日本新闻: “同一労働同一賃金” 中小企業に適用対応進まないケースも

非ひ正規せいき雇用こようで働はたらく人ひとたちの待遇たいぐう改善かいぜんを目指めざした「同一どういつ労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん」は1日にちから中小ちゅうしょう企業きぎょうに適用てきようされますが、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで業績ぎょうせきが悪化あっかした中小ちゅうしょう企業きぎょうを中心ちゅうしんに対応たいおうが進すすんでいないケースが多おおいとみられています。

人材じんざいサービス会社かいしゃ「エン・ジャパン」は去年きょねん12月つきからことし1月つきにかけて中小ちゅうしょう企業きぎょう150社しゃに、インターネットで調査ちょうさを行おこないました。

それによりますと、「同一どういつ労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん」への対応たいおうについて「すでに完了かんりょうしている」と回答かいとうした企業きぎょうは28％でした。

「現在げんざい、取り組とりくんでいる」、「対応たいおうが決きまり、これから取り組とりくむ予定よてい」と回答かいとうした企業きぎょうを合あわせても51％で、対応たいおうにめどがついている中小ちゅうしょう企業きぎょうは半数はんすうにとどまっていました。

また、「同一どういつ労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん」のめどがついていると回答かいとうした中小ちゅうしょう企業きぎょうに対応たいおうする上うえでの悩なやみを複数ふくすう回答かいとうで尋たずねたところ、「人件じんけん費ひの増加ぞうか」と「正せい社員しゃいんと非ひ正規せいき社員しゃいんの待遇たいぐう差さが不ふ合理ごうりかどうかの判断はんだん」がいずれも23％と最もっとも多おおかったということです。

調査ちょうさを行おこなった「エン・ジャパン」の担当たんとう者しゃは、「新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで多おおくの中小ちゅうしょう企業きぎょうでは業績ぎょうせきが悪化あっかしている。さらに、テレワークの導入どうにゅうや職場しょくばの感染かんせん対策たいさくなどの対応たいおうも重かさなり、人件じんけん費ひの増加ぞうかにつながる待遇たいぐう差さの改善かいぜんまで対応たいおうできていないケースが多おおいとみられる」と話はなしています。

パート従業じゅうぎょう員いんの待遇たいぐう改善かいぜんした中小ちゅうしょう企業きぎょう

岐阜ぎふ県けん本巣もとす市しの「スギヤマメカレトロ」は、従業じゅうぎょう員いんおよそ100人にんの中小ちゅうしょう企業きぎょうで自動車じどうしゃメーカーや航空こうくう関連かんれん企業きぎょうの機械きかいの修理しゅうりなどを行おこなっています。

正せい社員しゃいんの定年ていねんは60歳さいで、いったん退職たいしょくしたあとに再さい雇用こようされた14人にんがパート従業じゅうぎょう員いんとして働はたらき続つづけています。

会社かいしゃでは若手わかて社員しゃいんへの技術ぎじゅつの継承けいしょうや人手ひとで不足ふそくの解消かいしょうにつなげようと中小ちゅうしょう企業きぎょうに「同一どういつ労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん」が適用てきようされるのに合あわせて3月つき、パート従業じゅうぎょう員いんの待遇たいぐうを改善かいぜんしました。

具体ぐたい的てきにはパート従業じゅうぎょう員いんについて▽ボーナスは正せい社員しゃいんに準じゅんじる水準すいじゅんに引き上ひきあげるほか、▽これまでは認みとめていなかった交通こうつう手当てあてや住宅じゅうたく補助ほじょなどの手当てあてを支給しきゅうすることにしました。

ボーナスは1人にんあたり平均へいきんでおよそ25％上昇じょうしょうし、手当てあては合あわせて1か月かげつに1万まん円えん近ちかく支給しきゅうされます。

この会社かいしゃで30年ねん以上いじょう働はたらく杉山すぎやま吉よし司つかささん（73）は、定年ていねん退職たいしょくしたあと8年ねん前まえからパート従業じゅうぎょう員いんとして勤務きんむしています。

現在げんざいは営業えいぎょう担当たんとうとして1日にち8時間じかん、週しゅうに5日にち働はたらいています。

1か月かげつの収入しゅうにゅうは手取てどりで20万まん円えんほどです。

「同一どういつ労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん」が導入どうにゅうされることで交通こうつう手当てあてや住宅じゅうたく補助ほじょなどが年間ねんかんおよそ12万まん円えん支給しきゅうされることになり、ボーナスは去年きょねんの実績じっせきで考かんがえると年間ねんかんでおよそ12万まん円えん増ふえることになります。

杉山すぎやまさんは、「パート従業じゅうぎょう員いんになったため給料きゅうりょうも下さがるし正社員せいしゃいんと同おなじ仕事しごとをやっているのになぜだという気持きもちもあってショックでした。同どう一いち労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎんが導入どうにゅうされて収入しゅうにゅうも上あがりありがたく、生活せいかつも楽らくになるので妻つまも喜よろこびます」と話はなしていました。

これに対にたいして会社かいしゃ側がわは「同一どういつ労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん」を続つづけていく上うえでの難むずかしさも感かんじています。

ことしは、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで受注じゅちゅうが大幅おおはばに減へり、去年きょねんおよそ30億おく円えんだった売上うりあげは30％ほど減少げんしょうする見通みとおしです。

一方いっぽうで人件じんけん費ひはパート従業じゅうぎょう員いんへの手当てあてが年間ねんかんでおよそ100万まん円えん増ふえることになります。

またボーナスは業績ぎょうせきに応おうじて支払しはらわれていますが去年きょねんの実績じっせきで考かんがえるとおよそ100万まん円えん増ふえることになります。

従業じゅうぎょう員いんの定年ていねん退職たいしょくで今後こんごも毎年まいとし、2人にんから5人にんほどパート従業じゅうぎょう員いんが増ふえる予定よていで「同一どういつ労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎん」によって人件じんけん費ひの負担ふたんは大おおきくなる見込みこみです。

このため会社かいしゃではパートの従業じゅうぎょう員いんについても勤務きんむの査定さていを毎年まいとし、行おこなうことにしました。

一いち人にん一いち人にんの仕事しごとの成果せいかや業務ぎょうむ量りょうなどをチェックし会社かいしゃ全体ぜんたいの利益りえきや生産せいさん性せいの低下ていかにつながらないようにして同どう一いち労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎんに対応たいおうしていくことにしています。

「スギヤマメカレトロ」の浅野あさの博幸ひろゆき社長しゃちょうは、「会社かいしゃにはなかなか若わかい人材じんざいが入はいってこないため社員しゃいんの平均へいきん年齢ねんれいはどんどん上あがっているのが現状げんじょうです。こうした中なかで長年ながねん勤つとめて技術ぎじゅつを持もち、パート従業じゅうぎょう員いんとして働はたらく人ひとたちには若手わかてへの教育きょういくにも力ちからを入いれてもらっています。正せい社員しゃいんからなんでパート従業じゅうぎょう員いんを優遇ゆうぐうするのかという声こえが出でるのではないかと非常ひじょうに心配しんぱいしました。そのバランスをどこでとるかが難むずかしいと感かんじています」と話はなしていました。

専門せんもん家か「確実かくじつに待遇たいぐう改善かいぜんすること重要じゅうよう」

第だい一いち生命せいめい経済けいざい研究所けんきゅうじょの星野ほしの卓也たくや主任しゅにんエコノミストは「景気けいきが緩ゆるやかに持ち直もちなおして多おおくの企業きぎょうで業績ぎょうせきが伸のびる中なかで人手ひとで不足ふそくが問題もんだいとなっていた状況じょうきょうだったが、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいで状況じょうきょうは変かわった。非ひ正規せいきの待遇たいぐう改善かいぜんは企業きぎょうからすると人件じんけん費ひが増ふえてしまうので、業績ぎょうせきが厳きびしい中なかで対応たいおうが難むずかしくなっている」と話はなします。

そのうえで「非ひ正規せいき雇用こようで働はたらく人ひとの待遇たいぐうの改善かいぜんを無理むりにでも求もとめると雇用こようを減へらすという判断はんだんを企業きぎょうが迫せまられることにもつながる可能かのう性せいが出でてくる。今いまの雇用こよう維持いじの政策せいさくをしっかり続つづけつつまずは経済けいざいを戻もどしていくことが最さい優先ゆうせん事項じこうで経済けいざいの状況じょうきょうを見みながら丁寧ていねいにゆっくりと確実かくじつに非ひ正規せいき雇用こようで働はたらく人ひとたちの待遇たいぐうを改善かいぜんすることが重要じゅうようになっている」と指摘してきしています。

また「コロナ禍かがおさまれば企業きぎょうにとっては人手ひとで不足ふそくが課題かだいになるとみられる。同どう一いち労働ろうどう同どう一いち賃金ちんぎんに取り組とりくむことは優秀ゆうしゅうな人材じんざいに働はたらき続つづけてもらうとともに非ひ正規せいき雇用こようで働はたらく人ひとの意欲いよくを高たかめいい仕事しごとをしてもらうことにもつながり企業きぎょうにもメリットが大おおきい」と話はなしていました。