急成長AIスタートアップ「Anysphere」、評価額4.6兆円突破――20代創業者4名がビリオネアに
プログラミング支援を目的とした人工知能(AI)ツール「Cursor(カーソル)」を開発するスタートアップ企業Anysphere(エニースフィア)は、2023年11月13日、グーグルやエヌビディアなど著名企業から23億ドル(約361億円)の資金調達を実現し、企業評価額が293億ドル(約4.6兆円、1ドル=157円換算)に到達したと発表した。この結果、20代である共同創業者4名はいずれも保有株式の価値が13億ドル(約204億円)を超え、ビリオネアとなったことがフォーブスの試算により明らかとなった。
Anysphereは、2022年にマサチューセッツ工科大学(MIT)で出会った4人の若き起業家によって設立されたスタートアップであり、創業以来アクセルやスライブ・キャピタル、コーチュー、アンドリーセン・ホロウィッツ、DSTグローバルといった世界的ベンチャーキャピタルから総額33億8000万ドルを調達してきた。4人はいずれも30歳未満で、フォーブス「30 Under 30」に選出されるなど、卓越した実績を有している。
同社が開発したAIコード編集ソフト「Cursor」は、エヌビディア、アドビ、ウーバー、ショッピファイ、ペイパルなど世界的企業を含む約5万チーム、数百万人のソフトウェア開発者に利用されている。2023年の年間経常収益(ARR)は100万ドル(約1億5700万円)であったが、わずか1年で1億ドル(約157億円)にまで急拡大し、2025年初頭には急成長スタートアップの代表格となった。
創業者の一人であるアーヴィッド・ルンネマーク氏(26)は2025年10月にAnysphereを退社し、自身の新会社「Integrous Research」を設立した。同社は「より安全なAI」の実現に向けたシステム開発に注力する方針を掲げている。
Cursorは、OpenAIやAnthropic、グーグル、xAIといった他社のAIモデルを活用し、エンジニアによるコード生成・編集やバグ修正を支援してきたが、2023年10月には自社開発モデル「Composer」を発表した。Composerはコードの高速生成やファイル編集、コードベースの変更を自動化する機能を備えており、これにより他社の高価なモデルへの依存度を低減できる可能性がある。
共同創業者たちはそれぞれ多彩な経歴を有している。CEOのマイケル・トゥルエル氏(25)は、幼少期からコーディングに親しみ、高校時代には複数言語によるプログラミングゲーム「Halite」を開発し多数のユーザーを獲得したほか、Octant社でのインターンやグーグルでのレコメンドモデル開発などに従事した経歴を持つ。また、スタートアップ育成機関「Neo」のスカラーにも選出されている。共同創業者のアマン・サンガー氏(25)も同様にNeoのスカラーであり、スアレ・アシフ氏(25)は国際数学オリンピック出場経験を持つ。ルンネマーク氏も同大会で優勝している。
当初、AnysphereはCADソフト向けAIモデルの開発を試みたが、専門知識の不足により事業転換を余儀なくされ、より得意とするソフトウェアエンジニアリング分野に注力することとなった。その結果、プログラマー向けAI搭載コードエディター「Cursor」の開発に至った経緯がある。
AIスタートアップの企業評価額が急速に上昇する中、若手創業者が次々とビリオネアとなる現象が顕著になりつつある。フォーブスによれば、2023年10月には評価額100億ドル(約1.57兆円)に達したAI採用スタートアップMercor(メルコア)の22歳の共同創業者2名も、世界最年少のビリオネアとして注目を集めている。