日本新聞: 知床観光船事故1年乗客家族が参列し追悼式【きょうの動き】

北海道ほっかいどうの知床しれとこ半島はんとう沖おきで観光かんこう船せんが沈没ちんぼつし20人にんが死亡しぼう、6人にんの行方ゆくえが分わからなくなった事故じこから23日にちで1年ねんです。

地元じもとの斜里しゃり町まちウトロでは、乗客じょうきゃくの家族かぞくが参列さんれつした追悼ついとう式しきが行おこなわれ、犠牲ぎせい者しゃに祈いのりをささげるとともに観光かんこう事業じぎょう者しゃが安全あんぜんへの誓ちかいを新あらたにしました。

去年きょねん4月つき23日にちに知床しれとこ半島はんとうの沖合おきあいで乗客じょうきゃく乗員じょういん合あわせて26人にんを乗のせた観光かんこう船せん「KAZU 1」が沈没ちんぼつした事故じこでは、20人にんが死亡しぼうし、今いまも乗客じょうきゃく6人にんの行方ゆくえが分わかっていません。

事故じこから1年ねんの23日にち、地元じもとの斜里しゃり町まちウトロのホテルでは、午後ごご1時じから町まちなどが主催しゅさいする追悼ついとう式しきが行おこなわれ、乗客じょうきゃく・乗員じょういんの家族かぞく79人にんと地元じもとの関係かんけい者しゃが参列さんれつしました。

式しきでは参列さんれつ者しゃ全員ぜんいんで黙もくとうを行おこない、同時どうじに町内ちょうない2か所かしょの消防しょうぼう署しょのサイレンを鳴ならして町まち全体ぜんたいで犠牲ぎせい者しゃを悼いたみました。

追悼ついとうの辞じとして、斉藤さいとう国土こくど交通こうつう大臣だいじんは「監査かんさや検査けんさをしていながら事故じこを防ふせげず、1人にんも救助きゅうじょできなかったことを重おもく受け止うけとめ、必要ひつような対策たいさくを実施じっししてきた。家族かぞくが一いち日にちも早はやく平穏へいおんな生活せいかつを取り戻とりもどせるよう、きめ細きめこまかく意向いこうを聞ききながら被害ひがい者しゃ支援しえんに取り組とりくんでいく」と述のべました。

また、北海道ほっかいどうの鈴木すずき直道なおみち知事ちじは「被害ひがい者しゃやその家族かぞくが体験たいけんした悲かなしみや苦くるしみが二度にどと繰り返くりかえされないよう国こくや自治体じちたい、地域ちいきと連携れんけいし、知床しれとこはもとより道内どうないを訪おとずれる人ひとが安心あんしんできるような取り組とりくみを全力ぜんりょくで進すすめていく」と述のべました。

このあと参列さんれつ者しゃは、1人にんずつ会場かいじょう内ないの献花けんか台だいに白しろい花はなを手向たむけて亡なくなった20人にんを弔とむらい、まだ見みつかっていない6人にんの発見はっけんを願ねがいました。

式しきの最後さいごには地元じもとの観光かんこう事業じぎょう者しゃが「安全あんぜんの誓ちかい」を行おこない、知床しれとこ小型こがた観光かんこう船せん協議きょうぎ会かいの神尾かみお昇のぼる勝かち会長かいちょうは「協議きょうぎ会かいとして事故じこの原因げんいんを真剣しんけんに考かんがえ、安全あんぜん意識いしきを高たかめるため、自主じしゅルールを策定さくていした。事故じこを風化ふうかさせないために一いち人にん一いち人にんが気きを引き締ひきしめ、事業じぎょうの存続そんぞくするかぎり教訓きょうくんとして生いかす。命いのちを守まもる行動こうどうを最さい優先ゆうせんに、安全あんぜんな知床しれとこを目指めざすことを誓ちかう」と述のべました。

追悼ついとう式しき会場かいじょうには運航うんこう会社かいしゃ社長しゃちょうが贈おくった花はなも

追悼ついとう式しきに観光かんこう船せん「KAZU 1」の運航うんこう会社かいしゃの桂田かつらだ精一せいいち社長しゃちょうは招待しょうたいされませんでしたが、会場かいじょう内ないには「知床しれとこ遊覧ゆうらん船せん代表だいひょう取締役とりしまりやく」の肩書かたがきで贈おくった花はなが置おかれていました。

斜里しゃり町内ちょうないでは消防しょうぼう署しょのサイレンに合あわせて祈いのり

斜里しゃり町内ちょうないでは、事故じこが起おきたとみられる午後ごご1時じすぎに消防しょうぼう署しょのサイレンが鳴ならされました。

犠牲ぎせい者しゃを悼いたむため旭川あさひかわ市しから訪おとずれたという50代だいの女性じょせいは、ウトロ港こうでこのサイレンを聞きき、海うみに向むかって手てを合あわせていました。

女性じょせいは「亡なくなった方ほうにどうか安やすらかに眠ねむってほしいと手てを合あわせました。冷つめたい海うみの底そこにいる行方ゆくえ不明ふめい者しゃを早はやく見みつけて家族かぞくの元もとに返かえしてあげてほしいです」と話はなしていました。

沈没ちんぼつ現場げんばに近ちかい半島はんとう沿岸えんがん部ぶでは行方ゆくえ不明ふめい者しゃを集中しゅうちゅう捜索そうさく

23日にち、海上かいじょう保安ほあん本部ほんぶと警察けいさつは22日にちに続つづいて半島はんとう沿岸えんがん部ぶで集中しゅうちゅう捜索そうさくを行おこない、行方ゆくえが分わかっていない6人にんの手てがかりを捜さがしています。

沈没ちんぼつ現場げんばに近ちかい半島はんとうの沿岸えんがん部ぶでは冬ふゆの間ま、捜索そうさくが中断ちゅうだんされていましたが、第だい1管区かんく海上かいじょう保安ほあん本部ほんぶと警察けいさつは22日にちから合同ごうどうでの捜索そうさくを再開さいかいしました。

捜索そうさく2日にち目めの23日にちもヘリコプターを使つかった上空じょうくうからの捜索そうさくが行おこなわれています。

また、半島はんとう東側ひがしがわの羅臼らうす港こうでは午前ごぜん8時半じはんごろに捜索そうさく隊たいのメンバー10人にん余あまりが集あつまり、3隻せきの小型こがたボートに乗り込のりこんで出発しゅっぱつしていきました。

このあと、天候てんこうの状況じょうきょうを見みながら捜索そうさく地点ちてんまで移動いどうし、海岸かいがん線せんに沿そって岩いわ陰かげを確認かくにんしたり浅瀬あさせで潜水せんすいしたりして行方ゆくえ不明ふめい者しゃの手てがかりを捜さがすということです。

第だい1管区かんく海上かいじょう保安ほあん本部ほんぶ警備けいび救難きゅうなん部ぶの武山たけやま晃浩あきひろ救難きゅうなん企画きかく指導しどう官かんは「この1年ねん、どのような形かたちで捜索そうさくを行おこなうか日々ひび検討けんとうしながら進すすめてきたが残念ざんねんながらまだ行方ゆくえ不明ふめい者しゃを発見はっけんできておらず、非常ひじょうにつらい気持きもちです。きのう行おこなえなかった場所ばしょもできるかぎり多おおく捜索そうさくし、1つでも多おおくの手てがかりを見みつけたい」と話はなしていました。

半島はんとう沿岸えんがん部ぶでの集中しゅうちゅう捜索そうさくは、24日にちも行おこなわれる予定よていです。

地元じもとには犠牲ぎせい者しゃを悼いたむ献花けんか台だい設置せっち

23日にち、地元じもとの斜里しゃり町まちウトロには犠牲ぎせい者しゃを悼いたむ献花けんか台だいが設もうけられ、午前ごぜん中ちゅうから訪おとずれた人ひとたちが花はなを手向たむけています。

斜里しゃり町まち役場やくばに加くわえて、知床しれとこ観光かんこうの拠点きょてんの、ウトロの道みちの駅えきにも献花けんか台だいが設もうけられ、午前ごぜん中ちゅうから訪おとずれた人ひとたちが花はなやお菓子おかしを供そなえて犠牲ぎせい者しゃを悼いたんでいます。

毎月まいつき23日にちに献花けんか台だいを訪おとずれているという斜里しゃり町まちの70代だいの女性じょせいは「家族かぞくのことを思おもうと気持きもちをことばにできません。1年ねんがたっても常つねに心こころは重おもく、切せつないです。早はやく全員ぜんいんが家族かぞくの元もとへ帰かえってほしいと思おもいますし、一いち歩ほでも前まえに進すすんでほしい」と涙なみだながらに話はなしました。

また、斜里しゃり町まちに住すむ60代だい男性だんせいは「見みつかっていない人ひともいて苦くるしい気持きもちです。身みに着つけていたものだけでも早はやく見みつかってほしい。知床しれとこは観光かんこうや漁業ぎょぎょうの町まちなので、事故じこがあったことはとても悔くやしいですし、一生いっしょうかかっても忘わすれることはできません」と話はなしていました。

斜里しゃり町まちウトロの献花けんか台だいは23日にち午後ごご5時じまで設置せっちされています。

被害ひがい者しゃ弁護べんご団だん山田やまだ団長だんちょう「引き続ひきつづき家族かぞくに寄り添よりそった支援しえんを」

斜里しゃり町まちウトロの道みちの駅えきに設もうけられた献花けんか台だいには、乗客じょうきゃく家族かぞくの代理人だいりにんをしている弁護べんご団だんのメンバー4人にんも献花けんかに訪おとずれました。

このうち、被害ひがい者しゃ弁護べんご団だんの団長だんちょうを務つとめる山田やまだ廣ひろし弁護士べんごしは「ウトロに来こなければ家族かぞくの気持きもちをしっかり受け止うけとめられないと思おもい、4人にんで献花けんかし、港みなとで手ても合あわせた。家族かぞくにとっては苦くもんの日々ひびが続つづいているので、弁護べんご団だんとして引き続ひきつづき家族かぞくに寄り添よりそった支援しえんをしていきたい」と話はなしていました。

捜索そうさくボランティア「5月つきの連休れんきゅうに捜索そうさくに行いきたい」

事故じこのあとボランティアで行方ゆくえ不明ふめい者しゃの捜索そうさくを続つづけてきた羅臼らうす町まちの漁業ぎょぎょう者しゃ、桜井さくらい憲二けんじさんは、午前ごぜん9時じに斜里しゃり町まちウトロの道みちの駅えきを訪おとずれ、献花けんか台だいに花はなを手向たむけました。

桜井さくらいさんは「きのうもご家族かぞくと話はなしをしましたが『真実しんじつを知しりたい』と皆みなさん言いっていました。見みつかっていない6人にん、そして家族かぞくのためにも、5月つきの連休れんきゅうに捜索そうさくに行いきたいです」とことばを詰つまらせながら話はなしました。

また、1年ねん前まえの事故じこを振り返ふりかえって「知床しれとこに暗くらい影かげを落おとした日ひでもあります。二度にどと同おなじような事故じこを起おこさないようにしていかなければと思おもいます」と話はなしていました。

運航うんこう会社かいしゃ社長しゃちょうが経営けいえいしていた旅館りょかん従業じゅうぎょう員いんも献花けんか

事故じこ当時とうじ、運航うんこう会社かいしゃの社長しゃちょうが経営けいえいしていた旅館りょかんの従業じゅうぎょう員いんも献花けんかに訪おとずれました。

献花けんかに訪おとずれたのは、斜里しゃり町まちで旅館りょかんの従業じゅうぎょう員いんをしている杉浦すぎうら登とう一いちさんです。

勤務きんむ先さきの旅館りょかんは事故じこが起おきた当時とうじ、運航うんこう会社かいしゃの桂田かつらだ精一せいいち社長しゃちょうが経営けいえいしていました。

そのため、当時とうじは全国ぜんこく各地かくちから駆かけつけた乗客じょうきゃく家族かぞくたちの宿泊しゅくはく施設しせつとして使用しようされ、杉浦すぎうらさんもできるかぎりのことをしたいという思おもいから、心配しんぱいそうに海辺うみべの様子ようすを見みに行いく家族かぞくたちの送迎そうげいなどにあたったということです。

乗客じょうきゃく家族かぞくたちが地元じもとに戻もどったあとも、毎月まいつき23日にちに欠かかさず犠牲ぎせい者しゃへの祈いのりをささげているほか、家族かぞくたちに町内ちょうないの様子ようすを伝つたえるなど交流こうりゅうを続つづけてきました。

あの日ひから1年ねんとなる23日にち、杉浦すぎうらさんは道みちの駅えきに設もうけられた献花けんか台だいを訪おとずれ、事故じこが起おきたとみられる午後ごご1時じすぎにサイレンが鳴ならされると深々ふかぶかと頭あたまを下さげて黙もくとうしていました。

杉浦すぎうらさんは献花けんか台だいに花はなを手向たむけ、手てを合あわせたあと「亡なくなった方ほうに哀悼あいとうの意いを表ひょうするとともに、まだ見みつかってない方ほうが早はやく発見はっけんされるよう願ねがいを込こめて祈いのりました。非力ひりきではありますが、これからもできるかぎりご家族かぞくを支ささえていくことが自分じぶんたちの使命しめいだと思おもっています」と話はなしていました。

事故じこをめぐっては、運航うんこう会社かいしゃのずさんな安全あんぜん管理かんりの実態じったいや、国くにの検査けんさ体制たいせいの不備ふびが明あきらかになり、再発さいはつ防止ぼうしに向むけた取り組とりくみが進すすめられています。

また、沈没ちんぼつの原因げんいんについては、去年きょねん12月つき、国くにの運輸うんゆ安全あんぜん委員いいん会かいが留とめ具ぐに不ふ具合ぐあいがあったハッチから海水かいすいが流入りゅうにゅうしたなどとする経過けいか報告ほうこく書しょを公表こうひょうしたほか、第だい1管区かんく海上かいじょう保安ほあん本部ほんぶも運航うんこう会社かいしゃの桂田かつらだ精一せいいち社長しゃちょうから任意にんいで事情じじょうを聴きくなどして業務ぎょうむ上じょう過失かしつ致死ちしの疑うたがいで捜査そうさを続つづけています。