離婚りこん後ごの「共同きょうどう親権しんけん」民法みんぽうなど改正かいせい案あん 参議院さんぎいん法務ほうむ委いで可決かけつ

改正かいせい案あんは17日にちの参議院さんぎいん本ほん会議かいぎで可決かけつ・成立せいりつする見通みとおしです。

何なにが変かわる？ポイントは

民法みんぽうなどの改正かいせい案あんは、離婚りこん後ごに父ちちと母ははのどちらか一方いっぽうが子こどもの親権しんけんを持もつ、今いまの「単独たんどく親権しんけん」に加くわえ、父ちちと母ははの双方そうほうに親権しんけんを認みとめる「共同きょうどう親権しんけん」を導入どうにゅうするとしています。

離婚りこん後ご、父ちちと母ははは協議きょうぎによって「共同きょうどう親権しんけん」か「単独たんどく親権しんけん」かを決きめ、合意ごういできない場合ばあいは家庭かてい裁判所さいばんしょが判断はんだんすることになります。

ただし、DV＝ドメスティック・バイオレンスや子こどもへの虐待ぎゃくたいのおそれがある場合ばあいは裁判所さいばんしょが単独たんどく親権しんけんにしなければならないとされています。

また法務省ほうむしょうは、父ちちと母ははが話し合はなしあうことができない状態じょうたいとなり、共同きょうどうで子こどもの養育よういくを行おこなうことが困難こんなんな場合ばあいも、単独たんどく親権しんけんになる可能かのう性せいがあるとしています。

離婚りこん後ごでも 申し出もうしであれば対象たいしょうに

すでに離婚りこんしている親おややその子こどもが、共同きょうどう親権しんけんを裁判所さいばんしょに申し立もうしたてることも可能かのうになります。

その際さい、裁判所さいばんしょはDVの有無うむや養育よういく費ひの状況じょうきょうなどこれまでの経緯けいいを調しらべたうえで、子こどもの利益りえきのために共同きょうどう親権しんけんが必要ひつようかどうかを判断はんだんすることとされています。

どんなときに親おやの同意どういが必要ひつよう？

共同きょうどう親権しんけんとなった場合ばあい、子こどもに関にかんするどのような場面ばめんで両親りょうしんの同意どういが必要ひつようなのかについて、改正かいせい案あんでは具体ぐたい的てきなケースは書かかれていません。

政府せいふは成立せいりつした場合ばあい、法律ほうりつの施行しこうまでにガイドラインを示しめすこととしています。

改正かいせい案あんでは、共同きょうどう親権しんけんとなったら子こどもに関にかんすることは基本きほん的てきに、父母ちちははが話し合はなしあって決きめるとしています。

「幼稚園ようちえんの選択せんたく」「転居てんきょ先さきの決定けってい」両親りょうしんの同意どういが必要ひつよう

法務省ほうむしょうは国会こっかいで、父母ちちははのどちらの同意どういも必要ひつような例れいとして

▽幼稚園ようちえんや学校がっこうの選択せんたく

▽進学しんがくか就職しゅうしょくかの選択せんたく

▽転居てんきょ先さきの決定けってい

▽生命せいめいに関かかわる医療いりょう行為こういなどを挙あげています。

「緊急きんきゅうの手術しゅじゅつ」「習い事ならいごとの選択せんたく」は単独たんどくで判断はんだん可能かのう

一方いっぽう、改正かいせい案あんではその例外れいがいとして「子この利益りえきのため急迫きゅうはくの事情じじょうがあるとき」や「教育きょういくなどに関にかんする日常にちじょうの行為こうい」はどちらかの親おやの単独たんどくで判断はんだんできるとされています。

法務省ほうむしょうは「急迫きゅうはくの事情じじょう」の例れいとして

▽期限きげんの迫せまった入学にゅうがく手続てつづきや

▽緊急きんきゅうの手術しゅじゅつ

▽虐待ぎゃくたいからの避難ひなんなど

「日常にちじょうの行為こうい」については

▽子こどもの食事しょくじや

▽習い事ならいごとの選択せんたく

▽ワクチン接種せっしゅなどを挙あげています。

また、海外かいがいへの渡航とこうについて、法務省ほうむしょうは

▽留学りゅうがくなどは両親りょうしんの同意どういが必要ひつようとする一方いっぽう、

▽短期たんきの観光かんこう目的もくてきの海外かいがい旅行りょこうなら「日常にちじょうの行為こうい」として単独たんどくでの判断はんだんが可能かのうだなどと答弁とうべんしていて、基準きじゅんがあいまいだという指摘してきもあります。

「親子おやこの断絶だんぜつなくなると期待きたい」

妻つまと離婚りこん調停ちょうてい中ちゅうの男性だんせいは、共同きょうどう親権しんけんが認みとめられることで娘むすめの養育よういくに関かかわることができると期待きたいしています。

男性だんせいは1年ねん前まえ、夫婦ふうふの関係かんけいが悪わるくなり、妻つまが娘むすめを連つれて家いえを出でました。

妻つま側がわから離婚りこん調停ちょうていを申し立もうしたてられ、家庭かてい裁判所さいばんしょで話し合はなしあいが続つづいています。

男性だんせいはDVや虐待ぎゃくたいなどはしていないと言いいますが、妻つまが拒否きょひしているため男性だんせいは1年ねん近ちかく娘むすめと面会めんかいする機会きかいをもらえていません。

娘むすめの様子ようすを見みようと保育ほいく園えんの近ちかくまで行いった時とき、娘むすめから呼よびかけられたということです。

男性だんせいは「今いまの単独たんどく親権しんけんでは子こどもの奪い合うばいあいが起おきてしまい、親権しんけんを持もつほうと持もたないほうで大おおきな差さが生うまれる。そして、どちらかが黙だまって子こどもを連つれて出でて行いくということにつながる。共同きょうどう親権しんけんによってこうした連れ去つれさりや親子おやこの断絶だんぜつがなくなると思おもう」と話はなしています。

男性だんせいは、共同きょうどう親権しんけんが認みとめられれば娘むすめの養育よういくに関かかわることができ、面会めんかいも適切てきせつに行おこなわれると期待きたいしていて「夫婦ふうふ関係かんけいが破綻はたんしても、子こどもとの関係かんけいがきちんとできている家庭かていは共同きょうどう親権しんけんであるべきだ。私わたしも子こどもの成長せいちょうの助たすけになれるよう、親おやとして活躍かつやくできる場面ばめんを取り戻とりもどしたい」と話はなしていました。

「関係かんけい断たてないことに絶望ぜつぼう」

3年ねん前まえに夫おっとと離婚りこんし、現在げんざいは小学生しょうがくせいの子こども2人にんと暮くらす40代だいの女性じょせいは、共同きょうどう親権しんけんの導入どうにゅうに反対はんたいだといいます。

女性じょせいは元もと夫おっとに家事かじなどについて毎日まいにちのように怒おこられ、子こどもも父親ちちおやとのやりとりで泣なくことが多おおかったため、離婚りこんしたといいます。

このため共同きょうどう親権しんけんとなった場合ばあい、進学しんがくや転居てんきょなどで父ちちと母ははどちらの同意どういも必要ひつようになることについて「離婚りこん後ごも関係かんけいを断たてないことに絶望ぜつぼうする。離婚りこんしたあとも元もと配偶はいぐう者しゃに判断はんだんを求もとめなければならず、拒こばまれたらその先さきに進すすめないのは子こどもの利益りえきだとはとても思おもえない」と訴うったえました。

また、両親りょうしんの間まで意見いけんが分わかれた場合ばあいに共同きょうどう親権しんけんか単独たんどく親権しんけんかを決きめる家庭かてい裁判所さいばんしょが、DVや虐待ぎゃくたいの有無うむについて適切てきせつに判断はんだんできるか疑問ぎもんだと言いいます。

女性じょせいは元もと夫おっとから殴なぐられるなどの身体しんたい的てきな被害ひがいは受うけておらず、当時とうじ受うけた精神せいしん的てきなDVを証明しょうめいする物ものが日記にっきしかないといいます。

女性じょせいは「元夫もとおは離婚りこん後ごも面会めんかい交流こうりゅうをしていて養育よういく費ひも払はらっている。元もと夫おっとが共同きょうどう親権しんけんを希望きぼうした場合ばあい、私わたしが『婚姻こんいん中ちゅうはこんなにつらかった』と主張しゅちょうして拒否きょひしても、裁判所さいばんしょや調停ちょうてい委員いいんが私わたしの意見いけんを取り扱とりあつかってくれるとは思おもえない」と話はなしていました。

「子こどもにとって最善さいぜんの利益りえき」とは

「共同きょうどう親権しんけん」の大だい前提ぜんていとなる考え方かんがえかたは「子こどもにとって最善さいぜんの利益りえきとなる」ことです。

改正かいせい案あんには「親おやの責務せきむ」として、子こどもの人格じんかくを尊重そんちょうし、子こどもを養育よういくする責務せきむがあり、親おやと同どう程度ていどの生活せいかつを維持いじできるように扶養ふようしなければいけないこと、婚姻こんいんの有無うむにかかわらず子こどもの利益りえきのため互たがいに人格じんかくを尊重そんちょうして協力きょうりょくしなければならないことなどが明記めいきされました。

親おやが離婚りこんした子こどもたちの支援しえんなどにあたるNPO法人ほうじん「ウィーズ」の理事りじ長ちょうで、みずからも子こどものときに親おやの離婚りこんを経験けいけんしている光本みつもと歩あゆみさんは「親おやの離婚りこんを経験けいけんした子こどもたちの思おもいに目めを向むけられることは大おおきな前進ぜんしんで、一いち当事者とうじしゃとしてうれしい気持きもちは率直そっちょくにある。ただ、共同きょうどう親権しんけんの導入どうにゅうによってさまざまな困難こんなんやひずみは出でてくると思おもうので、その対処たいしょや、子こどもの最善さいぜんの福祉ふくしを大人おとながどうかなえていくかという課題かだいは残のこされている」と話はなします。

そのうえで「子こどもの声こえを尊重そんちょうするという視点してんは、法案ほうあんに関かかわったすべての方ほうが考かんがえてきたことだと思おもうが、具体ぐたい的てきな手法しゅほうについては議論ぎろんが十分じゅうぶんされていない。親おやの離婚りこんに対にたいする感かんじ方かたは子こどもによってさまざまで、ひとまとめにしてこういう制度せいどや仕組しくみが必要ひつようだというのは難むずかしいが、子こどもの声こえを知しることがまだまだ足たりていないと思おもう」と指摘してきします。

そして「親おやの離婚りこんを経験けいけんした子こどもたちの思おもいをより多角たかく的てきに深ふかく知しる場ばを整ととのえることが必要ひつようだし、法律ほうりつを施行しこうするのであれば、具体ぐたい的てきに子こどもたちにどういったケアを行おこなうのか、誰だれが責任せきにんを持もって対応たいおうするのか、国くには急ピッチきゅうぴっちで整ととのえなければいけない。それを抜ぬきにして子こどものための親権しんけん制度せいどや法ほう整備せいびはかなわないと思おもうので、本腰ほんごしを入いれて取り組とりくんでほしい」と話はなしています。

養育よういく費ひの不払ふばらい対策たいさくも

今回こんかいの民法みんぽうなどの改正かいせい案あんでは、共同きょうどう親権しんけん以外いがいにも養育よういく費ひや面会めんかい交流こうりゅうなど、離婚りこん後ごの子こどもの生活せいかつに関かかわるルールの変更へんこうが盛もりこまれています。

養育よういく費ひについては、不払ふばらいが問題もんだいとなっていることから、支払しはらいが滞とどこおった場合ばあいはほかの債権さいけんよりも優先ゆうせん的てきに財産ざいさんの差し押さしおさえができるようにする「先取せんしゅ特権とっけん」（さきどり）が付つけられます。

当事者とうじしゃの負担ふたん軽減けいげんのため、相手あいての財産ざいさんの差し押さしおさえや収入しゅうにゅう、資産しさんの情報じょうほう開示かいじを求もとめる手続てつづきも簡素かんそ化かされます。

調停ちょうていで養育よういく費ひなどを決きめる段階だんかいでも、裁判所さいばんしょは当事者とうじしゃの収入しゅうにゅうや資産しさんの情報じょうほう開示かいじ命令めいれいを出だすことができるようになります。

また、養育よういく費ひの取り決とりきめをせずに離婚りこんした場合ばあいでも、一定いってい額がくの養育よういく費ひを請求せいきゅうできる「法定ほうてい養育よういく費ひ制度せいど」が設もうけられます。

親子おやこの面会めんかい交流こうりゅうは

別居べっきょする親子おやこが定期ていき的てきに会あう面会めんかい交流こうりゅうについても新あらたな試こころみを導入どうにゅうしています。

調停ちょうていなどで話し合はなしあいが続つづいている途中とちゅうでも、家庭かてい裁判所さいばんしょが面会めんかい交流こうりゅうを試ためしに行おこなうことを促うながせるようにします。

親子おやこの面会めんかい交流こうりゅうを早期そうきに実現じつげんするねらいがありますが、虐待ぎゃくたいのおそれがある場合ばあいなどは認みとめないとしています。

また親おやだけでなく祖父母そふぼなども子こどもの養育よういくに携たずさわる機会きかいが増ふえていることから、祖父母そふぼなども、面会めんかい交流こうりゅうを求もとめる審判しんぱんを裁判所さいばんしょに請求せいきゅうすることが可能かのうだとしています。

参議院さんぎいん法務ほうむ委員いいん会かい 16日にちの質疑しつぎは

改正かいせい案あんは、共同きょうどう親権しんけんを選択せんたくする際さいに父母ちちはは双方そうほうの真意しんいによるものか確認かくにんする措置そちを検討けんとうすることなどを付則ふそくに盛り込もりこむ修正しゅうせいをしたうえで、先月せんげつ、衆議しゅうぎ院いんを通過つうかし、参議院さんぎいん法務ほうむ委員いいん会かいで審議しんぎが行おこなわれてきました。

きょうの質疑しつぎで、公明党こうめいとうの石川いしかわ博ひろし崇たかし氏しは「子こどもの利益りえきを確保かくほするには不断ふだんの努力どりょくが必要ひつようで、一ひとつ一ひとつ検証けんしょうしながら改善かいぜんに取り組とりくんでいくべきではないか」と質問しつもんしました。

これに対にたいし小泉こいずみ法務ほうむ大臣だいじんは「法案ほうあんが成立せいりつしたら関係かんけい省庁しょうちょう連絡れんらく会議かいぎを立たち上あげ、複数ふくすうの省庁しょうちょうにまたがる制度せいどの調整ちょうせいや情報じょうほうの整理せいりを図はかるなど適切てきせつに対応たいおうしていく」と述のべました。

共産きょうさん党とうの山添やまぞえ拓たく氏しは「大おおきな問題もんだいは、離婚りこん後ご、父母ちちははの合意ごういがないのに裁判所さいばんしょが共同きょうどう親権しんけんを強制きょうせいしうる点てんで、懸念けねんの声こえが広ひろがっている」と指摘してきしました。

これに対にたいし小泉こいずみ法務ほうむ大臣だいじんは「共同きょうどう親権しんけんとする前まえに、裁判所さいばんしょが間まに入はいり、可能かのうな状況じょうきょうかを客観きゃっかん的てきにつぶさにみる。自由じゆうに共同きょうどう親権しんけんになるわけではない」と述のべ、理解りかいを求もとめました。

このあと採決さいけつが行おこなわれ、改正かいせい案あんは自民じみん・公明こうめい両りょう党とうと立憲りっけん民主党みんしゅとう、日本にっぽん維新いしんの会かい、国民こくみん民主みんしゅ党とうなどの賛成さんせい多数たすうで可決かけつしました。

共産党きょうさんとうは反対はんたいしました。

また、法律ほうりつの施行しこう後ごも不断ふだんに検証けんしょうし必要ひつように応おうじて制度せいどの見直みなおしを検討けんとうすることや、子こどものための相談そうだん支援しえんのあり方ありかたについて関係かんけい省庁しょうちょうで検討けんとうすることなどを求もとめるとした付帯ふたい決議けつぎも賛成さんせい多数たすうで可決かけつされました。

改正かいせい案あんは17日にちの参議院さんぎいん本ほん会議かいぎで可決かけつ・成立せいりつする見通みとおしです。