長崎ながさき 原爆げんばく投下とうかから78年ねん “命いのち輝かがやく青あおい地球ちきゅうを次つぎの世代せだいに”

ことしの平和へいわ祈念きねん式典しきてんは、台風たいふうの接近せっきんにともない、参列さんれつ者しゃの安全あんぜんを優先ゆうせんして会場かいじょうが平和へいわ公園こうえんから屋内おくないの施設しせつに変更へんこうされました。

また、一般いっぱんの被爆ひばく者しゃや遺族いぞくのほか、岸田きしだ総理そうり大臣だいじんや各国かっこく大使たいしの参列さんれつが見送みおくられるなど、規模きぼが大幅おおはばに縮小しゅくしょうされました。

式典しきてんでは、まず、この1年間ねんかんに亡なくなった被爆ひばく者しゃなど3314人にんの名前なまえが書かき加くわえられた19万まん5607人にんの原爆げんばく死没しぼつ者しゃ名簿めいぼが納おさめられました。

そして、原爆げんばくがさく裂さくれつした午前ごぜん11時じ2分ふんに、事前じぜんに収録しゅうろくされた平和へいわ公園こうえんの鐘かねの音おとが流ながされ、犠牲ぎせい者しゃに黙もくとうをささげました。

続つづいて、被爆ひばく2世せいの長崎ながさき市しの鈴木すずき市長しちょうが平和へいわ宣言せんげんを読み上よみあげました。

鈴木すずき市長しちょうは、背中せなかに真っ赤まっかな大だいやけどを負おった姿すがたで原爆げんばくの恐おそろしさを世界せかいに訴うったえ続つづけた、被爆ひばく者しゃの谷口たにぐち稜りょう曄さんが残のこした「忘却ぼうきゃくが新あたらしい原爆げんばく肯定こうていへと流ながれていくことをおそれます」とのことばを紹介しょうかいしました。

そして、「核かく抑止よくしに依存いぞんしていては、核兵器かくへいきのない世界せかいを実現じつげんすることはできません。私わたしたちの安全あんぜんを本当ほんとうに守まもるためには、地球ちきゅう上じょうから核兵器かくへいきをなくすしかないのです」と述のべました。

そのうえで、核かく保有ほゆう国こくと核かくの傘かさのもとにいる国くにの指導しどう者しゃに対にたいして、「今いまこそ、核かく抑止よくしへの依存いぞんからの脱却だっきゃくを勇気ゆうきを持もって決断けつだんすべきです」と訴うったえました。

「私わたしの背中せなかは見世物みせものではない。誰だれがこれをやったのか知しってほしい」谷口たにぐち稜りょう曄さん(NHKアーカイブス)

続つづいて、被爆ひばく者しゃ代表だいひょうとして熊本くまもと市しに住すむ工藤くどう武子たけこさん（85）が「平和へいわへの誓ちかい」を述のべました。

工藤くどうさんは、7歳さいのときに長崎ながさき市しで被爆ひばくし、戦後せんご、両親りょうしんときょうだいを相次あいついでがんで失うしなったことや、自身じしんも肺はいがんの手術しゅじゅつを受うけたことを語かたりました。

そのうえで、「たった一いち発はつの原爆げんばくで、長崎ながさきではおよそ7万まん4000人にん、広島ひろしまでは14万まん人にんが亡なくなり、生き残いきのこった人々ひとびとの多おおくも、今いまなお、さまざまな後遺症こういしょうに苦くるしんでいます。放射能ほうしゃのうに汚染おせんされた灰色はいいろの世界せかいではなく、命いのち輝かがやく青あおい地球ちきゅうを次つぎの世代せだいに残のこすために、これからも力ちからのかぎり尽つくしていくことを誓ちかいます」と述のべました。

ことし、被爆ひばく者しゃの平均へいきん年齢ねんれいは85歳さいに達たっしました。

この1年ねんで、長崎ながさき県内けんないでは平和へいわ活動かつどうを先導せんどうしてきた被爆ひばく者しゃが相次あいついで亡なくなっています。

「被爆ひばく者しゃなき時代じだい」が近ちかづきつつある中なか、長崎ながさきは、きょう一いち日にち、犠牲ぎせい者しゃへの祈いのりに包つつまれるとともに、「長崎ながさきを最後さいごの被爆ひばく地ちに」という被爆ひばく者しゃたちの願ねがいを世界せかいに発信はっしんします。

高校生こうこうせい“核兵器かくへいきのない平和へいわな未来みらい実現じつげんへ決意けつい”

「長崎ながさき原爆げんばくの日ひ」にあわせて、高校生こうこうせいによる集会しゅうかいが長崎ながさき市内しないで開ひらかれました。

参加さんか者しゃたちは輪わになって手てをつないで「人間にんげんの鎖くさり」を作つくり核兵器かくへいきのない平和へいわな未来みらいの実現じつげんに向むけた決意けついを示しめしました。

高校生こうこうせいによる集会しゅうかいは例年れいねん、爆心ばくしん地ち公園こうえんで行おこなわれていましたが、ことしは台風たいふうの影響えいきょうで、長崎ながさき市内しないの屋内おくない施設しせつでの開催かいさいとなりました。

集会しゅうかいは午前ごぜん7時じ前まえから始はじまり、核兵器かくへいき廃絶はいぜつを求もとめる署名しょめいを国連こくれんに届とどける活動かつどうを行おこなう「高校生こうこうせい平和へいわ大使たいし」など、長崎ながさき県けんの内外ないがいから合あわせて80人にんほどが参加さんかしました。

参加さんか者しゃはまず、黙もくとうしたあと、献花けんか台だいに千羽鶴せんばづるや花はなを手向たむけて原爆げんばくの犠牲ぎせい者しゃに祈いのりをささげました。

そして、参加さんか者しゃ全員ぜんいんで輪わになって、手てをつないで「人間にんげんの鎖くさり」を作つくり、核兵器かくへいきのない平和へいわな未来みらいの実現じつげんに向むけた決意けついを示しめしました。

最後さいごに、参加さんか者しゃを代表だいひょうして、諫早はや高校こうこう3年ねんの高川たかがわ紗しゃ希のぞみさんが「全員ぜんいんで平和へいわへの思おもいを世界中せかいじゅうへ広ひろげていくことを誓ちかいます」と宣言せんげんしました。

鎮西ちんぜい高校こうこうの2年生ねんせいで、被爆ひばく4世せいの大澤おおさわ心こころ春はるさんは「曽そ祖母そぼは、この日ひにとてもつらい経験けいけんをして、話はなしをしようとすると涙なみだがあふれていたと聞きいています。私わたしも受け継うけついで発信はっしんしていきたいです」と話はなしていました。

また、熊本くまもと県けんから参加さんかした高校こうこう2年生ねんせいの小佐しょうさ々湘太ふとしさんは「原爆げんばく投下とうかという不ふ条理じょうりを押おしつけられた人ひとたちの気持きもちを考かんがえていました。被爆ひばく者しゃから話はなしを聞きくことができる最後さいごの世代せだいとして、原爆げんばくを風化ふうかさせないよう頑張がんばって活動かつどうしたいです」と話はなしていました。

平和へいわ公園こうえんで祈いのりをささげる人ひとの姿すがたも

例年れいねんは平和へいわ祈念きねん式典しきてんの会場かいじょうとなる長崎ながさき市しの平和へいわ公園こうえんでは、原爆げんばくがさく裂さくれつした午前ごぜん11時じ2分ふんに合あわせて祈いのりをささげる人ひとたちの姿すがたが見みられました。

佐賀さが県けんの実家じっかに家族かぞく4人にんで帰省きせいしたという埼玉さいたま県けんの39歳さいの男性だんせいは「私わたしも子こどものころ、母親ははおやに連つれられてこの平和へいわ公園こうえんに何なん回かいも来きました。上うえの娘むすめが小学しょうがく4年生ねんせいになり、平和へいわや戦争せんそうのことがわかる年代ねんだいになったので見みてもらいたいと思おもい連つれてきました。子こどもにはこの場所ばしょを見みてもらい、同おなじような悲惨ひさんな出来事できごとが起おこらないようにするにはどうしたらよいか、考かんがえるきっかけにしてもらいたい」と話はなしていました。

また、小学しょうがく4年生ねんせいの娘むすめは「戦争せんそうでは何なん百ひゃく人にん、何なん千せん人にん、何なん万まん人にんも亡なくなります。何なにもしていない人ひとが亡なくなるのは嫌いやだから、同おなじようなことが起おきないように平和へいわな世の中よのなかになるように祈いのりました」と話はなしていました。

被爆ひばく者しゃ 三田みた村むらさん「ここから平和へいわを訴うったえようと 力強ちからづよく鳴ならした」

台風たいふうの影響えいきょうで平和へいわ祈念きねん式典しきてんに参加さんかできなかった長崎ながさき市しに住すむ三さん田村たむら静子しずこさんは、原爆げんばくがさく裂さくれつした午前ごぜん11時じ2分ふんに合あわせて、長崎ながさき市しの平和へいわ公園こうえんで鐘かねを鳴ならして平和へいわへの祈いのりをささげました。

三田村みたむら静子しずこさんは3歳さいの時とき、爆心ばくしん地ちからおよそ5キロ離はなれた長崎ながさき市内しないの自宅じたくで被爆ひばくしました。

その後そのご、30年ねん以上いじょうにわたって、自身じしんの経験けいけんや被爆ひばく者しゃから聞き取ききとった証言しょうげんを紙芝居かみしばいにまとめて、被爆ひばくの実相じっそうを後世こうせいに伝つたえる活動かつどうを行おこなっています。

ことしの平和へいわ祈念きねん式典しきてんでは、被爆ひばく者しゃ代表だいひょうとして「原爆げんばく死没しぼつ者しゃ名簿めいぼ」を奉安ほうあん箱ばこに納おさめる予定よていでしたが式典しきてんの規模きぼが縮小しゅくしょうされたため鈴木すずき市長しちょうが代行だいこうすることになりました。

三田みた村むらさんは9日にち、被爆ひばく者しゃ団体だんたいのメンバーとともに長崎ながさき市しの平和へいわ公園こうえんを訪おとずれ原爆げんばくがさく裂さくれつした午前ごぜん11時じ2分ふんにあわせて、「長崎ながさきの鐘かね」をおよそ1分間ふんかん鳴ならしました。

三田みた村むらさんは「ここから平和へいわを訴うったえようと思おもって、力強ちからづよく鐘かねを鳴ならしました。核兵器かくへいき禁止きんし条約じょうやくで光ひかりがさしたと思おもったら、また戦争せんそうが起おきて、いつになったら平和へいわが訪おとずれるんだろうと思おもいます。しかし、負まけずに原爆げんばく投下とうかから80年ねんに向むけてこれからも平和へいわを発信はっしんし続つづけていきたい」と話はなしていました。

被災ひさい協きょう 田中たなか会長かいちょう「被爆ひばく者しゃのためにも 核兵器かくへいき廃絶はいぜつを」

4歳さいの時ときに自宅じたくで被ひばくした被災ひさい協きょう＝長崎ながさき原爆げんばく被災ひさい者しゃ協議きょうぎ会かいの田中たなか重光しげみつ会長かいちょうは例年れいねん、平和へいわ祈念きねん式典しきてんに参列さんれつしていましたが、ことしは式典しきてんの規模きぼが縮小しゅくしょうされたため原爆げんばくがさく裂さくれつした11時じ2分ふんを自宅じたくで迎むかえました。

田中たなかさんは、11時じ2分ふんを知しらせるサイレンが鳴り響なりひびくと、目めを閉とじて静しずかに手てを合あわせました。

今回こんかいの式典しきてんについて「なんとも言いえない気持きもちです。特とくに今いまの国際こくさい情勢じょうせいで核かくが使用しようされるのではないかという危険きけんが高たかまっているときに、強つよい発信はっしんができないことは残念ざんねんだと思おもいます」と話はなしていました。

そのうえで「もう原爆げんばく投下とうかから78年ねんがたったんだなと感かんじました。苦くるしんできた被爆ひばく者しゃのためにも核兵器かくへいきを廃絶はいぜつしないといけません。やがて被爆ひばく者しゃはいなくなります。被爆ひばく者しゃがいなくなったときにどうするのか、世界中せかいじゅうの一いち人にん一いち人にんに考かんがえてほしいです。また、若わかい人ひとたちの未来みらいは若わかい人ひとたち自身じしんが作つくっていくので、平和へいわや核兵器かくへいきの問題もんだいを自分じぶんごととして考かんがえてほしいです」と話はなしていました。