アメリカのハーバード大学をめぐっては、国土安全保障省が22日、キャンパス内で暴力や反ユダヤ主義を助長したなどの理由で留学生を受け入れるための認定を取り消すと発表しました。
在学中の留学生についても、ほかの大学に転出しなければ、アメリカでの滞在資格を失うとしています。
これに対し、ハーバード大学のガーバー学長は23日、声明を出し、「学問の独立性を放棄したり政権に服従したりすることを拒否したことへの報復措置だ。学生と研究者を守るために全力を尽くす」と訴えました。
大学側は、認定の取り消しは「明らかに憲法に違反している」などとして、連邦地方裁判所に提訴するとともに、この措置の一時、差し止めを命じるよう申し立てました。
これを受けて裁判所は、「当事者の意見を聞く前に、大学が即座に、取り返しのつかない損害を被ることになる」として、認定の取り消しを一時、差し止める決定を下しました。
これによって在学中の留学生などにすぐに影響が及ぶ事態はいったん回避された形です。
ハーバード大学は4月にもトランプ政権による助成金の一部凍結の取り消しを求める裁判を起こしていて、政権と大学の対立はいっそう激しさを増しています。
トランプ大統領 ほかの大学にも同様の措置の可能性 否定せず
アメリカのトランプ大統領は23日、ホワイトハウスで記者団から「ハーバード大学以外の大学でも留学生の受け入れ停止を検討しているのか」と質問されたのに対し、「さまざまな状況を見ている」と述べて、ほかの大学にも同様の措置をとる可能性を否定しませんでした。
また、「世界中から才能ある人材に来てほしいと思わないのか」という質問に対しては、「来てほしい。しかし、多くの人が基礎的な数学ができない。基本的なスキルしかない人がなぜハーバードに入学できるのだろうか。なぜ彼らはそこにいるのだろうか。そして同じ人たちがアメリカに対して抗議活動を行い、叫ぶ。彼らは反ユダヤ主義者か何かだ。トラブルメーカーはいらない」と主張しました。
その一方で、「近い将来、ほかの国からアメリカに来た人たちが市民権を得る道筋をつくるための措置を講じるつもりだ。しかし、それについて話すのはまだ早い」と述べて、外国人が市民権を得るための新たな制度を検討していると明らかにしました。
留学生「立場がより確かで安全なものに 安心感につながる」
ハーバード大学の申し立てを受けて裁判所がトランプ政権による措置を一時、差し止める決定を下したことについて、パキスタンからの留学生、ラウフ・ナワズさん(19)は「留学生としての立場がより確かで安全なものになると思う。司法がトランプ政権に屈しないことがわかり、それは安心感につながる」と話していました。
一方で、今回の裁判所の決定によって留学生としての滞在資格が実際に継続されるのかまだわからないとして、「不安を感じる」とも話していました。
そして、大学側の対応については、「ハーバードはトランプ政権に立ち向かう意志をもった唯一の組織だと思う。もしハーバードが倒れたら、ほかの組織もドミノ倒しのように次々と倒れていくだろう」と話していました。
”ハーバード大学 米政府を提訴”と報道 留学生受け入れめぐり
ロイター通信はアメリカのトランプ政権がハーバード大学に対し留学生を受け入れるための認定を取り消すと発表したことをめぐり、ハーバード大学が認定の取り消しは憲法などに明らかに違反しているとしてアメリカ政府を提訴したと報じました。