけんの種類しゅるいごとの2028年度ねんど時点じてんでの「支援しえん金額きんがく」は以下いかのとおりだ。

あなたの「支援しえん金額きんがく」は？

（会社かいしゃ員いんなど）

◆大だい企業きぎょうに勤つとめる人ひとなどが加入かにゅうする健康けんこう保険ほけん組合くみあいで、扶養ふようされている人ひとも含ふくめた加入かにゅう者しゃ1人にんあたりの支援しえん金額きんがくは平均へいきんで月つき500円えん。

◆主おもに中小ちゅうしょう企業きぎょうに勤つとめる人ひとなどが加入かにゅうする「協会きょうかいけんぽ」で450円えん。

◆公務員こうむいんなどが加入かにゅうする「共済きょうさい組合くみあい」はすべての保険ほけんのなかで最もっとも高たかい600円えん。

こうした保険ほけんでは、子こどもなど、扶養ふようされている加入かにゅう者しゃは「支援しえん金きん」を支払しはらわないため、保険ほけん料りょうを支払しはらっている「被ひ保険ほけん者しゃ」1人にんあたりで見みると700円えんから950円えんとなる。

また、収入しゅうにゅうに応おうじて金額きんがくは変かわる。

労使ろうし折半せっぱんが前提ぜんていで同おなじ額がくを事業じぎょう主ぬしも支払しはらうことになる。

（国民こくみん健康けんこう保険ほけん）

自営業じえいぎょう者しゃや非ひ正規せいき労働ろうどう者しゃなどが加入かにゅうする国民こくみん健康けんこう保険ほけんでは、1人にんあたりの平均へいきんで400円えんだ。

実際じっさいの額がくは世帯せたいごとに所得しょとくや人数にんずうに応おうじて決きめられるが、高校生こうこうせい以下いかの子こどもについては人数にんずうに含ふくめないほか、低てい所得しょとくの世帯せたいへの軽減けいげん措置そちも講こうじられる。世帯せたいあたりの平均へいきん的てきな額がくは600円えんとしている。

（後期こうき高齢こうれい者しゃ医療いりょう制度せいど）

75歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃにも全体ぜんたいの8.3％の負担ふたんを求もとめるとしていて、1人にんあたり平均へいきんで350円えん。

ただ、実際じっさいの額がくは所得しょとくや自治体じちたいの財政ざいせい状況じょうきょうによって異ことなる。

政府せいふの説明せつめいは？

「支援しえん金きん制度せいど」は、2028年度ねんどまでに実施じっしする少子しょうし化か対策たいさくの「加速かそく化かプラン」に必要ひつようだとされる年間ねんかん3兆ちょう6000億おく円えんのうち、1兆ちょう円えんの財源ざいげんを調達ちょうたつするための新あらたな仕組しくみだ。

創設そうせつが初はじめて打ち出うちだされたのは去年きょねん6月つきの「こども未来みらい戦略せんりゃく方針ほうしん」。

その後そのご、政府せいふは公的こうてき医療いりょう保険ほけん制度せいどを活用かつようすることを決きめた。

理由りゆうについて、もっとも幅広はばひろい世代せだいの人ひとが保険ほけん料りょうを支払しはらっていること、少子しょうし化かや人口じんこう減少げんしょうに歯止はどめをかけることができれば、社会しゃかい保障ほしょうに関かかわる制度せいど全体ぜんたいの持続じぞく可能かのう性せいも高たかまること、企業きぎょうも負担ふたんすることを挙あげる。

つまり社会しゃかい全体ぜんたいで子こどもや子育こそだてを支ささえようということだ。

ただ、政府せいふは「支援しえん金きんによる実質じっしつ負担ふたんはゼロ」と説明せつめいする。

「こども未来みらい戦略せんりゃく方針ほうしん」では「国民こくみんに『実質じっしつ的てきな追加ついか負担ふたん』を求もとめることなく、少子しょうし化か対策たいさくを進すすめる」と記しるされ、今いまの国会こっかいでも、岸田きしだ総理そうり大臣だいじんや加藤かとうこども政策せいさく担当たんとう大臣だいじんは、「歳出さいしゅつ改革かいかくと賃上ちんあげで社会しゃかい保障ほしょう負担ふたん率りつの抑制よくせいの効果こうかを生しょうじさせ、その範囲はんい内ないで制度せいどを構築こうちくしていくことにより、全体ぜんたいとして実質じっしつ的てきに負担ふたんは生しょうじない」と繰り返くりかえし答弁とうべんしている。

一方いっぽうで、加藤かとう大臣だいじんは医療いりょう保険ほけんの加入かにゅう者しゃ1人にんあたりの「拠出きょしゅつ額がく」は、2026年度ねんどは300円えん弱じゃく、2027年度ねんどは400円えん弱じゃく、2028年度ねんどは500円えん弱じゃくになると国会こっかいで答弁とうべんしてきた。

メリットも

また、2月つきには「支援しえん金きん制度せいど」の創設そうせつによって、子こどもが18歳さいまでに受うけられる給付きゅうふが1人にんあたり平均へいきんでおよそ146万まん円えん増ふえるという見通みとおしも初はじめて示しめされた。

今いまの児童じどう手当てあてとあわせると、1人にんあたり平均へいきんでおよそ352万まん円えんが給付きゅうふされることになるという。

負担ふたんだけではなく、メリットも示しめすことで、少子しょうし化か対策たいさくと財源ざいげん確保かくほの必要ひつよう性せいを強調きょうちょうするのが狙ねらいだ。

「実質じっしつ負担ふたんゼロ」って本当ほんとう？

実際じっさいの負担ふたんはどうなのか。

2月つきの衆議院しゅうぎいん予算よさん委員いいん会かいではこんなやりとりがあった。

日本にっぽん維新いしんの会かい 青柳あおやぎ仁士ひとし氏し

「毎月まいつき支払しはらう保険ほけん料りょうが上あがるのは国民こくみんにとっての『実質じっしつ的てきな負担ふたん』ではないのか」

岸田きしだ総理そうり大臣だいじん

「収入しゅうにゅうや加入かにゅうする保険ほけんの種類しゅるいでデコボコが生しょうじるが、全体ぜんたいとして（社会しゃかい保障ほしょう）負担ふたん率りつは増ふえない」

保険ほけん料りょうに上乗うわのせする形かたちで「支援しえん金きん」を支払しはらうのであれば、一人ひとりひとりの負担ふたん額がくは増ふえる可能かのう性せいもある。

しかし、政府せいふは一人ひとりひとりの保険ほけん料りょうの負担ふたんではなく、個人こじんや企業きぎょうなど国民こくみん全体ぜんたいの所得しょとく＝国民こくみん所得しょとくに占しめる社会しゃかい保険ほけん料りょうの負担ふたんの割合わりあい、「社会しゃかい保障ほしょう負担ふたん率りつ」を「実質じっしつ的てき負担ふたん」の指標しひょうとしている。

ただ、その説明せつめいは複雑ふくざつだ。

「社会しゃかい保障ほしょう負担ふたん率りつ」は平成へいせい元もと年度ねんど（1989年度ねんど）は10.2％だったが、新しん年度ねんど（2024年度ねんど）は18.4％になる見通みとおしだ。

少子しょうし高齢こうれい化かで今後こんごも保険ほけん料りょう負担ふたんは増ふえていくとみられるが、政府せいふは、

1「分子ぶんし」となる保険ほけん料りょうの負担ふたん増ぞうを、医療いりょう・介護かいごの歳出さいしゅつ改革かいかくでできるだけ抑おさえる

2「分母ぶんぼ」となる国民こくみん所得しょとくを賃上ちんあげを進すすめて増ふやす

この方法ほうほうで「社会しゃかい保障ほしょう負担ふたん率りつ」の上昇じょうしょうをできるだけ抑おさえ、抑おさえられた範囲はんい内ないで「支援しえん金きん」を拠出きょしゅつしてもらうため「支援しえん金きん」によっては「負担ふたん率りつ」は上あがらないというのだ。

窓口まどぐち負担ふたん増ぞうなどは“負担ふたんではない”

また、社会しゃかい保障ほしょうの歳出さいしゅつ改革かいかくでは、医療いりょうや介護かいごサービスの窓口まどぐち負担ふたんが増ふえたり、サービスが削けずられたりする可能かのう性せいがあるが、政府せいふは保険ほけん料りょうは増ふえず、社会しゃかい保障ほしょう負担ふたん率りつの増加ぞうかにはつながらないことから、「実質じっしつ的てきな負担ふたん」には含ふくまないとしている。

さらに、医療いりょうや介護かいごの分野ぶんやで働はたらく人ひとの賃上ちんあげなどを行おこなうため、2023年度ねんどと2024年度ねんどで3400億おく円えんの保険ほけん料りょうの負担ふたん増ぞうが見込みこまれるが、社会しゃかい全体ぜんたいの賃上ちんあげに伴ともなう保険ほけん料りょうの増収ぞうしゅうで賄まかなえるとして、これも「実質じっしつ的てきな負担ふたん」を計算けいさんする際さいの保険ほけん料りょう負担ふたん増ぞうには含ふくめないと政府せいふは整理せいりした。

なぜ「負担ふたん増ぞう」を避さけるのか

なぜ政府せいふはここまで「負担ふたん増ぞう」ということばを避さけるのか。

政府せいふ関係かんけい者しゃはこう解説かいせつする。

「『支援しえん金きん制度せいど』が打ち出うちだされた去年きょねん6月つきに政権せいけんが気きにしていたのは『身みを切きる改革かいかく』を掲かかげた『日本にっぽん維新いしんの会かい』の統一とういつ地方ちほう選挙せんきょなどでの躍進やくしん。防衛ぼうえい増税ぞうぜいへの逆風ぎゃくふうもあって、負担ふたん増ぞうは言い出いいだせなくなった」

しかし、財源ざいげんがなければ、少子しょうし化かと人口じんこう減少げんしょうを食い止くいとめることはできないとして、生み出うみだされたのが「実質じっしつ負担ふたんゼロ」の説明せつめいだったというのだ。

でも、わかりにくい

こうした政府せいふの説明せつめいには与党よとうからも「わかりにくい」という声こえが出でている。

公明党こうめいとう 高木たかぎ政務せいむ調査ちょうさ会長かいちょう

「わかりにくい説明せつめいで、国民こくみん理解りかいがなかなか進すすまない要因よういんの1つではないか。もっと真正面まっしょうめんから支援しえん金きん制度せいどの意義いぎや必要ひつよう性せいを説明せつめいするべきだ」

野党やとうからは「複雑ふくざつな説明せつめいや計算けいさん式しきを作つくって国民こくみんにわからないようにして、財源ざいげんだけを集あつめようという魂胆こんたんが透すけて見みえる」といった批判ひはんが出でている。

説明せつめいはうそではないが・・・

官僚かんりょうからも、次つぎのような声こえが聞きかれる。

「マクロでバーチャルな説明せつめいなので、わかりにくいと言いわれればそのとおりだ」

「うそをついたり、ごまかしたりしているわけではないが、この説明せつめいで進すすまざるを得えなくなったのが残念ざんねん。自業自得じごうじとくといえばそれまでだが」

次つぎのように語かたる官僚かんりょうすらいる。

「支援しえん金きんは負担ふたん増ぞうと言いわざるを得えない。将来しょうらい世代せだいのために正面しょうめんから負担ふたんをお願おねがいするべきだった」

国会こっかいで本格ほんかく議論ぎろんへ

これまでの国会こっかいをふりかえると「支援しえん金きん制度せいど」のあり方ありかたと政府せいふの説明せつめいのあり方ありかたに議論ぎろんが集中しゅうちゅうし、肝心かんじんの少子しょうし化か対策たいさくの内容ないようの議論ぎろんが深ふかまっているとは言いえない。

「子こども・子育こそだて支援しえん法ほう」などの改正かいせい案あんは4月つきに国会こっかいで審議しんぎ入いりする予定よていだ。

少子しょうし化かと人口じんこう減少げんしょうが加速かそくする中なか、待まったなしの対策たいさくはどうあるべきなのか、裏付うらづけとなる財源ざいげんはどうあるべきなのか。

国民こくみん生活せいかつに大おおきな影響えいきょうを与あたえる内容ないようだけに、分わかりやすい形かたちで情報じょうほうが提示ていじされ、議論ぎろんが尽つくされることを願ねがっている。

（3月つき29日にち ニュース７ななで放送ほうそう予定よてい）