保育所以外の認定こども園、認可外保育施設などを含めた保育施設全体では「不適切な保育」は1316件、このうち「虐待」は122件確認されたということです。
保育施設の職員による虐待については通報や公表の義務がなく、件数が公表されたのは初めてです。
一方「不適切な保育」については明確な定義がなく、保育施設への調査では園ごとの回答内容にばらつきがあったということです。
この中では、静岡県裾野市の事案で園や自治体の対応が遅れたことを受け、園内で虐待などが疑われる事案が発生したときは、自治体に速やかに相談することや、相談や通報を受けた自治体は迅速に対応するとともに組織全体として情報を共有することなどを求めています。 こども家庭庁は、今後、保育施設の職員による虐待について、通報や公表を義務づけるよう児童福祉法の改正についても検討することにしています。
静岡県裾野市の認可保育所では、去年、元保育士3人が園児の足をつかんで宙づりにするなどの虐待をしたとして、暴行の疑いで逮捕され、このうち1人が略式起訴されています。 この問題では、市が事態を把握しながら公表まで3か月かかるなど対応が遅れたことも指摘されました。 また、富山市の認定こども園では、園児の両足をつかんで体を引きずるなどの暴行をした疑いで去年12月、20代の元保育士など2人が書類送検されました。 仙台市の認可外保育施設でも、保育士が園児に下着姿のまま食事をさせたり、体をさかさまにして持ち上げたりするなどしたとして、ことし1月、市から行政指導を受けています。
千葉県八千代市にある勝田保育園で園長を務める丸山純さんは、トイレに行きたくないと言う園児と、行ってもらいたい保育士との間で、大きな声でのやりとりになっている場面に出会ったことがあるということです。 その時は、丸山さんが園児を引き受ける形をとり、保育士から離したことで落ち着いたということです。 丸山さんは「不適切保育」はあってはならないとしたうえで「子どもと1対1で対応する時は、どうしても気分が高ぶってしまうことがある。その時、保育士1人に任せるのではなく、周りの保育士とお互いにフォローし合えるような関係性があれば不適切な対応になるのを未然に防げると思う」と話していました。 そのうえで「そのためにも今の保育士の人数の基準では一人一人の子どもの主体性を大切にした保育を行うことは難しいのではないか。保育士たちがお互いに助け合えるように余裕ある人員の配置が大切だ」と指摘していました。
そのうえで「保育園は保護者や子どもとの関係性の中で成り立つものなので、保護者も園の実情にもっと関心をもって接していくことが必要ではないか。また、街で子どもたちと先生が散歩をしている様子を見たらひと言かけたり温かく見守るなど、社会全体で子どもの存在に関心を寄せていくことも求められている」と話していました。
そのうえで「大半の保育所では保育士が子どもの成長に真摯(しんし)に寄り添って適切な保育を行っている。今後、子どもや保護者が不安を感じることなく保育所に通えるようにするとともに、保育士の皆さんが安心して保育を担えるよう対策していきたい」と述べました。
全国の施設で「不適切な保育」相次ぐ
保育園長「余裕ある人員の配置が大切」
専門家「社会全体で子どもの存在に関心を」
小倉こども政策担当相「虐待など あってはならない」