“イスラエル側との調整に時間かかる”引き続き協議
イスラエルを訪問したアメリカのブリンケン国務長官は3日、ネタニヤフ首相と会談し、イスラエルの自衛の権利を改めて支持した上で、ガザ地区での軍事作戦で国際人道法を順守し、民間人の犠牲を最小限に抑えることを求めました。
その上で、支援物資の搬入やエジプトへのけが人の搬送などのため戦闘を一時停止するよう働きかけましたが、イスラエル側との調整に時間がかかるとして、今回の訪問では実現せず、引き続き協議を行っていくとしています。
会談会場の周辺でハマス側に拘束の人質の家族らが集会
ブリンケン国務長官とネタニヤフ首相の会談が行われたテルアビブの会場周辺では、ハマス側に拘束されている人質の家族や支援者が集会を開きました。
ブリンケン国務長官はネタニヤフ首相との会談で、イスラエル側に対し人道目的での「戦闘の一時停止」を働きかけたことを明らかにしています。
これに関連して集まった人たちは、「人質の解放を実現しないまま戦闘を一時停止するな」などとシュプレヒコールをあげて、人質の解放に向けてはハマスへの軍事的な圧力を継続すべきだと訴えていました。
いとこが人質となっている20代の女性は「多くの赤ちゃんやお年寄りも人質となっていて、これ以上待てません」と話していました。
80代の男性は「人質となっている人たちが安全に帰ってくることが、われわれが唯一求めていることです。それができなかった場合、政府に大きな批判が向けられるでしょう」と述べ、政府の対応を注視する気持ちを語っていました。
ヒズボラ イスラエルとの戦闘に参戦と明言
イスラエルと敵対し、レバノン南部に拠点を置く、イスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者ナスララ師が3日、イスラエルとハマスの戦闘が始まって以降、初めて演説を行いました。
ナスララ師は、ハマスが「アルアクサの洪水」と名付けた、10月7日に始まった奇襲攻撃について、「アルアクサの洪水の戦闘は複数の戦線に拡大した」と述べ、イスラエルとの戦いには「抵抗の枢軸」と呼ばれるヒズボラや、イエメンの反政府勢力フーシ派なども参戦したと明言しました。
一方で「今回の攻撃の計画や実行はすべてパレスチナの人々によって行われたものだ」として、ハマスやヒズボラを支援しているイランの直接的な関与はないと主張しました。
ナスララ師は、イスラエルがガザ地区へさらなる攻撃を行った場合や、レバノンに対する攻撃を強化した場合に備えて、「すべての選択肢を視野に入れていて、そのための準備も進んでいる」と述べ、イスラエルをけん制しました。
その上で「ガザ地区で虐殺をすることによって成果をあげることはできない」と非難しました。
またアメリカが空母などをイスラエルに近い東地中海に展開させていることに触れ、「アメリカの脅迫は全く意味を持たない」と強調した上で、「緊張緩和を望むのであれば、イスラエルによる攻撃をやめさせろ」として、戦闘の停止を実現するようアメリカに求めました。
ヒズボラはイスラエル北部に対して繰り返しロケット弾攻撃などを行っていて、イスラエル軍との間で衝突が続いています。
ヒズボラがイスラエルとの戦闘に参戦すると明言したことで、ガザ地区に加えて北部のレバノン国境での戦線の拡大が懸念されています。
イラン ヒズボラ最高指導者の演説聴くための大規模集会
イスラエルと敵対し、ヒズボラの後ろ盾となってきたイランでは、ナスララ師の演説を聴くための大規模な集会が各地で開かれ、両者の関係の深さをうかがわせました。
このうち首都テヘランでは、政府の呼びかけに応じて大勢の人たちが広場に集まり、イランやパレスチナの旗とともにヒズボラの旗を掲げて「イスラエルに死を、アメリカに死を」と声をあげました。
そして、会場には大型スクリーンが設置され、人々は1時間半にわたったナスララ師の演説を真剣な表情で見守っていました。
参加していた40歳の男性は、ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルについて「子どもを殺し人権も守らないのはひどい人間たちです」と非難した上で「ヒズボラが立ち上がってくれたことは勝利が約束されたことを意味します」と話していました。
38歳の女性は「パレスチナの子どもたちが破壊にさらされ、涙と血を流しています。ヒズボラはこれを許さないために立ち上がったのです」と話していました。
ガザ地区 イスラエル軍による地上作戦が続く
ガザ地区ではイスラエル軍による地上作戦が続いています。
イスラエル軍は3日、ガザ地区内でハマスが構築した地下トンネルを破壊する様子を動画で公開しました。
作戦にあたったのは地下トンネルの破壊などを専門にする「ヤハロム」と呼ばれる戦闘工兵部隊で、映像には大きな爆発とともに地下から黒い煙が吹き上がる様子が捉えられています。
一方、ハマスの軍事部門カッサム旅団も、地下トンネルの中を進み、茂みの中からイスラエル軍を攻撃する様子や、住宅地で行われている市街戦の様子をうつした動画を公開して、対抗しています。
現地のメディアは、ガザ地区の北部から南部に避難するための海岸沿いの道路に多くの遺体が放置されている様子を伝えていて、ガザ地区の状況は凄惨さを増しています。
ガザ地区最大級の医療機関近くで空爆 “救急車が標的に”
パレスチナ赤新月社は3日、ガザ地区最大級の医療機関、シファ病院の近くで複数の救急車が空爆による攻撃を受けたとSNSで明らかにしました。
この中では「午後4時半、空爆が行われた。負傷者をラファ検問所まで搬送する任務から戻ってきた複数の救急車が標的だった。この中には赤新月社の救急車も含まれていた」としています。
別の投稿では、壊れた救急車の写真とともに「私たちの同僚は奇跡的に守られた」としています。
ガザ地区の保健当局は、この攻撃で15人が死亡したほか、大勢のけが人が出ているとしています。
これについてイスラエル軍は声明で「ハマスが使っていた救急車1台を特定し、攻撃した」として、空爆を認めた上で、ハマスのメンバーを標的にした攻撃だったと主張しました。
そしてハマスが救急車を使って戦闘員や武器を運んでいるとする情報があるとしています。
これに対しハマスは「標的となった救急車に戦闘員がいたという主張は根拠がない」など反論しています。
WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は、今回の攻撃を受けて「報道に大きなショックを受けている」とSNSに投稿しました。
また患者や医療関係者、医療施設、救急車は常に保護されなければならないと改めて求めたほか、今すぐ停戦するよう訴えています。
一方ハマスは、シファ病院のほかに2つの病院の近くにも攻撃が行われたと主張しています。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、このうちの1つの病院近くで撮影されたとする映像を放送し、映像では、地面に大きな穴があき、炎が上がる様子や、多くの人が集まり、けが人を運ぶ様子が確認できます。
ガザ地区 AFP通信の事務所入るビル攻撃受ける
フランスのAFP通信は、ガザ地区にある自社の事務所が入るビルが2日、攻撃によって大きな被害を受けたと明らかにしました。
現地を訪れたAFP通信のスタッフが確認したところ、攻撃は東側から行われたとみられ、窓と逆側の壁を大きく破壊し、隣接する部屋にも大きな被害が出ているとしています。
ガザ市内に拠点を置く8人のスタッフは南部に退避していて全員無事だったということです。
また、AFP通信に対し、イスラエル軍の報道官は攻撃には関与していないと回答したということです。
AFP通信は「今回の攻撃を可能なかぎり最も強いことばで非難する。事務所は誰でも知っている場所にある。ガザ地区で活動するジャーナリストが保護され、取材活動は尊重されなければならない」とコメントしています。
イスラエル軍とイスラム組織ハマスの間で激しい衝突が続く中、報道関係者も攻撃に巻き込まれるケースが相次いでいて、ニューヨークに本部があり、報道の自由を守る活動をしている国際的なNPO「CPJ=ジャーナリスト保護委員会」は、今月3日の時点で少なくとも36人のジャーナリストが死亡したとしています。
ガザ地区 主食のパン入手難しい状況続く
UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関やOCHA=国連人道問題調整事務所によりますと、人道危機が続くガザ地区では主食のパンを手に入れるのが難しい状況が続いています。
2日のUNRWAやOCHAの発表によりますと、国連はこれまで23のパンの販売店と契約していましたが、現在稼働できているのは1つだけで、南部と中部でも8つの販売店だけが避難している人々にパンの提供を続けているとしています。
背景には、人道支援物資に燃料が含まれない中で、パンが焼けなかったり製粉所が稼働できなかったりすることがあるということです。
限られた量しか生産できない中で、パンを手にするには平均で4時間から5時間待たなければならず、列に並んでいる間も人々は空爆にさらされていると危機的な状況を訴えています。
国連人道問題調整事務所「支援物資 全く足りない」
OCHA=国連人道問題調整事務所の報道官は3日、スイスでの記者会見で、ガザ地区で住む場所を失った人が150万人近くにのぼっているとしたうえで、「避難所は収容能力のほぼ4倍に達する人数を受け入れている。避難所となっている学校の1つの教室に200人以上が身を寄せている場所もある」と述べ、現地の人道状況に危機感を示しました。
また「2日には支援物資を載せた102台のトラックがラファ検問所を通過したが、全く足りない」と述べて、ラファ以外の検問所も開放し、不足が深刻化している燃料をはじめ、搬入する支援物資の量を拡大する必要があると訴えました。
そして、ガザ地区などの住民の支援のため12億ドル、日本円でおよそ1800億円の資金が必要だとして、国際社会に協力を求めました。
仏マクロン大統領 人道支援調整する国際会議パリで開催へ
フランスのマクロン大統領は3日、ガザ地区の住民への人道支援を調整するための国際会議を11月9日に首都パリで開くと発表しました。
ロイター通信は、会議には、パレスチナ暫定自治政府や、エジプトなどアラブ諸国と欧米各国、それにロシアを除くG20=主要20か国の首脳や閣僚が招待されていて、ガザ地区への水や燃料の供給や、海上を利用した支援物資の輸送手段についても議論が行われる見込みだと伝えています。
日本のNGO ギリシャで停戦呼びかけ
イスラム組織ハマスとイスラエルの武力衝突が続く中、日本のNGOの船がギリシャに寄港し、地元のパレスチナの市民団体とともに一刻も早い停戦を呼びかけました。
呼びかけを行ったのは、日本のNGO「ピースボート」です。
各国を船でめぐる企画を行う中で、今回の武力衝突が起きたことを受けて、旅客船の船体に「ガザでの殺りくをやめろ」と書かれた幅30メートルの横断幕を掲げました。
船は3日、ギリシャの首都アテネ近郊のピレウスに寄港し、港には地元のパレスチナ人団体やNGOのスタッフなどおよそ60人が集まりました。
集まった人たちは「今すぐ停戦を」とか「人道支援物資をガザに」と書かれたプラカードなどを手に「今すぐガザを救え」と声を上げていました。
この団体では、これまでイスラエルとパレスチナの双方の若者が対話する機会を設けるなど、相互理解のための活動を行ってきたということです。
「ピースボート」の畠山澄子共同代表は「ガザ地区で連絡のついた人からは、あすがどうなるか、次に誰に何が起きるかわからないという恐怖との闘いの中にいると聞いた。これ以上命が奪われないように訴えを続けていきたい」と話していました。
このNGOでは今後、トルコとエジプトの港にも寄って停戦を呼びかけることにしています。
ブラジル リオでガザへの攻撃に抗議
イスラエルによるガザ地区への攻撃で市民の犠牲が増え続けていることを受けて、ブラジルのリオデジャネイロでは3日、地元の市民団体が子どもの遺体を模した造形物を海岸に並べて抗議しました。
リオデジャネイロの世界的な観光地、コパカバーナ海岸の砂浜に並べられたのは、白い布にくるまれた子どもの遺体を模した120体の造形物です。
その脇には実際に亡くなった子どもの名前や年齢を記したメモのほか、パレスチナの旗や花が添えられ、イスラエルによるガザ地区への攻撃によって子どもの犠牲が増えていることに抗議の意を示しています。
中東出身の移民を数多く受け入れてきたブラジルでは、イスラエルによるガザ地区への攻撃を巡る状況が連日詳しく伝えられていて、イスラエルに対する批判的な声が強まっています。
主催した市民団体のアントニオ・コスタ代表は「イスラエルには自衛の権利があるが、子どもたちの死につながる無差別かつ不当な武力行使には反対だ」と話していました。
中南米ではこれまで、ボリビアがイスラエルとの外交関係の断絶を表明したほか、コロンビアとチリがイスラエルに駐在する大使の召還を決めるなど、抗議の動きが広がっています。