日本新聞: 【詳しく】オミクロン株「BA.5」急増感染力は? ピークはいつ?

新型しんがたコロナウイルスの1日にちの感染かんせん者しゃ数すうが、東京とうきょうではおよそ4か月かげつぶりに1万まん人にんを超こえ、全国ぜんこくでも9万まん人にんを超こえました。今いまの感染かんせん再さい拡大かくだいに大おおきく関かかわっているのが、オミクロン株かぶの1つ、「BA.5」と考かんがえられています。

感染かんせんのピークは？ワクチンは？重症じゅうしょう度どは？

最新さいしんの見解けんかいをまとめました。

“第だい7波は” 「BA.5」が主流しゅりゅうに

ことし2月つき以降いこう、減少げんしょう傾向けいこうが続つづいてきた新型しんがたコロナウイルスの感染かんせんが先月せんげつ下旬げじゅん以降いこう、再さい拡大かくだいしています。政府せいふ分科ぶんか会かいの尾身おみ会長かいちょうは今月こんげつ11日にち、「新あらたな感染かんせんの波なみが来きたことは間違まちがいない」と述のべ、“第だい7波は”に入はいったという認識にんしきを示しめしました。

専門せんもん家かは、「第だい7波は」ともいえる再さい拡大かくだいの背景はいけいに、

▼これまでのワクチン接種せっしゅや感染かんせんによって得えられた免疫めんえきの効果こうかが時間じかんの経過けいかとともに弱よわまってきていること、

▼人ひとと人ひととの接触せっしょくの機会きかいが増ふえていることとともに、

▼オミクロン株かぶのうち、感染かんせん力りょくがより強つよいとされる「BA.5」が主流しゅりゅうになってきていることがあると指摘してきしています。

そもそも「BA.5」って？感染かんせん力りょくは？

「BA.5」はオミクロン株かぶの一種いっしゅで、ことし2月つきに南アフリカみなみあふりかで確認かくにんされたあと、5月つき以降いこう、欧米おうべいを中心ちゅうしんに広ひろがりました。

現在げんざい、世界せかいで検出けんしゅつされる新型しんがたコロナウイルスのほとんどはオミクロン株かぶですが、WHO＝世界せかい保健ほけん機関きかんによりますと、「BA.5」は6月つき25日にちまでの1週間しゅうかんで、前まえの週しゅうから15ポイント増ふえて52％を占しめています。アメリカでは、7月つき9日にちまでの1週間しゅうかんで全体ぜんたいの65％を占しめています。

WHOのテドロス事務じむ局長きょくちょうは12日にちの記者きしゃ会見かいけんで「新あらたな波なみが起おきていて、新型しんがたコロナがまだ終おわりに近ちかづいていないことが改あらためて示しめされている」と述のべました。

イギリスの保健ほけん当局とうきょくの先月せんげつ24日にちの発表はっぴょうによりますと、「BA.5」は「BA.2」と比くらべて35.1％速はやく広ひろがっているとみられるということです。

国内こくないでも広ひろがり始はじめていて、今月こんげつ13日にちの厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうに、京都大きょうとだい学がくの西浦にしうら博ひろし教授きょうじゅが、東京とうきょう都内とないのデータをもとに分析ぶんせきした結果けっかとして示しめした資料しりょうによりますと、「BA.5」はこれまで主流しゅりゅうだった「BA.2」と比くらべて27％速はやく広ひろがっているとみられるとしています。

東京とうきょう都とのモニタリング会議かいぎでの報告ほうこくによりますと、6月つき27日にちまでの1週間しゅうかんで「BA.5」が疑うたがわれるケースが33.4％を占しめ、置おき換がわりが進すすんでいるとしています。

また、国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょの分析ぶんせきでは、「BA.5」の占しめる割合わりあいは、8月つきの第だい1週しゅうには全国ぜんこくでほぼ100％になると推定すいていされるということです。

感染かんせんのピークは？AIで予測よそく

名古屋なごや工業こうぎょう大学だいがくの平田ひらた晃あきら正せい教授きょうじゅはAI＝人工じんこう知能ちのうを使つかって分析ぶんせきした今後こんごの感染かんせん者しゃ数すう・死亡しぼう者しゃ数すうの予測よそくの結果けっかを示しめしています。

それによりますと、「BA.5」の感染かんせん力りょくがこれまでの1.3倍ばいだと想定そうていし、過去かこの感染かんせん者しゃ数すうの推移すいいやワクチンの効果こうか、それに人ひと流りゅうなどのデータをもとに分析ぶんせきしたところ、東京とうきょう都内とないの感染かんせん者しゃ数すうは今月こんげつ25日にちがピークで、1日にちおよそ1万まん8000人にんになるという結果けっかになったということです。

また、東京とうきょう都とでは、65歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃで亡なくなる人ひとの数かずが、8月つきには1日にち当あたり、およそ20人にんになるとしていますが、65歳さい以上いじょうを中心ちゅうしんとした4回かい目めの接種せっしゅが順調じゅんちょうに進すすめば、9月つき下旬げじゅんにはおよそ10人にんまで減へるという計算けいさん結果けっかになったとしています。

感染かんせん症しょうに詳くわしい東京とうきょう医科いか大学だいがくの濱田はまだ篤郎とくろう特とく任にん教授きょうじゅは「多おおくの人ひとがワクチンの3回かい目めの接種せっしゅを受うけていることや、寒さむい時期じきではないことなどを踏ふまえると、ことしの年明としあけにオミクロン株かぶが流行りゅうこうし始はじめたときほどまでは感染かんせん者しゃ数すうは増ふえないのではないかと考かんがえられるが、以前いぜん経験けいけんしたより拡大かくだいすることも想定そうていして対策たいさくを準備じゅんびすべきだ。3回かい目めのワクチン接種せっしゅをまだ受うけていない人ひとは、早はやめに受うけていただきたいし、高齢こうれい者しゃの方ほうは4回かい目めの接種せっしゅを受うけることが一番いちばん大事だいじだ」と指摘してきしました。

さらに、「感染かんせん者しゃ数すうが特とくに増ふえているときは、一人ひとりひとりの予防よぼう対策たいさくをある程度あるていど強つよめに行おこなうことが大切たいせつで、感染かんせんを疑うたがうような症状しょうじょうがあれば早はやめに検査けんさしたり、医療いりょう機関きかんを受診じゅしんしたりしてほしい。多おおくの地域ちいきでは病床びょうしょうはまだひっ迫ひっぱくしていないが、行政ぎょうせい機関きかんは前まえもって準備じゅんびし、医療いりょう従事じゅうじ者しゃや介護かいご施設しせつの職員しょくいんなどへの4回かい目めの接種せっしゅも検討けんとうしてもらいたい」と対策たいさくの強化きょうかを訴うったえました。

ワクチンは？

ワクチンについて、イギリスの保健ほけん当局とうきょくは先月せんげつ24日にちに出だした報告ほうこく書しょで、5月下げっか旬しゅんまでの1か月かげつ余あまりの間まに感染かんせんした人ひとのデータを分析ぶんせきしたところ、「BA.5」に感染かんせんした人ひとに対にたいするワクチンの効果こうかは、「BA.2」に感染かんせんした人ひとに対にたいする効果こうかと比くらべて大おおきな違ちがいはなかったと報告ほうこくしています。

一方いっぽうで、アメリカのFDA＝食品しょくひん医薬品いやくひん局きょくは、先月せんげつ30日にち、この秋あき以降いこうに行おこなう追加ついか接種せっしゅのワクチンについて、いま使つかわれているワクチンの成分せいぶんに加くわえ、「BA.4」や「BA.5」のスパイクたんぱく質たんぱくしつを加くわえたものを開発かいはつすべきだと、製薬せいやく会社かいしゃに対にたいして推奨すいしょうしたと発表はっぴょうしました。

ただ、今いまのワクチンは新型しんがたコロナに感染かんせんした場合ばあいに重症じゅうしょう化かするのを防ふせぐ基盤きばんになるとして、いま行おこなわれている接種せっしゅについては変更へんこうを求もとめないとしています。

東京とうきょう医科いか大学だいがくの濱田はまだ特とく任にん教授きょうじゅは「日本にっぽんでも、秋あき以降いこうの感染かんせん拡大かくだいはいまよりも本格ほんかく的てきなものになる可能かのう性せいがある。秋あき以降いこうの接種せっしゅの考え方かんがえかたや、ワクチンの確保かくほについて、国くにレベルで議論ぎろんを進すすめるべきだ」と指摘してきしています。

ワクチン接種せっしゅや感染かんせんで得えた免疫めんえきが…

さらに、ワクチン接種せっしゅや感染かんせんによって得えられた免疫めんえきが、時間じかんの経過けいかとともに弱よわまってきていることも、感染かんせんの拡大かくだいにつながっているとみられています。

7月つき13日にちの厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうで、京都大きょうとだい学がくの西浦にしうら教授きょうじゅが示しめした試算しさんの資料しりょうによりますと、オミクロン株かぶの『BA.4』と『BA.5』に対にたいする免疫めんえきを持もつ人ひとの割合わりあいはいずれの年代ねんだいでも下さがってきているということです。

免疫めんえきを持もつ人ひとの割合わりあいは13日にちの時点じてんで、20代だいで31.2％、30代だいで30.2％、40代だいで29％、50代だいで29.7％、60代だいで26.4％、70代だい以上いじょうで26％などとなっています。

重症じゅうしょう化かしやすい？

感染かんせんした場合ばあいに重症じゅうしょう化かしやすいかどうかについて、WHOは7月つき6日にちの週報しゅうほうで「『BA.2』と比くらべて重症じゅうしょう度どが変化へんかしているという証拠しょうこはない」としています。

ただ、複数ふくすうの国くにで、感染かんせん者しゃ数すうが増ふえたため、入院にゅういんや集中しゅうちゅう治療ちりょう室しつでの治療ちりょうに至いたった人ひとの数かず、それに亡なくなる人ひとの数かずが急増きゅうぞうしているとしています。

また、ECDC＝ヨーロッパ疾病しっぺい予防よぼう管理かんりセンターも「重症じゅうしょう度どが増ましているという証拠しょうこはない」としたうえで、感染かんせん者しゃ数すうが増ふえると、入院にゅういん者しゃ数すうや死亡しぼう者しゃ数すうが増ふえる可能かのう性せいがあると指摘してきしています。

東京とうきょう大学だいがくの佐藤さとう佳けい教授きょうじゅらのグループが専門せんもん家かの査読さどくを受うける前まえにインターネット上じょうで発表はっぴょうした論文ろんぶんによりますと、「BA.5」の特徴とくちょうを再現さいげんして作製さくせいしたウイルスなどをハムスターに感染かんせんさせたところ、体重たいじゅうが10％程度ていど減少げんしょうしたということです。

「BA.2」では体重たいじゅうの減少げんしょうはなかった一方いっぽう、「BA.5」では肺はいなどの炎症えんしょうもより多おおく見みられたということで、従来じゅうらいのオミクロン株かぶよりも病原びょうげん性せいが高たかまっている可能かのう性せいがあるとしています。

実際じっさいにはこれまでに受うけたワクチンの効果こうかもあり、「BA.5」に感染かんせんした場合ばあいの症状しょうじょうについてはまだはっきりわかっていません。

東京とうきょう医科いか大学だいがくの濱田はまだ特とく任にん教授きょうじゅは「今いまのところ、『BA.5』はそれほど重症じゅうしょう化かを引き起ひきおこさないのではないかと見みられているが、まだはっきり分わかっていない。フランスやイタリア、ドイツなどでは『BA.5』に置き換おきかわってきていて、ここ1、2週間しゅうかんで感染かんせん者しゃ数すうがかなり増ふえている。これらの国々くにぐにで感染かんせん者しゃ数すうがどのように推移すいいして、重症じゅうしょう者しゃがどのくらい増ふえるかということは、今後こんごの日本にっぽんの状況じょうきょうを予測よそくする上うえで、非常ひじょうに重要じゅうようだと考かんがえられる」と述のべました。

免疫めんえきを逃のがれる特徴とくちょうも

「BA.5」は、ウイルスの表面ひょうめんにある突起とっきで、細胞さいぼうに感染かんせんする際さいの足あしがかりとなる「スパイクたんぱく質たんぱくしつ」に「L452R」や「F486V」と呼よばれる変異へんいが起おきています。

これらの変異へんいによって、「BA.5」は免疫めんえきを逃のがれる性質せいしつを持もつに至いたったと見みられています。

WHOによりますと、「BA.5」はウイルスの働はたらきを抑おさえる中和ちゅうわ抗体こうたいの効果こうかが、当初とうしょ広ひろがった「BA.1」に比くらべて7分ぶんの1以下いかになったという実験じっけん結果けっかがあるということです。

また、アメリカ・コロンビア大学ころんびあだいがくのグループが今月こんげつ5日にち、科学かがく雑誌ざっし「ネイチャー」で発表はっぴょうした論文ろんぶんによりますと、新型しんがたコロナのmRNAワクチンを3回かい接種せっしゅした人ひとなどの血液けつえきを使つかった実験じっけんでは、「BA.4」と「BA.5」は、「BA.2」に比くらべて中和ちゅうわ抗体こうたいの効果こうかが4分ぶんの1以下いかになっていたということです。

さらに気きになる変異へんいウイルスも

きのう国内こくないでも検疫けんえき以外いがいで初はじめてオミクロン株かぶの一種いっしゅ「BA.2.75」が検出けんしゅつされたと神戸こうべ市しが発表はっぴょうしました。

ことし6月つきに最初さいしょにインドから報告ほうこくされた変異へんいウイルスで、イギリスやドイツ、アメリカなどでも見みつかっています。

「BA.5」などと同様どうように、免疫めんえきを逃避とうひする性質せいしつがあり、インドでは「BA.5」よりも増加ぞうかのスピードが速はやいということです。

濱田はまだ特とく任にん教授きょうじゅは「これまで主流しゅりゅうだった『BA.2』よりも免疫めんえきを逃避とうひしやすい、免疫めんえきがある人ひとも感染かんせんしやすい可能かのう性せいが高たかいということで、WHOも注目ちゅうもくして監視かんしをしている。日本にっぽんで皆みなさんが心配しんぱいする必要ひつようはまだないと思おもうが、行政ぎょうせいレベルでは、この新あたらしいウイルスがどのような特徴とくちょうを持もっているのか、かなり厳重げんじゅうに監視かんししたほうがいいと思おもう」と話はなしています。