米国金融政策を巡る観測の変化がもたらした銀価格の急落と市場の不安定化
2月12日、米国時間午前遅くにおいて、貴金属市場は突如として大幅な価格下落に見舞われた。特に銀価格は10%を超える急落を記録し、市場関係者に衝撃を与えた。アナリストによれば、テクノロジー株の下落や米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測の後退を背景に、急激な売りが発生したことが主な要因とされている。実際、銀は米東部時間午後1時40分時点で75.88ドルまで下落し、同日の高値84.88ドルから大幅な値下がりとなった。
午前11時過ぎから始まったこの急落は、日中安値となる74.58ドルに達した時点で10%超の下落幅を記録した。一方、金価格も一時5100ドル超から4900ドルまで下落したものの、午後1時40分時点では2.8%安の4955.00ドル前後まで若干持ち直している。
スークデン・フィナンシャル社のシニアリサーチアナリストであるビクトリア・クシャク氏は、今回の急落について「ファンダメンタルズ主導ではなく、フロー主導の売りによるものだ」と指摘している。加えて、MKS PAMP SAのメタル・ストラテジー部門責任者であるニッキー・シールズ氏は、ブルームバーグの取材に対し「極めて急速な下落であり、投資家がリスク回避に動いた結果だ」と分析した。12日にはテクノロジー株も下落していたことから、投資家が流動性を重視したことが背景にあると考えられる。
また、米国の雇用統計が好調であったことを受け、FRBが近い将来に利下げを実施しないとの見方が広がったことも、金や銀の価格下落に拍車を掛けた。
FOREX.comのグローバルマクロ担当アナリストであるファワド・ラザクザダ氏は、米国の非農業部門雇用者数が「予想を大きく上回った」と述べ、市場が予想通りの反応を示した例として貴金属価格の下落を挙げている。さらに、サクソバンクのコモディティ・ストラテジストであるオーレ・ハンセン氏は、最近の金・銀価格が「センチメントとモメンタム主導」の投機的な買いによって動いており、このような局面では苦戦を強いられるだろうと付け加えた。
アナリストらは、13日に発表される予定の米消費者物価指数(CPI)が貴金属価格に与える影響についても注視している。ザナー・メタルズの副社長兼シニア・メタル・ストラテジストであるピーター・グラント氏は、CPIが2.7%から2.5%、場合によっては2.4%まで鈍化する可能性があるとし、その場合利下げ観測が再燃し、金価格にとっては追い風となるだろうとの見解を示した。
金と銀の価格は、1月下旬にそれぞれ5600ドル超、120ドル超の記録的高値を更新した後、極めて高いボラティリティを示している。ドナルド・トランプ前大統領が次期FRB議長候補としてケビン・ウォーシュ氏を指名した際にも、貴金属価格は急落し、その後も上下いずれの方向にも大きく変動した。利下げは一般的に貴金属価格の上昇要因とされるものの、ウォーシュ氏は他候補者と比べて利下げを実施する可能性が低いと見なされていたため、その指名発表後は米ドル高も相まって、貴金属価格は下押し圧力を受ける格好となった。
このような状況を踏まえ、専門家の間では今後も貴金属価格が短期的に不安定な動きを続ける可能性が高いとの見方が広がっている。メタルズ・デイリーのロス・ノーマンCEOは、投機的取引が活発化することでコモディティ市場が「市場というよりカジノのように感じられる」と述べ、高いボラティリティの一因であると指摘した。加えて、サクソバンクのアナリストも「銀は今後も上下いずれの方向にも大きく動く可能性が高い」と述べており、貴金属市場の先行きは予断を許さない状況が続くと考えられる。