ことしの傾向を主要な仲介サイトが分析したところ、返礼品としてコメやトイレットペーパーといった生活必需品への人気が集まるなど物価高などの影響で傾向に変化が出ていることがわかりました。
首位は牛肉からコメに
ふるさと納税は個人が好きな自治体に寄付すると所得税と住民税の一部が控除される制度で、特産品などの返礼品も受け取ることができ、総務省の統計では寄付された総額が昨年度、過去最高となる1兆円を突破しました。
仲介サイト大手4社がことしのこれまでの傾向を分析すると、いずれも返礼品に「生活必需品」を求める動きが広がっていました。
「ふるさとチョイス」によりますとことし1月から11月まで、▼返礼品にトイレットペーパーを選んだ寄付額が去年の同じ時期と比べて1.5倍となったほか、▼コメは1.2倍にのぼりました。
寄付件数を分野別にみると去年とおととしの1位は「牛肉」でしたが、ことしは先月時点でコメが1位となっています。「楽天ふるさと納税」では返礼品にコメを選んだ寄付額が8月までの8か月間で1.4倍になりました。「さとふる」もことし10月までの検索1位は「米」、2位は「トイレットペーパー」、3位が「訳あり」で、物価高の影響がみられると分析しています。
「コメ」は返礼品としてこれまでも根強い人気のありましたが、ことしは物価高に加え、品薄になった影響もあり、寄付額や寄付件数が増加しました。
米どころ南魚沼市は寄付金が29%増加
米どころとして知られる新潟県南魚沼市では、ことし、11月までの寄付金がおよそ50億4000万円と去年の同じ時期と比べ11億3000万円余り、率にしておよそ29%も増加しました。返礼品のほとんどはコメが占めています。
農業法人を経営している青木拓也さんの倉庫では新米の箱詰め作業がピークを迎えています。大半はふるさと納税の返礼品で、ことし8月以降、申し込みが急増し、これから出荷がさらに増えると予想されることから、例年は田植えや稲刈りの時期にお願いしているアルバイトを今月も出てもらい、精米や袋詰めなどを担当してもらっています。
青木さんは「ことしは9月や10月にもかなり寄付をいただいて、忙しくなっています。来年のコメ作りに向けて頑張ろうという気持ちにもなりとてもありがたいです」と話していました。
南魚沼市によりますと、寄付金額が増加した背景には8月のコメの品薄があったことに加え、1度の寄付額が多く、定期的に届く「定期便」の申し込みが増えたこと、また、基準の厳格化を受けて返礼品に対する寄付額を引き上げたこともあるとみています。
さらに「パックごはん」を返礼品とした寄付額は11月までに4200万円余りと去年の同じ時期と比べおよそ45%増えていて、能登半島地震の影響などから、備蓄品のために選んだ人も増えたとみています。
税収の増加によって、市は雪で傷んだ道路の補修や消雪パイプの修繕に取り組むことができたほか、夏の猛暑で水不足に悩まされていた農家への支援策として地下水をくみ上げ、用水路に流す取り組みもできたということです。
南魚沼市U&Iときめき課の中俣一樹ふるさと納税主幹は「道路の修繕などのほか、この市役所の改修の一部にも使わせていただいている。返礼品で選んでいただいたおコメが育っている所に来ていただけるような、体験型の返礼品も作っていきたい」と話しています。
災害への備えも
能登半島地震など、相次ぐ災害や南海トラフ臨時情報の発表を受けて防災に関わる返礼品も関心を集めました。
「さとふる」によりますと、ことし8月までで「防災グッズ」のカテゴリーへの寄付件数は前年比2.7倍となっているほか、返礼品として人気の「コメ」の中でも、備蓄に活用できる「パックごはん」を選んだ人が1.5倍になっています。
「ふるさとチョイス」では「簡易トイレ」を返礼品に選ぶ寄付額がいずれも前の年と比べて1月には21.6倍、8月には18.4倍と急増しました。
また、能登半島地震を受けて返礼品を求めない「災害支援寄付」が活発に行われ、仲介サイト4社あわせると能登半島地震の被災地向けの寄付額は61億円余りにのぼっています。
都市部では「ポイント型返礼品」も
ふるさと納税は地方の税収増につながっている一方、都市部の多くは税収減に悩んでいます。ことしはこうした都市部の“逆襲”ともいえる動きが見られました。
東京・千代田区は令和6年度には区民税の1割にあたるおよそ20億円が流出しています。対策を検討していた区は、仕事や学校で千代田区を訪れる、日中の人口が実際の区民と比べて10倍以上になり飲食店やホテルが多数立地していることに注目。宿泊施設や飲食店などで使える「ポイント型返礼品」の取り組みをことし10月から始めました。
提携する仲介サイトを通して寄付した場合寄付額の3割が電子商品券として、ポイントの形で付与されます。
そして、利用できる店舗やホテルで2次元コードなどを使って決済します。
千代田区外神田にあるイタリアンレストランは、地域の良さを体感してもらいたいと考え、この取り組みに参加しました。すでに返礼品としてコース料理やお酒を楽しんだ客もいるということです。
オーナーシェフの直井一寛さんは「簡単で、店もお客様も安心して使えました。始まったばかりなので少しずつ利用する方が増えていけば、と思っています」と話していました。
都市部では減収額が拡大
ふるさと納税を利用して住民がほかの自治体に寄付を行った影響で、今年度の住民税の税収が減る見通しとなっているのは、
▽横浜市が304億6700万円
▽名古屋市が176億5400万円
▽大阪市が166億5500万円
▽川崎市が135億7800万円
▽東京・世田谷区が110億2800万円などとなっています。
減収が多くなったのは、前の年度と変わらず政令指定都市と東京の特別区で、すべての自治体で減収額が拡大しました。
寄付額が多かった自治体は
寄付額が多かった自治体は
▽宮崎県都城市で193億8400万円
▽北海道紋別市が192億1300万円
▽大阪・泉佐野市が175億1400万円
▽北海道白糠町が167億7800万円
▽北海道別海町が139億300万円などとなっています。