警察によりますと、去年、大学生3人と暗号資産の投資に関する契約をする際、必要な書面を交付しなかったなどとして、特定商取引法違反の疑いが持たれています。
勧誘の際にはタワーマンションの1室に呼び込むなどして「出資した金額に応じて暗号資産の配当が得られるほか顧客を増やせば8%の紹介料を支払う」などと説明していました。 しかし、出資した大学生から「十分な配当が得られず、返金を求めても返ってこない」などという相談が寄せられ、警察が捜査していました。 このグループは20代の若者を中心に2500人余りからおよそ7億円を集めていたとみられ、警察が実態の解明を進めています。 9人の認否について明らかにしていません。
マンションの部屋には、知人のほか、面識のない若者が複数いて、マーケットピークの歴史やどのようにして利益を出すかなどについて3時間余り説明を受けたということです。 この時の説明では、投資する暗号資産は、1年後には数倍になっていて、毎週、一定の暗号資産が配分され52週間で必ず元本は戻ってくるというものでした。 その後、大学の成績で思うような結果が出せず、親との関係にも悩んでいるときにこの知人から「一発逆転をしないか」と再び、勧誘を受けました。 大学生は「稼いだら大学に行かなくてもいいんだ」という気持ちになり、出資を決めたということです。 お金を振り込みに行く際、無理やり消費者金融に連れて行かれて借金をするよう迫られましたが、自分の貯金から140万円を支払ったということです。 このとき、書面での契約のやりとりはありませんでした。 1度、出資をすると、今度は、周囲の人や友人を勧誘するよう求められ「1人につき出資額の8%を支払う」と言われました。 大学生にはアポの取り方を教えるなどというセミナーの案内が次々に届くようになりました。
数か月後、暗号資産は暴落。 知人に返金を求めたところ、連絡が取れなくなったということです。 出資してからおよそ1年がたちますが、これまでに配当があったのは、出資額の5分の1程度で、知人にはSNSをブロックされて、音信不通の状態が続いています。 大学生は「自分が弱っているところにつけこまれて、手を出してしまった。とにかく全額返してほしい」と話していました。
大阪・東大阪市にある近畿大学では、学生部の相談窓口にマルチ商法などの金銭トラブルに巻き込まれたという相談が、毎年数件、寄せられるということです。
学生が、こうしたトラブルに巻き込まれないよう、大学は入学時に勧誘の手口を示した「マナー防犯ガイドブック」を配布しています。 また、夏休みや春休みなど長期休みの前には「マルチ商法や勧誘には注意してください」と注意を呼びかけるメッセージをポータルサイトに掲載するとともにメールでも個別に送信しているということです。
「モノなしマルチ商法」は物品の販売ではなく、暗号資産への投資などのもうけ話や投資を持ちかけて友人を紹介すれば紹介料が得られるなどと勧誘するもので、若者を中心にトラブルが相次いでいます。 国民生活センターによりますと、昨年度、全国の消費生活センターなどに3537件の相談が寄せられ、このうち、関西の2府4県では516件でした。 また、全国に寄せられた相談のうち、10代と20代からの相談が1692件と47.8%を占めています。友人やSNSを通じて知り合った人物からもうけ話を持ちかけられ、中には消費者金融で借金をさせて出資させるケースもあるということです。 国民生活センターは、もうけ話の実態や仕組みがわからない場合は契約しないよう呼びかけていて、トラブルに巻き込まれた場合は、消費者ホットライン「188」に相談してほしいと呼びかけています。
また、最近では、SNSやマッチングアプリを通じて、全く知らない人物から勧誘されているにもかかわらず、もうけ話にのってしまい、トラブルになるケースもあるということです。 国府弁護士は「若い人たちのリテラシーを高め、『投資で月に5%』などと言われた時点でうそだと思う能力が必要です。絶対に損はしないと勧誘されることが多いが、投資で簡単にもうかることはなくリスクがつきものなので、十分に注意を払ってほしい」と呼びかけています。
出資した大学生「一発逆転しないかと言われ…」
大学も注意喚起
相談の半数は10代~20代
弁護士「成人年齢引き下げも影響」
警察は2500人余りからおよそ7億円を集めていたとみています。
取材を進めると、友人を次々に巻き込んでいく勧誘の実態が分かりました。
(大阪放送局 記者 山本健太 鞆田優希穂)
マルチ商法グループ9人逮捕 約7億円集めたか