検事けんじ長ちょう定年ていねん延長えんちょうめぐり文書ぶんしょ開示かいじ求もとめた裁判さいばん 国くに控訴こうそせず判決はんけつ確定かくてい

東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょうの黒川くろかわ弘ひろし務つとむ元もと検事けんじ長ちょうについて、政府せいふは、法ほう解釈かいしゃくを変更へんこうし2020年ねん1月つきに、定年ていねんを延長えんちょうする閣議かくぎ決定けっていをしました。

この定年ていねん延長えんちょうをめぐり、神戸こうべ学院がくいん大学だいがくの上脇うえわき博之ひろゆき教授きょうじゅが経緯けいいを正確せいかくに検証けんしょうできる公文こうぶん書しょを開示かいじするよう国こくに求もとめた裁判さいばんで、先月せんげつ27日にち、大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょは「法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうは、元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうを目的もくてきとしたものと考かんがえるほかない」などと指摘してきし、元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうについて法務省ほうむしょう内ないで協議きょうぎや検討けんとうした文書ぶんしょの開示かいじを命めいじました。

これについて、控訴こうその期限きげんだった11日にちまでに国くに側がわは控訴こうそせず、判決はんけつが確定かくていしました。

上脇うえわき教授きょうじゅは、今回こんかいとは別べつの開示かいじ請求せいきゅうで「勤務きんむ延長えんちょう制度せいどの検察官けんさつかんへの適用てきようについて」という法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうが書かかれた文書ぶんしょがすでに開示かいじされていたことから、この文書ぶんしょを含ふくめて黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうを目的もくてきとした文書ぶんしょが作成さくせいされていたはずだと主張しゅちょうしていました。

判決はんけつの確定かくていを受うけて、国くに側がわが今後こんご、どのような文書ぶんしょを開示かいじするか注目ちゅうもくされます。

上脇うえわき教授きょうじゅ「政府せいふは間違まちがいだったことを認みとめて説明せつめい責任せきにんを」

神戸こうべ学院がくいん大学だいがくの上脇うえわき博之ひろゆき教授きょうじゅは「判決はんけつが確定かくていしてよかった。政府せいふは『法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうは黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうを目的もくてきとしたものではない』とうその説明せつめいをしてきたことになるので、間違まちがいだったことを認みとめて説明せつめい責任せきにんを果はたしてほしい。そして、国会こっかいは、政府せいふの説明せつめいを待またずに、真相しんそう解明かいめいにあたってほしい」と話はなしていました。

小泉こいずみ法相ほうしょう「控訴こうそして判決はんけつを是正ぜせいをするまでの実益じつえきが乏とぼしいと判断はんだん」

小泉こいずみ法務ほうむ大臣だいじんは記者きしゃ会見かいけんで「判決はんけつ内容ないようを精査せいさした結果けっか、開示かいじ対象たいしょうとなる文書ぶんしょは、検察官けんさつかんへの勤務きんむ延長えんちょう制度せいどの適用てきように関にかんする文書ぶんしょであり、ほかの情報じょうほう開示かいじ請求せいきゅうで開示かいじしたこともあるので、控訴こうそして判決はんけつを是正ぜせいをするまでの実益じつえきが乏とぼしいと判断はんだんした」と述のべました。

そのうえで、記者きしゃ団だんから、「黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうのためではないという国くにの主張しゅちょうは変かえないのか」と問とわれたのに対にたいし「当時とうじ、国会こっかいでそのような説明せつめいがなされたと承知しょうちしている」と述のべました。

開示かいじ求もとめた文書ぶんしょとは

東京とうきょう高等こうとう検察庁けんさつちょうの黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうについて定年ていねん延長えんちょうした閣議かくぎ決定けっていをめぐり、2020年ねん4月つき、上脇うえわき教授きょうじゅが「定年ていねん延長えんちょうを検察官けんさつかんに適用てきようしたことに関にかんして閣議かくぎ決定けっていの前まえと後ごに法務省ほうむしょうで作成さくせいした文書ぶんしょ」を開示かいじするよう請求せいきゅうしたところ、「勤務きんむ延長えんちょう制度せいどの検察官けんさつかんへの適用てきようについて」という表題ひょうだいの文書ぶんしょが開示かいじされました。

文書ぶんしょには「検察官けんさつかんにも国家こっか公務員こうむいん法ほうの定年ていねん制度せいどを前提ぜんていとする勤務きんむ延長えんちょう制度せいどの適用てきようがあると解ほぐされる」などと定年ていねん延長えんちょうについて法ほう解釈かいしゃくを変更へんこうすることが示しめされていました。

上脇うえわき教授きょうじゅは、法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうが黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねんを延長えんちょうするために行おこなわれたものかどうかを明あきらかにするため、2021年ねん9月つきに、「黒川くろかわ検察官けんさつかんを勤務きんむ延長えんちょうすることについて、法務省ほうむしょう内ないで協議きょうぎ、検討けんとうした文書ぶんしょ」として再ふたたび請求せいきゅうすると、法務省ほうむしょうは「開示かいじ請求せいきゅうされた行政ぎょうせい文書ぶんしょは作成さくせいまたは取得しゅとくしておらず、保有ほゆうしていない」として不ふ開示かいじとしました。

上脇うえわき教授きょうじゅは、最初さいしょの請求せいきゅうで開示かいじされた文書ぶんしょを踏ふまえて、黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうを目的もくてきとした文書ぶんしょは作成さくせいされているはずだとして、おととし1月つきに不ふ開示かいじの取り消とりけしを求もとめる訴うったえを起おこしました。

裁判さいばんでは、こうした文書ぶんしょが、黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうという特定とくていの検察官けんさつかんの定年ていねんを延長えんちょうさせるために作成さくせいされたのかどうかが争あらそわれました。

国くには「法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうを示しめす文書ぶんしょは存在そんざいするが、黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうのために作成さくせいしたものではない」などと主張しゅちょうしました。

これに対にたいし、上脇うえわき教授きょうじゅは「解釈かいしゃくの変更へんこうにより定年ていねん延長えんちょうが適用てきようされたのは黒川くろかわ元もと検事けんじ長ちょうのみで、当時とうじの法務省ほうむしょうの辻つじ裕ひろし教きょう事務じむ次官じかんが人事じんじ院いん総裁そうさいと面談めんだんするなどして強引ごういんに解釈かいしゃくの変更へんこうを行おこなった」などと主張しゅちょうしていました。

証人しょうにんとして出廷しゅっていした辻つじ元もと事務じむ次官じかんは法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうについて「黒川くろかわ氏しの定年ていねん延長えんちょうを目的もくてきとしたものではない」と証言しょうげんしました。

そして、先月せんげつの判決はんけつで大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょは「法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうは、元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん退官たいかんに間に合まにあうように短たん期間きかんで進すすめられたと考かんがえるほかなく、全国ぜんこくの検察庁けんさつちょうに周知しゅうちされなかったことなど、合理ごうり的てきに考かんがえれば、元もと検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうを目的もくてきとしたものと考かんがえるほかない」などと指摘してきしました。

そのうえで上脇うえわき教授きょうじゅの最初さいしょの請求せいきゅうで開示かいじされた文書ぶんしょについて「『黒川くろかわ検事けんじ長ちょうの定年ていねん延長えんちょうを目的もくてきとして行おこなわれた、法ほう解釈かいしゃくの変更へんこうに関にかんする文書ぶんしょ』にあたる」などと判断はんだんしました。